ヘイリー
“アメイジング・グレイス〜祈り
ヘイリー・グレイテスト・ヒッツ”
透明感あふれる美しい声で日本でも多くのファンを獲得している
ヘイリーが4月に来日、“ピュア・ヴォイス”と称される癒しの歌声を、東京と大阪で聴かせてくれた。この来日に先立って来日記念盤としてリリースされたベスト・アルバム
『アメイジング・グレイス〜祈り ヘイリー・グレイテスト・ヒッツ』のボーナス・トラックでは、“海上自衛隊の歌姫”こと、
海上自衛隊東京音楽隊所属のソプラノ歌手、
三宅由佳莉とのデュエットも話題になっている(今回の東京公演では2人の舞台での生共演が実現した)。取材前日(4月10日)に28歳の誕生日を迎えたヘイリー。編集部が持参した手作りアクセサリーのプレゼントをとても喜んでくれた。
「オー・マイ・ゴッド! 素敵! みんなに見せびらかさなきゃ。昨日はレコード会社のスタッフのみんながバースデイ・ディナーに招いてくれて、すっかり甘やかされたラブリーな誕生日だったわ。その前の日には、代々木公園や上野公園に桜を見に行ったの。残念ながら花はもうあまり残ってなかったけど、お花見している人たちを眺めるのが楽しくて、2日連続でバースデイみたいな感じだったわ」
――昨年末に結婚したばかり。新婚ほやほやなのに、ご主人と離ればなれの誕生日は寂しかったのでは?
「彼は音響エンジニアで、じつは今回のコンサートも彼がPAを担当しているので一緒に来ているのよ」
――今回のベスト・アルバムには新録音トラックも2曲。「花は咲く」と「祈り」は、どちらも東日本大震災の復興に向けた応援ソングです。あの震災の直前、ヘイリーさんの故郷のニュージーランド・クライストチャーチも大きな地震の被害に遭いましたね。
「幸いなことにわたしの近い人で被害に遭った人はいなかったけれど、クライストチャーチはとても小さな街なので、言ってみればみんななんらかの形で知り合いなの。だからとてもショックを受けて。じつはあの3日前までニュージーランドに帰っていて、ロンドンに戻った日に地震があったの。ついこのあいだ目の前のカフェでお茶を飲んでいた大聖堂が崩れるニュース映像を見ても、なんだか現実とは思えなくて……。その1ヵ月後の東日本大震災だったので、よけいにショックだった。この2つの歌がすでに日本の多くのみなさんの心を明るく照らす曲になっているのは知っているけれど、わたしが歌うことでさらに少しでもその力になればと、そんな思いで歌っています」
――「祈り」では、海上自衛隊所属のソプラノ、三宅由佳莉さんとデュエットしています。
「最初に声を聴いたときから2人の間にはなにか通じるものがあると感じていたの。録音は日本とイギリスで別々に録ったのだけれど、今回日本で初めて実際に一緒に歌ってみて、彼女のことがもっと好きになった気がするわ。とてもスイートな人。同じページの上に立っている感じって、わかるかしら。でも自衛隊のトレーニングもしているなんて、とても信じられないわよね」
(C)Joel Anderson
――1曲目が、デビュー盤に収録されていた「アメイジング・グレイス」から始まっていて、これまでのヘイリーさんのキャリアを俯瞰するようなアルバムになっていますね。
「お気に入りの曲ばかりを選ばせてもらった感じなの。〈アメイジング・グレイス〉は日本でのキャリアのスタートになった曲だし、世界中どこに行っても歌っている大好きな曲。〈ポカレカレ・アナ〉はニュージーランドのマオリの歌。〈サマー・レイン〉はツアー中に自分で作詞した思い出深い曲だわ。〈スカボロー・フェア〉は一時期参加していた
ケルティック・ウーマンで歌った曲だから、この曲を聴いてケルティック・ウーマンのことを思い出す人もいるでしょう。
絢香さんの〈I believe〉は、今では日本だけじゃなくて、外国のコンサートのセット・リストにも入れて歌っているの。名曲だと思うし、込められているメッセージがとても好きなので」
――10年以上前のデビュー当時と比べても、透明な声の印象は現在も変わりません。美しい声を保つ秘訣はなんですか。
「たしかに、みなさんが聴いて、ずいぶん変わったと感じるほどは変わっていないかもしれない。でも自分としては人生経験が増えたことで引き出しが増えたというか、前はできなかったのに今は表現できるようになったこともあるような気がするの。だから、前よりも自分の声が好きになっているわ。秘訣といっても、あんまり何もしてないのだけど、喉だけじゃなくて、身体全身の健康、身体のケアと心のケアは考えているわ。ただ、あんまり考えすぎないようにね。それよりは、自分の気持ちがいつも自由で、いきいきとハッピーでいることが大切なんじゃないかしら」
――数年前から編曲者として参加している楽曲が収録されているし、最近は曲づくりにもチャレンジしているそうですね。
「もともとあんまり勉強が好きじゃないから(笑)、特別な勉強をしたわけではないの。だからオーケストラの編曲は無理だけど、もう少し規模の小さい編成だったらできるものもあるので、自分のできる範囲で編曲にも参加しています。経験を重ねるうち、曲をもらったときに、こういうサウンドで歌いたい! っていうヴィジョンが見えてくることがあるの。それをできるかぎり自分のものとしてやりたいと、どんどん思うようになってきたので。曲づくりも、理想的には作曲は誰かと共作して、歌詞は自分で書けるようになったらいいなと。そのほうがいろんなスタイルの曲が生まれるでしょ? いつかそれをコンサートで歌ったり、オリジナルだけをまとめたアルバムを作りたいと思っているの」
――では近いうちにヘイリーさんの新しい世界を見せてもらえそうですね。
「そうね。でもまだ今は曲を書きためているところなので、もう少し時間をちょうだい(笑)」