――このメンバーで初めてスタジオに入ったのは……?
momo 「去年の6月ですね」
――そのとき「一緒にバンドをやりたい」というイメージはあったんですか?
yukihiro 「ありましたよ。僕は堂々と表明してたつもりなんだけど、最近話しているときにそれが二人に伝わってなかったことが判明して(笑)。音楽的なキーワードとしては、“グランジ”というのがありましたね。でもそういう音楽だけやろうということではなかったです」
momo 「僕は以前、
acid android(※yukihiroのソロ・プロジェクト)のレコーディングに1曲参加してるんですけど、そのときは“オルタナ、シューゲイザー的なギターを弾いてほしい”というオーダーがあったんですよね。このバンドもその延長なのかなと思ってたんだけど、同時に“それだけっていうのもな”っていうのがちょっとあったんですよ、振り返ってみると。あと、yukihiroさんの家のCD棚を見たときに、80年代とかニューウェイヴとかいろんな流れのアルバムがあって、自分とリンクする部分も多かったんですよね」
yukihiro 「ちょっと恥ずかしいですね、CD棚を見られるのって」
345 「わかります。iTunesとかも見られると恥ずかしいですよね」
momo 「言い訳したくなるよね(笑)」
――(笑)。345さんはどうでした? 最初にスタジオに入ったとき。
345 「緊張のみですよ。大丈夫かな、どうなっていくのかな? っていう感じだったので」
――最初のオリジナル曲は「Last Scene」なんですよね?
yukihiro 「そうですね。この曲がどうなるんだろう、だけではなく、3人で音を作る作業がどうなるんだろうと思っていました」
――アレンジや構成はどんなふうに作っていくんですか?
momo 「リハーサルスタジオで組み立てていった曲が多いですね。何度も何度も演奏して、そのなかで展開を変えてみたりとか。最初だからっていうのもあるかもしれないけど、3人でイチから作るのが楽しかったんですよね。“あ、そういうドラムを叩くんだ”とか“ベース、そう来ますか”みたいなことを感じながら、あまり言葉で説明しなくても、何回もやっているうちにどんどん噛み合っていくっていう。345ちゃん、フレーズを考えるの早いよね」
345 「いや、先にyukihiroさんがドラムのフレーズをさりげなく出してくるんですよ。“あ、また変えてきた!”ってこともあって、“よし!”って感じで応えるっていうか」
momo 「曲作りの終盤になると、ほぼノーアイデアの状態から始めることもありましたからね。ギターのフレーズを4つくらい持っていって、“じゃあ、やります”って感じで音を出しはじめて。自分としては4つのうち1つでも曲になれば御の字だなと思ってたんですけど、しばらくやってると、ふたりが“4曲とも見えた”って言うんですよ。そのうちにyukihiroさんが突然“あ、出来たね”って。僕は“え、そうなんですか? よくわからないんですけど”って感じだったんですけど(笑)」
345 「ギリギリまで“う〜ん”って言ってましたよね」
momo 「そのときですね、このバンドは絶対、良いバンドになるって確信したのは。自分が見えてないものをメンバーが見てくれるんです」
――それってどの曲ですか?
momo 「1曲目(Weekend Parade)ですね。あとは〈Teardop〉と〈Strange Circus〉、〈Daydream〉かな」
――そういうスタイルで曲作りが出来るってことは、3人の感覚がすごく合ってるんでしょうね。
yukihiro 「ポジティヴだと思うんですよ。出てきたものはとりあえずカタチにしようっていう感じもあるし、最初はピンと来なかったとしても、やっていくうちに好きな部分が見つかって、“このパートを活かしたアレンジを考えよう”ということもあって。そこにはメンバーのアイデアも反映されてるし、曲に対する愛着も出てきますからね」
――シングルとしてリリースされた「hitsuji」もそうですが、ポップなメロディが強調された曲も印象的でした。 momo 「345ちゃんがコーラスだけじゃなくて、メインでも歌えるってことに気づいたことがきっかけでしょうね。とにかく、声がめちゃくちゃいいので。メンバーが345ちゃんじゃなかったら、こういう感じにはならなかったでしょうね」
――345さんのヴォーカリストとしての資質に気付いたのは、やはりシングル「hitsuji」に収録されていた「SINCE YESTERDAY」(ストロベリー・スウィッチブレイド)のカヴァーなんですか? momo 「そうですね。yukihiroさんがアレンジした音源に345ちゃんが歌を入れて。その作業をしていたとき僕はいなかったんですけど、音源をあとから聴いて“やった!”って。勝ったなって思いました(笑)。すごい武器だな、と」
――最初から男女のツイン・ヴォーカルをイメージしてたわけではないんですね。
momo 「なかったですね。僕としては“どうしたもんかな”って思ってたんですよね、最初。自分がメインで歌うっていう頭があったから、曲作りとかバンドの見え方に関しても、ちゃんと計算しなくちゃなって。でも、345ちゃんの声が素晴らしいってわかってからは、すごく自由になれたというか。歌モノもやれるし」
――逆に345さんは大変だったかも。
345 「momoさんがメインで歌うんだろうなって思ってましたからね。普段(凛として時雨)は高いキーで歌ってるので……。普通の声で歌うとこういう声だったんだって、初めて気づきました」
――歌うことのおもしろさに目覚めた?
