再び歩き出した“恐竜”たち!J・マスキス(ダイナソーJR.)インタビュー!

ダイナソーJR.   2007/04/06掲載
はてなブックマークに追加
 2005年、インディ時代のオリジナル・メンバー、J・マスキス(vo./g)、ルー・バーロウ(b/vo)、マーフ(d)の3人が再び揃い、新たな一歩を踏み出したダイナソーJR.。二度とない、と多くのファンが思っていたこの奇跡的なリユニオンはおよそ2年の月日を経てニュー・アルバム『ビヨンド』に結実した。バンドの中心人物であるJ・マスキスにこのアルバムについての話を聞いた――。


 90年代前半にロック・シーンを席巻したグランジ/オルタナティヴ・ムーヴメントにおいて、ニルヴァーナソニック・ユースらとともに時代を代表するバンドとして扱われ、ここ日本でも大変な人気を博したダイナソーJR.。その後、97年のアルバム・リリース(『ハンド・イット・オーヴァー』)を最後にいったん解散していたが、2005年になってオリジナル・ラインナップで再結成を果たし、同年のフジロックに出演。翌06年には単独再来日公演も行なって、多くのファンを熱狂させたことはいまだ記憶に新しい。


 そんな復活ダイナソーJR.が、ついに新録音のニュー・アルバム『ビヨンド』を完成させた。中心人物であるギター/ヴォーカルのJ・マスキスはもちろん、ベースにはセバドーフォーク・インプロージョンとしての活躍でも名高いルー・バーロウ、ドラムスにマーフという結成当初のメンツでレコーディングした作品は、88年発表の『バグ』以来、実に19年ぶりということになる。久々に3人が顔を揃えた状況で、新譜の制作プロセスにはどのような変化が起きたのか? プロモーションのために来日したJに訊ねてみたところ、その返事は予想以上に率直なものだった。
「そうだな……まあ、ルーに無理やり曲を書かせなきゃならなかったのが一苦労でさ。そういう意味で、いつもよりハードだったよ。何が問題なのか、俺にもサッパリわかんないんだ。あいつ、それこそ何百って曲を書いてきてるのに、ダイナソーに曲を提供するとなると、なぜかいつも四苦八苦してしまうわけ。だから今回あいつの曲が二つも入ってるのは奇跡に近いっていうか(苦笑)」
 では、マーフに関してはどうだったのだろう。
「俺が曲を書く時には、まずドラム・パート、次にギターとメロディが聴こえてくるっていう感じで、ドラムはしっかり曲の一部になってるから、俺の曲に関してマーフの方で何か付け足せる余地っていうのは一切ない。それにマーフもそういうやり方が気に入ってるしね。あいつにはいつもと違う叩き方ができるチャンスだし、自分じゃ絶対に叩こうなんて思わないようなビートを教えてもらえるわけだからさ」



 ここまで正直に明かしながら、それでもなおJは「世間じゃそう見られてないけど、(ダイナソーJR.は、自分のワンマン・バンドというのとは)ちょっと違うんだよな」と言う。おそらく彼は、己の意見を妥協なく主張しながらも、最終的には他のメンバーとの関係性からバンドの音楽表現が生じてくるものだという信念を抱いているのだろう。
「ダイナソーでやる場合は、曲を書く時“これってマーフに叩けるだろうか”とか、あと“ライヴでやってもイケるだろうか”ってこととかは考えてるね。この3人でやった時にしっくりくる曲かどうかがやっぱり大事っていうか」

 こうした、その時その時に与えられた条件下で最善をつくそうとする基本姿勢があるからこそ、『ビヨンド』には、不変のダイナソーJR.らしさが保たれながら、同時に「確立済みの、後は風化していくだけの形式」に陥らない、今の彼らが鳴らすべき必然性を持った音が刻まれているのだ。


取材・文/鈴木喜之(2007年2月収録)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
[インタビュー] ソウル&ファンク・ユニットMen Spyder 初のEPを発表[インタビュー] KMC 全曲O.N.Oによるビート THA BLUE HERBプロデュースの新作
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015