Dorothy Little Happy(ドロシー リトル ハッピー)は仙台のガールズ・ユニット。今年の8月末に行なわれたアイドルの祭典<TOKYO IDOL FESTIVAL 2011>で最も注目を集めたと言っても過言ではないグループである。ワンマン・ライヴの集客数は増加の一途を辿り(8月から3ヵ月連続で行なわれ、観客はその都度ほぼ倍増)、白紙とも噂されていた新作のリリースは2012年1月11日に決定。夏以降の彼女たちをめぐる状況は急激に変化している。そこで今回、いわゆるリリース・タイミングではないが本人たちにインタビューを敢行。普段の練習や代表曲「デモサヨナラ」のこと、来たる新曲について話を訊いた。
(写真左から)MARI、KANA、MIMORI、RUUNA、KOUMI
まずはレッスンについて。ドロシーが脚光を浴びた理由は、やはりそのパフォーマンス能力の高さに他ならない。あのシャープなダンスや一糸乱れぬ歌声はどこから生まれているのだろうか。
レッスン風景。歌もダンスもほぼ自主練状態で行なわれている。
KANA(リーダー) 「練習は基本的には週3回、5時間やっているんですけど、ライヴが近くなると時間が延びて回数が増えます。ほとんどが自主練で、自分たちで振りの違うところを指摘し合ったり」
MARI 「歌もダンスも先生がいないので、最初に振り付けしてもらった後は自分たちで練習するだけなんです」
KANA 「歌はレコーディングの時に
坂本サトルさん(※ドロシーの多くの楽曲を手がけているシンガー・ソングライター)に“こういう風に歌って”と言われるので、それを覚えておいて練習します。たまにライヴに来ていただいて、こう歌った方がいいというアドバイスをいただくこともあります」
ほとんど自主練ということに少なからずの驚きを覚えつつも、パフォーマンスの支えとなっているのはやはり豊富な練習量だったということに納得した次第。レッスン後、帰宅する頃には日付をまたぐこともままあるが、それでも辛いと感じたことはないという。
RUUNA 「その生活に慣れ過ぎてしまって逆にレッスンがない日は何をしようかなって思うことが多いです。あとはやっぱり受験生が4人なので、勉強しないとなって思うのが嫌だなって(笑)」
KANA 「テレビでダンス・スクールが特集されたりするじゃないですか。先生がすごく厳しくてレッスン生の子が泣いたりしてるのを見るけど、私たちはああいうのがないんです。メンバー同士で注意するからあそこまで厳しくはならないので、このまま自分たちでやっていていいのかなって思ってます」
と言いながらも、揃うことに重きを置かれたダンスはあまりに印象的で、数多あるアイドル・グループの中でもそのレベルは高い。しかし本人たちの志はそれをさらに超えているようだ。
MIMORI 「(所属事務所に)入ったらすぐに前のユニットのB♭に入れてもらったんですけど、歌もダンスも簡単なことが何もできなくて皆に迷惑かけていて、その頃のメンバーほぼ全員に教えてもらったんです。最近やっと人並みに踊れるようになりました」
KOUMI 「私はいろんなグループで基礎をやってきたんですけど、B♭の経験がないんです」
MIMORI 「でもKOUMIちゃんは私のひとつ後のオーディションで入ってきたのに私より遥かに上手いんです」
KANA 「踊るからには揃えたいっていう気持ちがすごいある。実際には揃ってないんです。でも止めるところをちゃんと止めるとか、顔の向きとか手の角度とか部分部分をキチンと押さえればそう見える。レッスンではそういうところを中心に直しています。それと毎回のライヴの録画をそれぞれが見て、うまくいってないところがあればその都度本人に言って揃えるようにしています」
飛躍のきっかけとなった<TOKYO IDOL FESTIVAL>でのステージ。
2011年におけるアイドル・ソングの代表曲のひとつであり、ドロシーの代名詞となった
「デモサヨナラ」についても話を訊いておきたい。彼女たちが“好きよ”と歌えばファンが“オレモー”と返すコール&レスポンスは、何ものにも替えがたい楽しい魅力に満ち溢れている。
<TOKYO IDOL FESTIVAL>にて
MARI 「東京でライヴをする時に仙台から来てくれたファンの方がコールをやって広めてくれたんです。今は“オレモー”の声が小さいと私たちのパフォーマンスがダメなのかなって心配になります(笑)」
