00年代以降のUSインディ・シーンでその端正な歌心が高く評価されてきたオースティン在住のサム・ビームのソロ・ユニット、
アイアン&ワイン。そんな彼から約2年ぶりとなる新作
『ゴースト・オン・ゴースト』が届けられた。逞しいヒゲの隙間から零れ落ちる、示唆とロマンに満ちた言葉の数々は、ニューヨークの名うてのジャズ・ミュージシャンたちとの作業を経ることによって、よりいっそう独自の輝きを放っている。さっそく、5人の娘の父親でもあるサムにメールで質問をしてみた。
photo: Craig Kief
「うん、とても興奮したよ。すばらしいニュースだったね」
――今回の『ゴースト・オン・ゴースト』はアメリカではノンサッチからリリースされていますが、この歴史のあるレーベルから出す事になったのは?
「ノンサッチは前作をリリースしたワーナー系列にあるレーベルで、彼らが興味を示してくれたんだ。もちろん喜んで承諾したよ。だって、ここのカタログには昔からよく親しんでいたからね」
――新作には大勢のジャズ・ミュージシャンが参加していて、実際、ジャジィなアプローチもいくつかの曲でフィーチャーされていますが、こうした方向性の変化はどのように生まれたのでしょう?
「とにかくこれまでにやったことのないアプローチをしてみようと思ったんだ。ジャズ・ミュージシャンばかりと一緒にプレイしたのはそういうわけ。すごくナチュラルな流れだったよ」
――あなたのフェイヴァリットなジャズ・ミュージシャンを教えてください。
photo: Craig Kief
「ロブは過去のアルバムでも演奏していて、以前から知り合いだったんだ。で、今回は初めてアルバムの初期段階から彼に参加してもらうことができた。だからこそ、こうした大きな変化が生まれたんだと思うよ」
――レコーディングはブルックリンで行なわれたそうですが、そこでの経験はやはり従来の録音とは異なりましたか?
「僕は自分のスタジオを持っていて、ここ最近の2枚はそこで録音したんだ。そこでは、スタジオを楽器のひとつとして使うことを学ぶために多くの時間をかけていた。でも、今回のアルバムはストリングスやホーンのアレンジをやってみたくて、スタジオに入る前に準備をする必要があったから、これまでとはまったく異なるものになったね。あらかじめ考えていたアイディアを記録するプロセスだったって感じかな」
――レコーディングで印象に残っているプレイヤーは?
photo: Craig Kief
――一方でアルバムには優雅なストリングスや美しいコーラスをフィーチャーした“ソフト・ロック”なフィーリングをもった曲もありますね。ジャジィな曲とこうした曲とのコントラストがとてもユニークだと思います。
「僕はメロディのあるポップ・ミュージックが大好きなんだ。普段からあらゆるタイプの曲を聴くけど、今回は頭の中で口ずさみやすいような曲を書きたいと思ったのさ」
――ちなみに7曲目の「SINGERS AND THE ENDLESS SONG」の歌詞の中に“Ghost On Ghost”というフレーズが出てきますが、これをアルバム・タイトルにしたのは?
「アルバムのほとんどの曲には物語の語り部となるカップルが存在するんだ。そして、このアルバム・タイトルはそんな2人のロマンティックな関係と同じくらい強いスピリチュアルな繋がりのことを示唆しているのさ」
――最後の質問です。ポスタル・サーヴィスが今年再結成しましたが、あなたが彼らの「サッチ・グレイト・ハイツ」をカヴァーしたのはどのような経緯だったのでしょう? 「ポスタルのベン・ギバードが7インチのB面用にカヴァーを録音してくれないかって頼んできたんだ。あの曲をカヴァーするのは楽しかったよ。歌詞の面でいろいろな解釈ができる豊かさがあったね。でも、あんなに大きなインパクトを残すことになるなんて考えてもいなかったよ(注:映画『終わりで始まりの4日間』でフィーチャーされて話題に)。クレイジーだったね」