そのバンド名の由来は!?――バンコク発クロス・カルチュラル・バンド、FUTON インタビュー!

フトン   2007/10/23掲載
はてなブックマークに追加
 東南アジアのクラブ・ミュージック・シーンやポップ・カルチャー・シーンではすでに高い人気を誇る、タイ/バンコクを拠点に活動するクロス・カルチュラル・バンドFUTONが来日した。“ほほえみの国”とも“魔都”とも呼ばれるバンコクの懐の深さとカオティックな空気とともにやってきた彼らに、話を訊いた――。


 FUTONとは、もちろん日本語の“布団”のこと。今や万国共通語として通用するこの言葉を冠したのはバンコクを拠点に活動する4人組だ。90年代初頭に英国からバンコクに拠点を移したビーことポール・ハンプシャー(g、元パナッシュサイキックTV)と、元スウェードのサイモン・ギルバート(ds)が、ジーン(vo)、オー(b)というタイ人のふたりと結成したUKタイの混成バンドである。ビーの出自である80年代UKニュー・ロマンティックを彷彿とさせるダンサブルなロックが身上。新作『ペイン・キラー』は、洗練されたポップ・センスが光る快作だ。

 「前回は打ち込み中心で作ったけど、ライヴとの乖離(かいり)が気になっていたんで、今回はライヴのエッセンスを活かすべくバンド・サウンドを心がけたんだ。やはりぼくらの本領はライヴだからね」(ビー)


 ビー、サイモンともUKロックの最前線で長いこと活躍してきたベテランだ。現在のフトンでの活動はこれまでのバンドと比べてどうなのだろうか。

 「スウェードでは10年間もやっていて、最後のほうはちょっと怠惰になって、最初のころの情熱や初期衝動は薄れがちだった。でもこのバンドを初めて、そんな気持ちを取り戻すことができた」(サイモン)
 「ぼくのキャリアはジーンやオーより断然長いけど、彼らに対して上からものを言ったり指示したりすることはない。全員が対等に発言権があり、民主主義的なバンドなんだ。楽曲も全員で作ってるしね。それはぼくにとって、とても居心地のいいことだ」(ビー)

 結成当初は日本人メンバーも在籍していたことが示すように、フトンはもともと国境や民族を越えたクロス・カルチュラルなコンセプトを強く打ち出したバンドだ。音楽的にはヨーロッパ色が強く、我々がイージーに連想するようなアジア/タイ的な色は希薄である。それは主要メンバーが英国出身である以上に、インターネットなどの発達で、世界中どこにいても同じような情報を享受できる21世紀のバンドならではの特質と言うこともできる。

 「音楽や映画、ファッションなど、タイの若者に欧米の影響は確かに強いと思う。でも日本や韓国のポップ・カルチャーも人気があるし、その一方でタイの精神文化のようなものにも憧れがあるの。フトンの音楽にもそれは反映していると思う」(オー)
 「ぼくにとってはフトンっていうのは“新しい国”なんだ。そこでタイ人であることをことさらに意識しようとは思わない。音楽は万国共通語だからね」(ジーン)


 つまりは日本の平均的な若者と同じように、タイの平均的な若者たちのアイデンティティは、その無国籍性にこそあるのかもしれない。“フトン”というバンド名は「アジア発で世界中に広まったそのあり方が、自分たちの目標でもあるから」という理由で付けられたという。彼らの音楽が世界の若者にどのように受け入れられていくのか、楽しみだ。


取材・文 小野島 大(2007年10月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015