「ようやくスタートラインに立てた」――DJ BAKU、初のフィーチャリング・アルバム『THE 12JAPS』が登場

DJ BAKU   2009/07/24掲載
はてなブックマークに追加
 ヒップホップに出自を持ちながら、あらゆるシーンと接触を重ね、オルタナティヴな世界観を作り上げたDJ BAKU。その彼が、1stアルバム『SPINHEDDZ』(2006年)、そして2nd『DHARMA DANCE』(2008年)に続き、日本を代表するMC、12人を迎えた初のフィーチャリング・アルバム『THE 12JAPS』を発表した。

 今年で10周年を迎えるプライベート・レーベル、DIS-DEFENSE DISCから世に披露されたミックステープ『Kaikoo With Scratch』にはじまった、DJ BAKUの“KAIKOO/邂逅”ヒストリー。『THE 12JAPS』は、彼の確かな歩みとともに、ストリート・ミュージックを牽引してきた12人の猛者とのショーケースともいえる、強力な作品に仕上がっている。




――アルバムの構想はいつ頃からあったんでしょうか。
DJ BAKU(以下、同) 「ラップのアルバムはずっと作りたいなと思っていたんですけど、具体的に動いていたわけではなかったんです。去年ぐらいから、久しぶりに般若と会ったり、(B.I.G.)JOEさんが帰ってくるとか、いろんなタイミングが続いて、やるなら今かなって」


――前作『DHARMA DANCE』はインストでしたが、その反動でラップ・アルバムにしたというわけではないんですね。
 「『DHARMA DANCE』のときは、“バンドを組む”という目的もありましたし。実験的な部分もあったし。だから全然別物で、反動ということではないです。今やっているHYBRID DHARMA BANDも、ある人を入れて本格的に動きたいし」


――ラップ・アルバムを作ることで、自分の原点を見つめ直すことになったんじゃないですか?
 「そうですね……。17歳ぐらいの時からの友だち、般若とかMC 漢MSC)がいれば、BOSSくん(ILL-BOSSTINO、THA BLUE HERB)とかShingoくん(Shing02)もいて。知り合ってから何年も経つうちに、それぞれ音源出して、名前を上げて、僕もソロを出して……。もちろん、多少は距離もできるし“一緒にやってる”感じとは違ってたけど、もう一回、ここで何かできるかなって思ったのは事実ですよね」


――昔の友だちってなかなか会わなくなっちゃいますよね。
 「だからある意味“音楽”だけですよね。絆というか、間を維持してくれるのは。このアルバムを出したら、もっと軽いフットワークでできるようになるかな、とも思って。隣のクラブで誰かがやってたら、パソコンひとつでサッと共演できるみたいな。漢とはありましたけど、今まで僕、そういう曲がほとんどなかったですからね」


――制作はどうでしたか?
 「楽しかったですね。ラップの人とやるのすごい楽しいんですよ。声が入ることで響きも全然変わるし」



DJ BAKU/THE 12JAPS

初回限定盤:POP-119S 税込3,390円

通常盤:POP-119 税込2,900円

01. PHOENIXION09
(ft. B.I.G.JOE

02. GOOOOOOOOOOOAL!!!!!!!
(ft. Shing02

03. WM

04. WALKMAN
(ft. NIPPS、K-BOMB)

05. スサノオ
(ft. BRON-K)

06. ASIAN SEED Ver.2
(ft. HIDADDY、INI)

07. INCREDIBLE STYLE CLASH

08. 眠る街
(ft. NORIKIYO

09. TOKYO

10. COAST TO COAST
(ft. 漢、般若)

11. MY ROOTS
(ft. FREEZ)

12. JAPANESE HIPHOP AND ME
(ft. ILL-BOSSTINO
――エレキ・ギターのフレーズが印象的ですね。
 「あれは全部、TURTLE ISLANDのジョージに弾いてもらいました。ビートを流して、こんな感じにって伝えて弾いてもらったものを、僕がサンプリングしています。彼にはShing02以外の英訳もお願いしていたり、前作での太郎くん(竜巻太郎、TURTLE ISLAND/NICE VIEW)に引き続き、TURTLE ISLANDにはむちゃくちゃお世話になってますよ」


――〈COAST TO COAST〉とか、ビキビキのシンセ直球みたいな曲が散りばめられているのは意図的に?
 「そうですね。でも全部ベタベタな、隙間があるっていう曲で終わるんじゃなくて、サンプリングも乗せた、ちょうど真ん中ぐらいを作りたいなと思って」


――参加しているMCのキャラクターが立ちすぎているだけに、まとめるのは大変だったんじゃないかと思うんですが。
 「でもリリックは完全にお任せですからね。僕は全然ディレクションしてないですよ。漢、般若は東京のラッパーだから、東京の曲にしようかな……とかぐらいで。皆キャリアのある方なので、自由にやってもらいました。苦労したって記憶もないですね。ホント楽しかったですよ」


