【ディリンジャー・エスケイプ・プラン interview】脳髄を攪拌し、腰骨を粉砕。キャッチーさも加味された、ディリンジャー・エスケイプ・プラン衝撃の新作

ディリンジャー・エスケイプ・プラン   2010/03/19掲載
はてなブックマークに追加
【ディリンジャー・エスケイプ・プラン interview】脳髄を攪拌し、腰骨を粉砕。キャッチーさも加味された、ディリンジャー・エスケイプ・プラン衝撃の新作
 爆裂エクストリーム・ケイオティック・ハードコアで21世紀の扉をぶち破ったディリンジャー・エスケイプ・プランが、新作『オプション・パラリシス』で新たな進化の刻を迎える。脳髄を攪拌し、腰骨を粉砕するサウンドはそのままに、驚かされるのはそのキャッチーさ。過激さを犠牲にすることなく、ソングライターとしての完成度を追求したアプローチは、バンドがネクスト・レベルに到達したことを高らかに宣言している。バンドのギタリスト、ベン・ワインマンが新作における進化を語った。
――1曲目「フェアウェル、モナリザ」からいきなり凄まじいエクストリーム・サウンドをぶちかましながら、奇妙なフックがあって、全編意外なほどに聴きやすいアルバムですね。
ベン・ワインマン(g/以下、同) 「うん、俺たちはつねにミュージシャンとして進化してきた。いつでもエクストリームではあり続けるだろうけど、必ずしもアンダーグラウンドである必要はないと思うんだ。とてつもなくヘヴィでダークで、それでいてメロディがあってもいいだろう。デビューした頃は、俺たちがやっていることは、“音楽”とすら思われなかった。今ではそんなことはなくなったけど、ずっと前方にプッシュし続ける姿勢を持っていたいんだ。『オプション・パラリシス』ではソングライターとしての俺たちを表現したかった。もうひとつ新作の特徴は、これまではギターやベースのパートと歌メロを並行して書いていたけど、今回は曲をある程度仕上げてからグレッグ(プチアート)がヴォーカルを加えていったことだ。そうすることでメロディがくっきり浮かび上がるようになった」
――前作『アイア・ワークス』発表後には大規模なツアーを行ない、『レイト・ナイト・ウィズ・コナン・オブライエン』にも出演しましたが、 全米で500万人以上が視聴するTV番組に出演した感想は?
 「自分の目の前に500万人の観客がいたわけじゃないから、それほど緊張したわけでもなかった。バンドを結成した当初は2人とか3人の前でプレイして、その2人や3人からもブーイングを飛ばされてきたことを思えば、感慨深くはあったけどね。コナンが俺たちの音楽をどう思ったか判らないけど、少なくとも嫌悪感は見せなかったし、クールな人だったよ」
――新加入ドラマーのビリー・ライマーはアルバムにどのような貢献をしていますか?
 「ビリーはバンドに加入してスタジオに入るのが初めてだったんで、とてもナーヴァスになっていた。それがプラスに働いたんだ。アルバム全体にピリピリした緊張感が漲っているし、彼はバンドにおける自分の存在をアピールするために、凄まじくハードにプレイしている。あまりに全力を込めたせいで、両腕が腫れ上がったほどなんだよ」
――爆裂ケイオティック・ナンバーがある一方で、「ウィドウワー」「パラシティック・ツインズ」のようなダークな曲もあります。これらの曲は、どのようなところから着想を得たのでしょうか?
 「このアルバムは俺たちの自主レーベル“パーティ・スマッシャー”からの第1弾になるし、スペシャルなことをやろうと考えていたんだ。それで1年以上前に俺が書いた曲で、ディリンジャー向けじゃないと思っていたものを引っ張り出してみた。その2曲はどちらもピアノで書いたもので、〈パラシティック・ツインズ〉ではリード・ヴォーカルの一部をジェフ(・タトル/ギター)が歌っている。あと〈ウィドウワー〉と〈アイ・ウドゥント・イフ・ユー・ディドゥント〉では、マイク・ガーソンがピアノで参加しているんだ。彼はデヴィッド・ボウイの作品でプレイしているし、ナイン・インチ・ネイルズ『ザ・フラジャイル』での彼のアヴァンギャルドなピアノを気に入っていたんで、俺たちのアルバムで共演してもらうことにした」
――自ら設立した“パーティ・スマッシャー”レーベルからの第1弾アルバムとなりますが(日本では“デイメア・レコーディングス”からリリース)、自主レーベルを設立したのはなぜですか?
 「決して今までの“リラプス・レコード”に不満があったわけじゃないけど、音楽やアートワークやリリース時期、ツアー日程など、すべての面でクリエイティヴなコントロールを行ないたかったんだ。ほかのアーティストを抱える予定はないし、自分たちだけで小回りがきくから、すごく自由だよ。“パーティ・スマッシャー”という名前は『アイア・ワークス』収録の曲名からとったんだけど、“パーティを台無しにする”というレーベル名が俺たちに合っていると思ったんだ。たまに俺たちのライヴ後、バックステージにやってきて、“酒は? 女の子は? ドラッグは?”なんて言う奴がいるんだけど、俺たちはそんなものには興味がないからな。パーティを期待してもダメだって意味も込めているんだ(笑)」


取材・文/山崎智之(2010年3月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
[インタビュー] ソウル&ファンク・ユニットMen Spyder 初のEPを発表[インタビュー] KMC 全曲O.N.Oによるビート THA BLUE HERBプロデュースの新作
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015