韓国初のクロスオーヴァー・シンガー・グループとして、JTBC局のTVオーディション番組『ファントム・シンガー』の優勝者たちで結成された精鋭4人組。デビュー・アルバムは“韓国インターパーク 2017ベスト・アルバム総合ランキング”でEXO、BTSなどに続き第4位、クラシック部門で第1位を獲得。コンサート・ツアーでも3万人以上を動員し、とくにソウル公演では4,000席を発売後15分でソールド・アウトにする人気ぶりを見せつけた。2017年11月には日本デビューを果たして、プロモーションのために初来日。一日限定のショーケース・ライヴには熱心な女性ファンやメディア関係者などが多数詰め掛け、大きな話題を集めた。そんな彼らから、早くも2ndアルバム『
アヴェ・マリア〜CLASSICA』が届けられた。
――オリジナル曲が印象的だった前作に対して、今回はおもにクラシックの名曲をオーケストラの演奏で(韓国語の歌詞を付けて)歌い上げていますね。とくに平昌五輪のフィギュアスケート男子で金メダルに輝いた
羽生結弦選手が2月25日のエキシビションで使用した、
サン=サーンスの「白鳥」をカヴァーした〈ノッテ・ステラータ(星降る夜)〉は、先行配信したiTunesのクラシック・ソング・チャートで第1位に輝くなど、すでに大反響を呼んでいます。
TJソン「羽生選手が使用したのはイタリアのテナー3人組、
イル・ヴォーロが歌っているものでしたが、F.D.Q.(フォルテ・ディ・クアトロ)ヴァージョンにも注目が集まって嬉しかった(笑)。じつは『ファントム・シンガー』の決勝で歌った曲であり、僕らにとっても非常に思い入れが深い曲なんです。
イル・ヴォーロの歌唱からは、いいヒントをたくさんもらいましたよ」
――収録曲はどれも美しい旋律の楽曲ばかりですね。現在もソウル大学の修士課程で学ばれているリリック・テノール、キム・ヒョンスさんのお気に入り曲は?
キム・ヒョンス「レコーディングの時からアルバムのタイトル曲でもある、
カッチーニ作曲の〈アヴェ・マリア〉がいいなと思っていました。歌詞は“Ave Maria”の繰り返しでとてもシンプルなのですが、僕たちそれぞれの声で感情を乗せることができるから。羽生選手にも今度はぜひ、この曲をとりあげてほしい(笑)」
――ミュージカル俳優としてグループ結成前から活躍されていたという、コ・フンジョンさんのお気に入り曲は?
コ・フンジョン「
フランク作曲の〈天使の糧〉です。僕ら4人が持っている声の個性を活かしつつ、全体で美しいハーモニーを形作ることができた。宗教曲ですがクリスマス・シーズンの定番曲でもあり、まさにクラシカル・クロスオーヴァーの王道といったところでしょうか」
――キムさんと同じソウル大学出身のリリカルなバス、TJソンさんのお気に入り曲は?
TJソン「レコーディングの時よりも、コンサート・ツアーで歌っているうちにどんどん好きになったのは、
チャイコフスキー作曲の『四季』より〈舟歌〉として知られる〈一本道〉です。オーケストラと僕らの声の相性が最高なんです。韓国では僕らのヴァージョンでこの曲を知って、原曲を聴いてみたらまた雰囲気が違っていてよかった! という反応もありました」
――アカデミックな音楽教育を受けていないシンデレラ・ボーイにして、パワフルなハイ・トーンの持ち主であるイ・ビョリさんのお気に入り曲は?
イ・ビョリ「
ロドリーゴ作曲〈ある貴神のための幻想曲〉の第2楽章をカヴァーした〈氷の花〉です。韓国でとても有名なギタリストをフィーチャーした旋律がすごく美しい。全体的に静かな曲ですが、中間部でエモーショナルに盛り上がるところが歌っていて気持ちよかった。今回の収録にあたりお世話になったロドリーゴの娘さんから“父の曲をこんなにも美しい曲に仕立ててくれてありがとう”っていうメールをいただいたことも忘れられないエピソードです」
――では、レコーディングで苦戦した曲などはありましたか?
イ・ビョリ「プラハでは時差にも悩まされたけど、現地の食事にも慣れなくて苦労しました」
コ・フンジョン「いや、君は何の問題もなく食べていたように僕には見えたけどな……」
イ・ビョリ「そう(笑)?」
キム・ヒョンス「個人的には
マイケル・ジャクソンの〈ヒール・ザ・ワールド〉が難しかったです。高音パートを担当しつつ、みんなともうまくハーモニーを成立させなくてはいけなくて……世界を癒す(healな)曲なのに僕は癒されなかった(笑)」
TJソン「コンサートにゲストを招くのは初めてのことで、僕らもすごく楽しみにしています。サラさんはヴァイオリンも演奏される、とても才能豊かで美しいかただとか……早くお会いしたい!」
――今後の目標や夢を教えてください。
イ・ピョリ「同じ所に留まっていないで、少しずつでいいから前に進み、成長していきたい」
TJソン「一生かけてずっと音楽をやり続けたい。そして、支えてくださるファンの皆さんの期待に応えたいです。すでに3枚目のアルバムのことも考えていますよ!」
コ・フンジョン「いい歌をたくさん歌って、レコーディングして残したい。僕ら4人でね」
キム・フョンス「焦らず、目の前のことからきちんと片付けていきたい。まずは4月の日本でのコンサートに全力投球します、どうかご期待ください!」
取材・文 / 東端哲也(2018年3月)