UKロック・シーンの未来を担うニューカマー、
エヴリシング・エヴリシングが2010年の〈サマーソニック〉に続き、各国の気鋭新人を紹介するイベントである〈RADARS〉出演のために2度目の来日を果たした。彼らはお揃いのつなぎに喪章を付けてステージに登場。持ち味の美しいファルセット・ヴォイスやハーモニー、ニューウェイヴ〜エレクトロなどを織り交ぜたダンサブルなロック・サウンドを鉄壁の演奏力で聴かせてくれた。ライヴの素晴らしさは来日記念EP
『マイ・キーズ・ユア・ボーイフレンド』でも確認できるので、チェックしてみてほしい。ライヴ出演の前日、日本に到着したばかりの4人に話を聞いた。
――まずは、来日してくれてありがとうございます。
ジェレミー(b)「日本の震災はマンチェスターでもすごく大きな事件として扱われてて、これだけ発展した国がこういう災害に遭ったことに対してとてもショックを受けたよ」
マイク(ds)「東京の友達は全然問題ないからおいでよって言ってくれた。でも、どのくらいの範囲でどんな影響があるのかは正直わからなかったな」
――デビュー・アルバム
『マン・アライヴ』(2010年8月UKリリース)が出てからここまでの期間は自分たちにとってどういうものでしたか?
ジェレミー「大半はヨーロッパ中をツアーしてたね。あとは新曲づくり。充実してたけど、本当に忙しかったよ」
アレックス(g)「クリスマスと正月くらいしか休めなくて、それ以外はみんなに飽きられないように常に次の新しいアイディアを考えてた」
――自分たちのオリジナリティは何だと思いますか?
アレックス「やっぱりサウンドの目新しさ。ほかと似てないことだね」
ジョナサン(vo、g)「誰かの曲を聴いたときに、もっとこういうことをしてほしいってよく思うんだけど、あまりやってくれないものなんだ。だったら自分たちでやろうって。何か新しいものという意識は常に念頭にあるよ。でも、
ビートルズの言葉の詰め方とかには影響を受けてるね」
アレックス「あと、
ダーティ・プロジェクターズが大好きなんだ。コーラスは彼らのようになっているかも。目指しているわけじゃないけど、好きでね(笑)」
ジェレミー「せっかく4つ声(口)があって手もこれだけあるから、それらを全部使って表現したいんだ」
――ライヴでの演奏力の高さも素晴らしいですね。
アレックス「CDどおりにやるのが本当に難しい。たとえば、〈トゥー・フォー・ネロ〉は4人がとても集中しなければ成り立たないんだ。僕が左手だとしたらジェレミーが右手みたいな感覚でひとつになるイメージだね」
――来日記念EPに収録されているロンドンのユニオン・チャペルでのライヴはいかがでしたか?
ジェレミー「レコーディングをすることになって、オーケストラの形態や出したい音のイメージを2人の友人が全部調整してくれたんだ。音符を書き出してくれたりね。準備には半年くらいかかったけど、僕らの曲がああいう形で新しい息を吹き込まれてよかったと思ってるよ」
マイク「普段なら自分たちでやるところもオーケストラが演奏してくれて新鮮だった。ジョナサンはより歌に集中できたよね」
(C)saya38
――今のイギリスの音楽シーンについて感じていることを教えて下さい。
ジェレミー「今はけっこう健全だと思ってて、この状態が続くといいんじゃないかな。
ザ・ストロークスや
ザ・リバティーンズが流行ってた2000年代前半は僕らにはあまり面白くなかった。自分たちをエキサイトさせてくれる音楽ではなかったんだよね」
マイク「もちろん悪いって言ってるんではないよ。でも、昔の音楽と比べたら自分たちの興味を惹くものじゃなかったんだ」
――2回目の来日ですが、楽しみにしてることは?
ジョナサン「カラオケ!」
――エヴリシング・エヴリシングの曲は難しいからカラオケ向きではないですね(笑)
アレックス「そう! イギリスの友達にも君たちの曲は難しくて歌えないって言われたよ(笑)」
取材・文/田山雄士(2011年4月)