メルヴィンズ、
アンアースリー・トランス、そして
ハイ・オン・ファイヤーという強烈なラインナップが顔を揃えたイベント<エクストリーム・ザ・ドージョー Vol.26>は、大阪・名古屋での公演を順調に終え、各バンドの凄まじい重爆音はオーディエンスを完膚なきまでに圧倒したという。しかし、ご存知の通り東京公演が行なわれる予定だった3月11日には、東北関東大震災が起きてしまった。メルヴィンズとハイ・オン・ファイヤーは、そのほんの2週間前にもニュージーランドをツアーしていて、現地で大地震を経験したばかり。このインタビューは、震災翌日の12日に行なわれたものだが、ハイ・オン・ファイヤーの中心人物マット・パイク(g、vo)は、気丈に質問に答えてくれた。
マット・パイク(以下、同)「俺が作詞する時には、つねに読書が基本にあるんだ。それで、神話っていうのは、その設定だけでも非常に魅力を感じるものだよね。でも、コンセプト自体が曲の書き方を大きく左右するということはないかな。いつもリフだったりメロディだったり、曲の骨格が最初にできているし、あくまで韻を踏むという制約が先にあって、その先のディテールを作り込んでいくという感じだから」
Photo by Travis Shinn
――最新作では、
スレイヤーや
メタリカを手がけたグレッグ・フィデルマンをプロデューサーに迎えましたが、彼と仕事してみてどうでしたか?
「素晴らしかったよ。グレッグの仕事ぶりはグレートだったし、作品の出来映えにも満足してる。彼は独自のやり方というのを心得ていて、団結感のある優秀なスタッフが揃ったチームも持っていた。それに、ずっと
リック・ルービンと一緒に仕事をしてきた人だから、その流れを汲んでいるようなところがあって、音楽に向き合う姿勢からも刺激を受けたね。おかげで、いいサウンドに仕上げてもらえた。あとグレッグは、アレンジだったり、ギターのサウンドとかプレイの仕方についても、口うるさくない範囲で意見を述べてくれる人だったから、自分たちだけだと“これでいいや”と済ませてしまうようなところを、彼の効果的な助言のおかげで、これまでより2歩くらい先にバンドを押し進めることができたと思う」
――過去に、
スティーヴ・アルビニや、
ジャック・エンディーノといった名プロデューサーを起用していますが、まるでバンドの可能性を広げるために、いろいろな人材を試しているような印象もあります。プロデューサーの選択に関しては、どのように決めているのでしょうか?
「過去にどういう作品を手がけてきたかっていうことがひとつの条件だね。そして、それ以上に、どれだけ俺たちのことを真剣に考えて作業を進めてくれるかってことが重要だ。あとはまあ、予算の問題とかそういうこともあるけど。とにかく俺たちと相性が合うこと、どれだけ仕事に力を注いでくれるかが大事だよ」
Photo by Travis Shinn
――わかりました。ところで、以前のバンド=
スリープを再結成して何度かライヴを行なったそうですが、やってみようと思った理由は何ですか?
「ちょっと普段と違うことをやってみようかって思ったのと、それに、やれば絶対に楽しいってことはわかってたから、やったんだ。今後もまたスリープとして演奏すると思うよ。いざやるとなったら、いつでもやれるさ。スリープって、ずっと長く一緒に演奏してきた仲間だから、2〜3時間くらい練習すれば、すぐばっちり元の状態に戻れるんだ。一方で、ハイ・オン・ファイヤーは俺の一番大事な子供だから、本体としてキープしていかなきゃならないと思ってる。まあ、ふたつを一緒にやっていくのはそんなに難しいことじゃないよ。優先順位はハイ・オン・ファイヤーが上だけどね」
――それでは、今後の予定を教えてもらえますか?
「まずは家に帰ってぐっすり眠りたいけど、その後はハイ・オン・ファイヤーの新曲にとりかかるつもりだ。まだ曲の骨格となる部分があるくらいで、テーマとしてはリストに上がってるようなものすらまだないけどね。家に帰って、またいろいろな本を読んで探すよ。そして、いつでも自由に使える快適なスタジオがあるんで、そこでアイディアを練っていくことになるかな」
――今回は、大阪〜名古屋と、スゴいラインナップで素晴らしいライヴを見せてくれたわけですが、残念ながら東京公演は中止になってしまいました。今回のイベントを心から楽しみにしていたファンに一言メッセージをください。
「日本には、またすぐライヴをしに来るつもりだよ。本当に来たいからね」
取材・文/鈴木喜之(2011年3月)