忌野清志郎   2010/04/26掲載
はてなブックマークに追加
今も途切れない、その偉大なる足跡
〜忌野清志郎デビュー40周年によせて〜


文/今井智子


(C)有賀幹夫
 3月5日は、忌野清志郎のデビュー40周年目の日だった。1970年のこの日、RCサクセションのデビュー・シングル「宝くじは買わない」がリリースされたのだ。

 言うまでもないがRCサクセションは、清志郎が高校生の頃に幼なじみの小林和生、破廉ケンチと組んだフォーク・トリオを母体に、70年代後半には5人編成のロック・バンドに発展、80年代は日本のロックを代表するバンドとなり人気を博したが、90年に活動休止した。以後、清志郎はソロとして活動、音楽に留まらずドラマや映画に出演し、自転車で海外までも走り回り、多くの絵画作品を残した。

 音楽に留まらない多才ぶりを発揮していた清志郎が身をもって伝えてくれたのは、柔軟だが芯のある生き方だったと思う。ロックやソウルという音楽を通じて彼が感じたことや学んだことを、彼は言外に教えてくれた気がする。作品が発売中止になるようなことがあっても口を閉じることはなく、自分が聴いてきたのはそういう音楽だからと穏やかに言った。また、ふざけて大言壮語を吐くこともあったが、普段はもの静かでおっとりとして、好きなことには時間も何もかも忘れて熱中する人だった。「曲を作って歌って、絵を描いていられたらいい」と言っていたものだ。

 もちろん最初に思い浮かべるのは、華のあるステージでの姿。心に突き刺さる歌、踊らずにいられないビートを発散する“バンドマン”清志郎だ。初期のフォーク・トリオ時代から、オーティス・レディングサム・クックに触発された歌は、異彩を放っていた。冒頭のデビュー・シングルのカップリング曲「どろだらけの海」は、曲が進むにつれ「ガッタガッタ」と歌いながら高揚していくスタイルが、まさにオーティス。これに限らず録音を差し替えられたからと初期の作品には不満を漏らしていたものだが、清志郎の歌が放つワン&オンリーの輝きは確かに捉えられている。


(C)有賀幹夫
 デビュー当時から親交を深めていた朋友、仲井戸麗市を迎え、「ローリング・ストーンズみたいなバンドにしよう」とRCサクセションが5人組のバンド編成になると、さらにその輝きは増していく。いまや定番の「トランジスタ・ラジオ」や「雨あがりの夜空に」、入魂のバラード「多摩蘭坂」など、代表曲が次々に生まれ、ライヴでは華やかな衣装とパワフルなパフォーマンスで魅了した。絶え間なく続く全国ツアーやイベント、夏には日比谷野音、年末には日本武道館と、あまたのライヴでRCは多くの人を虜にしていった。そして清志郎のように歌いたい、RCみたいなバンドをやりたいと思い、ミュージシャンとなった人は少なくない。昨年夏、清志郎が出演するはずだった<フジ・ロック・フェスティバル>に、「忌野清志郎スペシャル・メッセージ・オーケストラ」として、ナイス・ミドルwithニュー・ブルーデイ・ホーンズを中心に、仲井戸麗市や泉谷しげるからブッカー・T・ジョーンズスティーヴ・クロッパーまで、清志郎に縁の人たちや彼を敬愛する人たちが参加したスーパー・バンドが演奏したのは記憶に新しい。また、この5月2日には、仙台で行なわれる<ARABAKI ROCK FEST.10>で、13組のヴォーカリストが参加する「THE GREAT PEACE 10 SONGS “RESPECT FOR忌野清志郎”」が登場する。ステージも客席も一つになって,清志郎の歌を歌うのが目に浮かぶようだ。

 1年前の5月2日、清志郎が癌性リンパ管症で急逝したことは今も信じられない気持ちになるが、9日に東京・青山斎場で行なわれた「青山ロックン・ロール・ショー」に4万人を越える人が集まり、深夜まで清志郎の歌声が流れていたことを思い出すと、今も途切れない彼の足跡の大きさを感じる。これからも私たちは、彼の足跡を追いかけていくのだろう。


2010年5月6日発売予定

A4判 168頁予定

税込価格2,940円

(本体2,800円)

雑誌コード:64371-61
NAUGHTY BOY
KING OF ROCK'N ROLL
IMAWANO KIYOSHIRO
撮影 / 有賀幹夫


デビュー40周年記念!80年代半ばから1990年までのRCサクセションのライヴ、アルバム『COVERS』レコーディング風景、1990年以降のソロ・ポートレートを中心に、ミック・ジャガーとの2ショット、街頭ライヴ……など1985年から2007年にかけて撮影された未発表を多数含む写真約130点を“デジタル・リマスター”して収録した待望の1冊!

 本書刊行に先立ち、デビュー40周年を記念した写真展が全国規模で開催される。3月26日(金)〜4月11日(日)大阪・道頓堀 中産くいだおれビル4F「studio ZAZA」を皮切りに、本書刊行後の5月6日(木)〜5月11日(火)には東京・渋谷 東急百貨店本店7F 特設催物場で行なわれ、その後も全国各地での開催が予定されている。

[大阪]
2010年3月26日(金)〜4月11日(日)
大阪 道頓堀 中産くいだおれビル4F「studio ZAZA」
11:00〜21:00
※入場は閉館の30分前まで。最終日は18:00閉場。
一般: 前売 500 / 当日 700
高校生・大学生: 前売 300 / 当日 500
※中学生以下無料
ぴあ 0570-02-9999 (P: 986-791)
ローソン 0570-084-005 (L: 56930)
e+ (http://eplus.jp)
info: studio ZAZA 06-6212-3005
サウンドクリエーター 06-6357-4400
http://naughtyboy.mikioariga.jp/

[東京]
2010年5月6日(木)〜5月11日(火)
東京 渋谷 東急百貨店本店7F 特設催物場
10:00〜19:00
※入場は閉館の30分前まで。最終日は17:00閉場。
一般: 前売 500 / 当日 700
高校生・大学生: 前売 300 / 当日 500
※中学生以下無料
チケット発売: 2010年4月10日〜
ぴあ 0570-02-9999 (P: 986-853)
http://naughtyboy.mikioariga.jp/


最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015