RUUNA 「そうそう。なんか返しが小さいな……って思うと寂しくてやる気が出ないなーって(笑)」
MIMORI 「私の一番好きな曲です。ライヴはファンの人との一体感があってこそのもの。最後のサビは全力を出し切ります」
KANA 「地元のファンの方が皆で(コールを)考えてくれてたんです。私たちが東京でライヴをやったりする前からずっと応援してくれているので感謝しています」
最後は新曲「Life Goes On」について。音源リリースはまだ先になるが、現在ライヴで披露されているこの曲は彼女たちの地元・宮城県や被災地に向けられたメッセージ・ソングになっている。
MARI 「すごい元気の出る曲だなと思ったのが第一印象です。“消えてしまった星の分まで私たちは生きていくの”っていう歌詞があるんですけど、震災で宮城県をはじめたくさんの方が被災されて、亡くなった方もたくさんいるじゃないですか。でも、その人たちの分まで私たちがこれからも歌っていって、もっとたくさんの人を元気にしていきたいです」
KOUMI 「初めて聴いたときは震災の歌かなと思いました。“もう大抵のことは大丈夫 強くならなきゃね”って、皆に呼びかける歌なんじゃないかなって。気持ちが落ち込んでいる人たちのために私たちが歌わないとなって思いました」
MIMORI 「“とんでもない はじまったばかり”“ドアはようやく開いたばかり”っていう歌詞が私たちに当てはまるなって思いました。まだまだこれからなんだよって」
RUUNA 「ライヴで聴いたファンの方も涙が出たって言ってくれたりして。ファンの人とメンバーが同じ気持ちになれる曲だと思うんです。だから一緒に歌いたい」
KANA 「仙台出身のアイドルの私たちが歌うことに意味があるんじゃないかと思っています。明るい曲なので元気になってもらいたいなって思います」
取材・文/南波一海(2011年11月)
ホームタウン・仙台でDorothy Little Happyを観た!
地元・仙台でのステージ。ライヴを重ね着実にファンを増やしている。
今年の5月に仙台を訪れ、初めてDorothy Little Happyのライヴを観た。その日は仙台の震災復興支援イベントということで、宮城県出身のメンバーが在籍する
Dream5、
東京女子流も出演。それぞれが素晴らしいパフォーマンスを見せたのだが、トリとして登場したドロシーがその日のベスト・アクトをさらっていった。
B♭の9人(当時)によるキレ味鋭いダンスで幕を開け、その後ろから颯爽とメンバーの5人が登場。いきなり「Hi So Jump!-Happy Dance Remix-」をフルで披露した。登場一発目で7分にも及ぶ長尺の曲を繰り広げるセットリストに驚嘆し、完全に釘付けになった。メンバーの真っ直ぐな歌声に胸を打たれたわけだが、とりわけMARIのハイトーン・ヴォイスはCDで聴いていたよりもずっと迫力があった。
彼女たちの歌声やダンスの素晴らしさは多くの人が知るところだと思うので、ここではやはり地元ならではのバック・ダンサーとの共演について触れておきたい。この日はB♭に加えて公式ダンサーズのメンバーも代わるがわる登場し、一番多い時では総勢20名でのパフォーマンスになった。イレギュラーな編成だったと聞くが、それでも陣形が崩れることなくむしろ大きな一体感を生み出していたのがあまりに衝撃的だった。
MIMORIは「全員私よりダンスが上手い」と語っていた。謙遜もあるだろうが、あながち冗談を言っているようにも思えない。バック・ダンサーの石田亜佑美と田中風華は
モーニング娘。10期生メンバーオーディションに最後まで残り、石田は合格を勝ち取った(インタビュー中、メンバーたちの間では石田の人柄の良さや技術の高さがしきりに語られた)。ドロシーの後ろには、それだけのポテンシャルを持った人材が揃っているのである。
この編成で東京近郊でライヴを行なったことはないし、移動のことなどを考えれば今後しばらく実現することはないだろう。また、ひとつひとつの所作に揺るぎない自信が漲り、同時にリラックスしたムードを醸し出しているのも地元ならではだと思う。<TOKYO IDOL FESTIVAL 2011>で彼女たちに魅せられた方は、仙台へ足を運んでみるのはいかかだろうか。
取材・文/南波一海