J.COLUMBUS 「何日か経つと、(ビートの値段が)高そうだなとか考えちゃって腰が重くなるからサクッと動いたほうがいいんですよね。金額を知って諦めることも多々あるから。ニューヨークのプロデューサーに頼むとびっくりするような値段を提示される時があるけど、俺の勝手なイメージだとベイ・エリアは意外と高くない。実際メカニックスのビートは現実的な値段だった。そこで、どんなビートをリクエストしようかっていう話になりますよね。ILL-TEEと話をしたあとにあらためてメカニックスの〈I'm So Oakland〉っていう俺の好きな曲を聴いたらやっぱりめちゃくちゃカッコよくて。そこはILL-TEEとも意見が一致したから、その曲のテイストに近いビートを送ってもらった感じですね」
ILL-TEE 「〈I'm So Oakland〉は、ベースの音がベェイベェイ鳴ってる感じが特徴的な曲なんですよね。で、1週間以内ぐらいにMERCYくん伝いでビートが4曲ぐらいで送られてきたなかから、2曲を選びましたね」
ILL-TEE 「だから、DJフレッシュが誰かと組んで出したアルバムを聴くと、聴いたことあるトラックがよくある。あと、仙人掌が〈BACK TO MAC feat. ERA & MUD〉(仙人掌『VOICE』収録)で使ったDJフレッシュのトラックをベイ・エリアのちょっとマイナーなラッパーが使ってて。それを俺がiTunesで発見してしまった(笑)」
J.COLUMBUS 「最初PRESIDENTS HEIGHTSを3人でやろうってなった時、かつてNORDEってバンドをやってて、いまGang Up On Againstっていうバンドに参加しているHARUKIってヤツのトラックでラップしようって話だったんですよ。HARUKIは昔、Dr.GR名義で、YUKSTA-ILLとかにもトラックを提供しているはず。だから、いろんなセンスのヤツがいて、同じMEDULLAのなかで、MASS-HOLEは東海岸のヒップホップの王道の方に向かったけど、ILL-TEEはベイ・エリアの方向に行ったっていうのも面白い。ILL-TEEはDJもやるしトラックのチョイスの仕方も独特だし、ラップもニューヨークのラップの乗り方とは確実に違う」
――そこで、今回リリースした「STAY TRUE」と「BOTTLE AFTER BOTTLE」の2曲入りのシングルなんですが、前者の1曲目は硬派なステイトメントの曲で、後者の2曲目はレイドバックした曲ですよね。「STAY TRUE」は、トラックはベイ・エリアですけど、タイトルのワード・センスとかは東海岸っぽい感じもありますよね。
ILL-TEE 「そこは、染みついているMEDULLA感ですかね(笑)」
J.COLUMBUS 「〈STAY TRUE〉は、ROCKCRIMAZ(ILL-TEEがヴォーカルを務めるハードコア・バンド)の『DOWN WITH IT』(2018年)を作ってる時に録音してますよね」
ILL-TEE 「そうですね。だから、ハードコアのバンドのほうのリリックも書いてたから、その影響もあってストレートな曲になった。プライベートでちょっとムカつくことがあって、反面教師じゃないけど、俺は好きな人や場所に対して真っ直ぐなつもりだし、そこを行ったり来たりすることに見返りなんか求めてないよって、まぁリリックの通りです。〈BOTTLE AFTER BOTTLE〉の方は前者に比べてフロウで遊びを意識した部分があります。内容も遊びなんですが、酒飲んでまた酒飲んでっていう、曲名通り“BOTTLE AFTER BOTTLE”な毎日やなぁ〜って感じですかね。でも、飲みながら新しいアイディアや企画が生まれたりするじゃないですか。だから、過去は振り返らずにいまのまま、酒でも飲んで、変わらずに進んでく、みたいのが“継ぎ足すグラスにヒストリー”っていうリリックに出てるって感じでしょうか(笑)」
J.COLUMBUS 「ははははは(笑)ILL-TEEのレコーディングは安心して聴いていられる感じなんですよ。俺もスタジオで一緒に曲を録ったりしたことが何回もあるんですけど、技術力もあって、だからいま円熟味を増してきてる。それで、〈SATY TRUE〉のフックでオートチューンをやったり、俺の方から〈BOTTLE AFTER BOTTLE〉はもう1ヴァース入れた方が良くない?と提案して3ヴァースになった。圧倒的な安定感があるから、少しプラスアルファを加えようと」