充実したバンドの“今”をダイレクトに伝える、日暮愛葉 and LOVES!のアルバム『NOW is the time!』

日暮愛葉 and LOVES!   2008/09/18掲載
はてなブックマークに追加
 90年代初頭より、Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her〜ソロ〜LOVES.と、常にエッジの利いたサウンドを送り届けてきた日暮愛葉。そんな彼女が新たにレーベルを立ち上げて、自らのバンドLOVES.改め“日暮愛葉 and LOVES!”のニュー・アルバムをリリース! 『NOW is the time!』と題された今作は、明快かつ力強いタイトルそのままに、充実したバンドの“今”をダイレクトに伝えてくれる会心の一枚に仕上がった。


 1992年のバンド結成以来、コートニー・ラヴによって激賞されたほか、ソニック・ユースら、英米のオルタナティヴ・ロック・バンドと共振していたSeagull Screaming Kiss Her Kiss Her。その解散後、02年に始動させたソロ、そして、05年に結成した新バンド、LOVES.と、活動を緩やかに移行させてきた日暮愛葉。日本のガールズ・オルタナティヴの旗手と形容されることも多かった彼女だが、そもそも、Seagull Screaming Kiss Her Kiss HerがXTCの同名曲からバンド名を取っただけあって、その音楽性には実はニューウェイヴ的な要素が秘められていた。そして、バンド名を新たに日暮愛葉 and LOVES!と改名し、自身のレーベル、chance!dance!record立ち上げとともにリリースするニュー・アルバム『NOW is the time!』では、そんな彼女が考えるニューウェイヴ・サウンドが遮るものなく、高らかに鳴らされている。
 「前作を経て、今回は曲作り、音作りの段階からバンドとしてスタジオに入ればよかったし、それ以前のソロで苦しくなったとき、アッキン(秋山)が一緒にリハーサルに付き合ってくれてたんです。彼とは年齢も一緒で80年代の音楽話もできるし、この人とやるのが一番居心地がいいというか、新しいことに挑戦できるなって」 (日暮愛葉)


 バンドの核となるのは彼女とFresh!/downyのドラマー秋山隆彦。そこにひと世代下のギター/マニュピレーター/エンジニアの岩谷啓士郎、サポートである元NUMBER GIRLのベーシスト、中尾憲太郎とFresh!のサックス奏者、中村弘が加わった5人体制によって、フリーキーかつダンサブルなバンド・サウンドが叩き出される。
 「音楽を始めた頃って、ドラムがいわゆる80年代のゲート・リヴァーヴ・サウンドで、その代表的なものがパワーステーションとかデヴィッド・ボウイとか、ナイル・ロジャースものだったんです。当時は、ドラム・セットを買うときにあの音が鳴ると思ってたくらい(笑)。でも、20年以上経って、あのサウンドにまた体が戻りたがっているところは……まぁ、半分冗談なんだけど、もう半分は本気っていう」 (秋山隆彦)
 「ニューウェイヴとかノーウェイヴはもちろん聴いているんですけど、僕が音楽を聴き始めた時は、あらゆる音楽がアーカイブ化されて、横並びになっていたので、そこから好きなものを聴いている感じで、ゲート・リヴァーヴ・サウンドも新鮮でしたよね」 (岩谷啓士郎)
 「ベースのナカケン(中尾憲太郎)とか、サックスの中村(弘)くんも含め、それぞれ反応が違って、そこが面白いというか、どう返ってくるのかなっていうところが、このバンドでは楽しみなんですよ」 (日暮)

 ジェイムス・チャンスばりのサックス・ブロウや日暮のキーボード、岩谷の組んだシーケンスを交えながら、5人は広く取った空間に向けて鋭角的な楽曲を次々と放ってゆく。その作風は、リリックに託された彼女の心情も相まって、非常に開放的な印象を受けるが、“今まさにその時”と題されたアルバム・タイトルが雄弁に物語るとおり、2008年の彼らはバンドとしての転機を迎えたのかもしれない。
 「周りのことが気になることもあるんだけど、“やっぱいいや。自分のやりたいことだけで”って思いますね。レーベルを立ち上げて、ライヴをやっててもそうだし、MySpaceをやっててもそうだし、ホントに国境なく、いろんなレスポンスを頂くんですけど、それが面白いんですよね。それ以前、メジャーにいたときは与えられた安定だってあったし、居心地は良かったんですけど、サービス精神が旺盛だから、そういう気持ちと、でも、自分の好きなことがやりたいっていうジレンマで押しつぶされそうな瞬間があって、私にとっては健康的じゃなかったかもしれない。でも、LOVES!になってから、動きやすくなったし、たしかに何かが解放されていってる気がしますね」 (日暮)


取材・文/小野田 雄(2008年8月)



【日暮愛葉 and LOVES!ライヴ情報】


シェルターマンスリー企画最終回
「Now is the time!」
日時:2008年9月27日(土)
会場:下北沢シェルター
共演:FLEET、YOLZ IN THE SKY
開場:19:00/開演:19:30
チケット¥2,500(ドリンク別)
お問い合わせ:下北沢シェルター 03-3466-7430


日時:2008年9月28日(日)
会場:長野LIVE HOUSE J
共演:(バンド)KING BROTHERS、ザ・ビアーズ(DJ)アライタカヒロ、PION、YASSAN
開場:18:30
チケット¥2,500(前売)/\3,000(当日)
お問い合わせ:LIVE HOUSE J 026-225-6068

日時:2008年10月30日(木)
会場:京都metro
共演:moools.、ヴァーサス、+/-
開場:19:00/開演:19:30
お問い合わせ:京都metro 075-752-2787
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 角野隼斗 イメージ・キャラクターを務める「ベスト・クラシック100極」のコンピレーション・アルバムを選曲・監修[インタビュー] 色々な十字架 話題の“90年代ヴィジュアル系リヴァイヴァル”バンド 待望のセカンド・アルバムをリリース
[インタビュー] アシックスジャパンによるショートドラマ 主題歌は注目のSSW、友成空[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤
[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ
[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも
[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”
[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015