2009年12月に最新アルバム
『アックス・トゥ・フォール』を引っさげ、
ブルータル・トゥルースとの激烈タッグで来日した
コンヴァージ。ライヴでも、ハードコアだ、メタルだといった枠組みを軽々と飛び越えてのアグレッシヴなエモーションが息づくパフォーマンスを展開したが、「バンドの精神や姿勢を表わした」(ジェイコブ・バノン/vo)という「ダーク・ホース」から7分強の不穏な大作「レッチド・ワールド」まで8枚目となる新作も圧巻のひと言に尽きる。具体的な説明をほとんどしないバンドだが、このインタビューを読み、サウンド、歌詞、そしてジェイコブ自身によるアート・ワークに触れ、トータル作品としてのメッセージを感じ取ってほしい。
――『アックス・トゥ・フォール』には、侍が暗闇の中で敵をバッタバッタと倒しながら、前へ前へと突き進むイメージを抱きました。
ジェイコブ・バノン(以下、ジェイコブ) 「そりゃあ、面白い例えだな(笑)。俺たちの音楽を聴き、あれこれイメージを膨らませてくれるのって興味深いよ」
――そんな新作ですが、制作はいつ頃からどのような形で始まったんですか?
カート・バロウ(g/以下、カート) 「いや、とくにいつ頃から曲作り始めたってことでもないんだ。ただ数年に一度の割合で溜まったアイディアを吐き出したいと思う時があって、今回もそんな感じでスタジオ入りしたんだ。それに俺たちは人間としても進化し続けているから、楽曲のアイディアももちろんだけど、人間的な部分を表わしたいと思った時に、アルバムってものはリリースされるんだ」
photo by Matt Miller
――今作に関して、「コンヴァージは今、以前にも増して攻撃的で激しくなってきている」といった発言を目にしたのですが、それだけ魂の叫びを発しなければならない状況にあるということですか。
カート 「というよりも、長年バンドをやってきたことでよりダイナミックに、そして緩急をより巧く使い分けられるようになったってことさ。そういった意味では、攻撃的というより進化と言ったほうが正しいのかも」
ジェイコブ 「うん。4人のポテンシャルやアーティスティックな部分がコンヴァージとしてたどり着くのは、やっぱり叫びだったり激しさだったりするからね。バンドで攻撃的な部分を吐き出せるからこそ、逆に日常では穏やかに暮らすこともできるんだ」
――新作にはまた、「エフィジー」にスティーヴン・ブロッズキーをはじめとする
ケイヴ・インの3人、「クルエル・ブルーム」に
ニューロシスのスティーヴ・ヴォン・ティルなど、さまざまなゲストが参加していますよね。
カート 「まあ、ケイヴ・インとは5年前から一緒にやっているし、コラボといってもそんなに目新しいことではないんだけどね。とはいえ、友達のバンドに参加してもらって、インスピレーションの幅を広げたいって気持ちがあったことは確かさ」
photo by Matt Miller
――とくにコラボすることで、最初のアイディアから大きく形を変えた曲といえば?
カート 「そうだな。他の曲に関してはゲストにスパイスを加えてもらう程度だったんだけど、ジンギス・トロンの参加した〈レッチド・ワールド〉に関しては、文字通りのコラボになったと思う。実際、この曲のメロディやリフは昔からあったんだけど、もともとは
ジョー・サトリアーニを彷彿させるものだったんだ(笑)。自分たち自身、この曲を客観的に見られなくなっていたところがあるし、彼らという新しい風が入ることでいい形に仕上がったんじゃないかな」
――他者が加わることで、逆にコンヴァージ然とした楽曲になるなんて面白いですよね。
ジェイコブ 「そもそも参加してくれたミュージシャンはみんな、俺たちのことを気に入ってくれているだろ。自分たちなんかよりコンヴァージらしさを分かっているんだよ(笑)」
――じゃあ、愚問かもしれませんが、あえてバンドにとってのコンヴァージらしさとは何なんでしょう。
カート 「うーん。それは信条的なことで言葉じゃ表現できないんじゃないかな。それこそメンバー4人がいてのコンヴァージだし、これまでの作品を聴いてもらえば、きっと“らしさ”が感じ取れるはずだしね」
取材・文/兒玉常利(2009年12月)