――トラック先行で制作されたんですか?
 「そうですね。もちろん、それぞれのMCを想定して作りました。〈スサノオ〉のBRON-Kとか、完全に“これで”ってお願いした曲もあれば、人によっては、いくつかトラックを聴いて選んでもらったものもあります。リリックはレコーディング当日まで分からない(笑)。ある意味、賭けですよ。それぐらい(MCに)任せてるってことでもあるし、皆を遠まわしに煽ってもいるっていう。余計なことは言わないで“他の面子はこれなんですけど”ってくらいで。それでどれだけのものを出してくれるか、僕の色に染めるんじゃなくて、どれだけ“素”を引き出せるか、ですね。BRON-Kは、もはやラップではないというか、あれだったらヒップホップ聴かない人にも伝わると思うし。良いですよね。そしてBOSSくんは“B-BOY”というか“ヒップホップ”で。最後を締めてくれる説得力、話をまとめてくれる上手さはさすがですよね」


――今回の12人以外にも、名前の挙がったMCはいましたか?
 「志人降神とか、ANARCHYSEEDA……とかね。いや、いっぱいいますよ。でも、今回はこの12人。急なオファーとか、“金だけ積むから”なんてこともないし。話し合ってきた長さとかで決まった感じですね」


――「今イケてる人とやってみました〜」的な軽い感じではないってことですね。
 「でも、感覚的にはそれぐらいのもあって(笑)。単純に、僕の思うイケてるMC12人ってぐらい。だから、他の人が集めた12人とか聴いてみたいですしね。ロックのヴォーカリスト12人とか、レゲエとか。“今、イケてる人って誰なんだろ”って」


――ヒップホップDJとしての集大成的な作品と考えてもいいのでしょうか。
 「どうかな……??参加しているMCはある程度、歳のいってる人たちだから、ロック方面から僕の作品に触れた人や、若いリスナーが、これを“集大成”として受け入れるのかどうかも分からないし。ただ、付き合いが長いMCでも、一緒にちゃんと形にしたのはこれが初めてだから、“ラップの人とやる人なんだ”って伝わってくれるかなとは思います」


――このアルバムを出した今、BAKUさんご自身の“DJ観”は。
 「ヒップホップDJのソロ・アルバムは、大抵ラップが入ってるものじゃないですか。でも僕としては、それだとアーティストとして独り立ちしていないというか。友だちだからって、皆呼んでラップ・アルバムから自分のキャリアをはじめる気はなかったんです。ソロ『SPINHEDDZ』で一人でもやれるってことを証明して、『DHARMA DANCE』でバンドを組んで。今回ラップの『THE 12JAPS』を作って、武器が揃ったというか。まだ出だしの3枚なんですよ。やりたかった3つが揃って、ようやくスタートラインに立てた」


――リリース・パーティ〈JAPANESE STYLE WARS 2009〉も間もなくです。
 「出演するラインナップも含め、当日は、どうなるか分からないですね。MCの人たちはあくまでノリで動く人もいるんで。僕は皆を見守るお母さんのように(笑)、万全の準備をしておくだけです。ドキドキしてます(笑)」


■DJ BAKU『THE 12JAPS』特設サイト
http://www.pop-group.net/12japs



取材・文/星 隆行(2009年7月)



DJ BAKU『THE 12JAPS』RELEASE PARTY
- Japanese Style Wars 2009 -
●7月31日(金)
●渋谷O-EAST
●OPEN19:00
●前売\3,500/当日\4,000
●出演:
・DJ BAKU
・MSC
(漢、TAB001、PRIMAL、O2、DJ琥珀)
・MIC JACK PRODUCTION
(B.I.G JOE、INI、LARGE IRON、J.F.K as JAY-K、KEN、HALT.)
・SD JUNKSTA
(NORIKIYO、BRON-K、TKC、KYN、WAX、OJIBAH & 636、DJ ISSO)
and Secret Special Guest!!!!!!!!!!!!!!!!!!

<TIME TABLE>
19:00 OPEN/START
19:00 〜 DJ GO
20:00 〜 MIC JACK PRODUCTION (with DJ BAKU)
20:45 〜 SD JUNKSTA (with DJ BAKU)
21:30 〜 MSC (with DJ BAKU with ???)
22:10 〜 DJ BAKU with ??? with ???
22:30 END
※終了は22:30〜23:00を予定しています。

※チケット:
チケットぴあ/0570-02-9999(Pコード:324-663)
ローソンチケット/0570-084-003(Lコード:70268)
CNプレイガイド/0570-02-9999
e-プラス/eplus.jp
※問:H.I.P./03-3475-9999
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015