345 「そういうのとはちょっと違うかも……」
momo 「嫌がってるわけじゃないんだけど、どうしていいかわからないって感じだったよね」
345 「そうですね。歌い方がわからなかったので。momoさんに“いいよ!”って言ってもらいながら歌ってました(笑)」
momo 「それはもう、yukihiroさんの狙い通りというか……」
yukihiro 「狙い通りです(笑)。女性のベーシストで歌も歌える人を探していたので」
momo 「いろんな意味で世界が広がりましたからね。演奏のヴァリエーションも増えたし」
――当然、歌詞にも変化が生まれますよね?
momo 「そうですね。たぶん、いちばん悩んでたのは歌詞なんですよ。僕が歌うって思ってたときは“新しい自分を作り上げなくちゃいけない”っていうのがあったんですけど、345ちゃんも歌うってなると、急に歌詞を書くのが楽しくなって。“こんなこと歌ったら、楽しそうだな”とか……」
――「ネコにゃんにゃんにゃん イヌわんわんわん ハロー」(SANPO)ですね。
momo 「絶対言われますね、それは」
345 「そうですね」
――そりゃそうでしょう(笑)。「手をつなごう キミと2人 パレードしようよ」(「Weekend Parade」)もふだんは書かないでしょ?
momo 「絶対に書かないですね。よく言ってるんですけど、このバンドで歌詞を書くのって、絵本を作ってるような感じなんですよ。物語を作るイメージというか。自分のバンドで歌うときは腹のなかにあるものを出さなくちゃいけないというか、“自分とは何ぞや?”ということになりがちだから。そういうのが一切ないっていうのは、楽しいですね」
――ライヴに関してはどうですか?
yukihiro 「まだ本数をやってないから、未知数なところもあると思います。でも、楽しくやってます(笑)」
momo 「けっこう自然体でやってると思いますね」
yukihiro 「それも何本かやってみて掴んだ感覚なんですけどね。最初は音楽的にもうちょっとハードな曲をやると思っていたので、演奏もそうしたほうがいいのかなと思っていたんだけど、そういうテンションじゃない曲も増えてきて。何本かやっていくうちに“そんなに力んでやるバンドでもないんだな”って気づきました。曲にも拠るんでしょうけど、全体的なトーンとしてはわりとリラックスしてプレイしてると思います。そのほうがまわりの音に反応しながらやれてますね」
momo 「うん、無理矢理スイッチを入れる感じじゃないですよね」
345 「曲の雰囲気も最初のほうと最近ではだいぶ変わってきましたから。上手く表現していきたいなって」
yukihiro 「歌う曲が増えたから、345ちゃんは大変かもしれないけどね」
――こうやって話を聞いていても、すごくリラックスした雰囲気が伝わってきて。お互いに接していくなかで、「こんなところがあったんだ?」っていう発見なんかもありました?
yukihiro 「たぶん、“あ、そうなんだ”って思うことはいっぱいあったと思うんですけど、いま聞かれてもわからないんですよね。もう慣れちゃって」
momo 「yukihiroさんがドアラ(中日ドラゴンズのマスコットキャラクター)好きっていうのは、ビックリしましたけどね」
yukihiro 「それにも慣れてくれてるよね(笑)」
――(笑)。このアルバムを聴いた人は誰でも期待すると思うんですけど、このバンドはパーマネントに続けていくんですよね?
yukihiro 「はい。まだアルバムが完成したばかりだし、いまはツアーのほうに頭が行ってるんですけど、新しい曲も作りたいと思っています」
345 「続けていけるバンドにしたいですね、私も」
yukihiro 「もうなってますよ」
345 「はい。もうなってました(笑)」
momo 「早くツアーをやりたいですね。お客さんの前で演奏することで見えてくることもたくさんあるし、“こういう曲が欲しいな”っていうのも出てくると思うので」