やはり歴史は繰り返し、時は再び巡ってくるということだろう。かつてゾンビーズが革新作
『オデッセイ・アンド・オラクル』を出して解散した後、内省の名作『一年間』でソロとしての門出を飾ったコリン・ブランストーン。そして今、『オデッセイ・アンド・オラクル』40周年を記念する作品群や再結成ライヴを経て新作『ザ・ゴースト・オブ・ユー・アンド・ミー』を発表する。しかも、そのどちらのソロ作もバンド・サウンドとストリングス・アンサンブルというユニークな二重構造なのだから。
「このアルバムを聴いてくれた人の多くは『一年間』を思い出すことと思う。とくに両方とも弦のアレンジはクリス・ガニングだからね。でも、それはいいことだと思うんだ。また一緒にやることで、このアルバムに引き継がれる大切なものが必ずあるはずだから。そして、そういったことが続いていくのを望んでいるよ。だから、オスカーに輝いた映画
『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』の音楽担当でもあるクリスとの再会が、今回のターニング・ポイントだったんだ」
ソロ・アルバムとしては11年ぶりとなる本作。この長いインターバルは、盟友
ロッド・アージェントと始めたデュオ・バンドが発展した再編ゾンビーズの活動に時間を取られたからだという。
「ただ、そもそもゾンビーズとしてのつもりはまったくなかったんだよ。純粋にロッドとの新しいバンドとして始めたんだけど、日本を含めて各地をツアーしてまわると、みんながゾンビーズの曲をすごく聴きたがっているのが分かった。それからレパートリーに加えていったというわけさ。とくに去年はスペシャルな年だったね。『オデッセイ・アンド・オラクル』40周年を祝ってアルバムを丸々一枚、全曲演奏したのは初めてだったから。大盛況に終わったそのコンサートの模様はCDに続いてDVDもリリースされるからお楽しみに」
ともあれ、何よりもまず魅了されるのはそのヴェルヴェット&スモーキー・ヴォイス。英国的翳りと品を湛えた相変わらずの瑞々しさで、フレッシュな熟成を遂げつつある。ところで、弦楽五重奏の6曲が自作なのに対し、バンド・サウンド楽曲は米国ソングライター(ジョン・リンド、
リチャード・ペイジ、ビリー・スタインバーグ、ティム・ムーア、etc.)のものがほとんどというのは?
「僕はシンガーとして世の中に認知されていると思うけど、一番楽しいのは自分が書いた曲を歌うことなんだ。なぜなら、その曲が生まれた瞬間に立ちあっているってことだからね。それを小編成のストリングス・アンサンブルに乗せて、歌いながら育んでいくというのは得がたい魅力的な体験でもあるし。でも、自他問わずいい曲と出会えたなら、それはそれで歌っていきたい。今回バンド楽曲に米国ソングライターの作品が固まっているけれど、意識したわけじゃなくてたまたま気に入った曲を取り上げたまでのことさ」
何ともフランクなスタンスと気負いのなさ。そんな人となりがまた、歌に温かみを施しているのだろう。
取材・文/除川哲朗(2009年4月)