「だれかの『こころのやらかい場所』に」をコンセプトに掲げるアイドル・グループ“一瞬しかない”が、7月6日にファースト・アルバム『一瞬しかないの『ファーストアルバム』!』をリリースした。
2019年デビューだというから、満を持してのアルバムといえるだろうか。何度かのメンバー異動を経て、現在は喫茶めい、仆破(ふわ)フリル、銀海(ぎんか)、晴後(はれのち)すずめの4人で、首都圏のライヴハウスを中心に活動している。
塚本りょう(羊毛とおはな、転校生など)がサウンドプロデュースを手がける楽曲は粒ぞろいで、アイドル通の高評価にも納得。アルバムの構成もよくできており、ほぼ音楽的な興味一色で取材現場に赴いたが、いざ会ってみたらそれぞれのメンバーがとても個性豊かで、思った以上に面白く魅力的なグループだった。
ちなみに「こころのやらかい場所」という言葉が指し示すものは彼女たちも教えられておらず、メンバー、ファン含めてその解釈は受け手に委ねられているという。それが何なのか、この記事を読みながら考えてみていただきたい。
――CDジャーナルという媒体名なので、初めて買ったCDを教えていただけますか?
仆破フリル 「ふぇのたすの『2013ねん、なつ』です。小学生のときからインターネットをしていて、たまたまYouTubeで出会いました。エレクトロニックな音楽になじみがなかったので衝撃を受けたのと、後ろにちょっと冴えない男性2人がいて、フロントにMICOちゃんっていうめちゃくちゃかわいいポップな女の子がいるいびつな感じがしっくりきて。ターゲットはおしゃれな音楽ファンだったと思うんですけど、小学生のわたしでもわかるし、大人になってから聴くとまた違った理解ができたりして、誰に対しても優しい音楽だと思いました」
銀海 「わたしは乃木坂46さんの〈制服のマネキン〉というシングルです。握手会に行きたくて、初めて買ったのが大量購入。20枚ぐらい買いました。女の子がだんだん垢抜けてきれいになっていく、その過程を見るのが楽しくて。で、オーディションも受けたりして、セミナーまでは行ったんですけど、書類で落ちました」
晴後すずめ 「オーディション受けてたの?初めて聞いた!」
仆破 「初出し情報です」
銀海 「突き放されたら、よけい(アイドルというものを)追いかけたくなっちゃったんです」
晴後 「わたしはお母さんに買ってもらったKARAさんのアルバムです。ジャニーズとかAKBさんとか、アイドル好きな子たちがまわりにいるなかで、わたしはあんまり興味がなかったんですけど、あるとき“何だ、このかわいい生き物は!”みたいになって。あの言語化しにくいキラキラにすごく惹かれました。K-POPのアイドルはずっと好きです」
喫茶めい(以下、喫茶) 「わたしは中学生のときにSCANDALさんのアルバムをプレゼントされたのが最初です。小さいころから楽器の練習をしていたので、女の子4人のバンドというのにすごく憧れました。でもそのころから友達がいなくて、まさか自分が女の子グループで活動するなんて予想もしてなかったから、いまこうして活動できてるのが、ちょっと近づけたのかなと思えてうれしいです」
銀海 「いい話!」
――みなさんアイドルになりたかったんですか?
仆破 「聞かれるたびに5個ぐらい答えがあるんですけど(笑)、何かになりたいみたいな気持ちはずっとあって、自分で作詞・作曲してライヴハウスに出た経験もあるんです。本格的に活動しようって流れにはならなかったんですけど。アイドルは表現欲求的なものとはべつにずっと好きで、追いかけてたTHERE THERE THERESさんのプロデューサーの田中(紘治)さんがオーディションに関わってると聞いて受けました」
――ひょんなきっかけですね。喫茶さんはもともとバンドをやりたかった?
喫茶 「バンドには憧れてて、アイドルには興味がなかったはずなんです。“だれかの『こころのやらかい場所』に”というコンセプトに惹かれてオーディションを受けたんですけど、アイドルとして活動するなかで自分が変わってきた気がしてます。自分の嫌いなところがいっぱいあって、それを変えていきたいって最初は思ってたんですけど、少しずつありのままの自分を受け入れられるようになってきました」
――すてきですね。このグループは最初からコンセプトで募集をかけたんですね。
仆破 「そうです。あとはTHERE THERE THERESの田中さんとゆるめるモ!の田家(大知)さんとヤなことそっとミュートの慎(秀範)さんが審査員だっていうことと、グループ名のロゴと、海の写真があって。それだけの情報で初期の人は集まった感じですね」
――途中から加入されたお2人は?
銀海 「わたしはステージに立って人を笑わせたいという気持ちが強くて、文化祭で漫才をやったりしてたんです。でも自分の脳みそではネタを考えるのに限界があって、表現者という意味ではアイドルも変わらないなと思って」
晴後 「わたしも“アイドルになりたかったの?”と聞かれることが多くて、“いや〜、そんなことなかったですけどね”と返してたんですけど、こないだ七夕のときに思い出したんです。小学校のときに短冊になりたい職業を書かされたんですけど、そこで“アイドル”って書いてたんですよ」
銀海 「これも初出し情報!?」
晴後 「そう。でも大人に“アイドルじゃないでしょ”って言われて“ケーキ屋さん”に書き直しさせられました(笑)。そのちょっとあとに、ファッションショーを見に行く機会があったとき、母親に“子役になりたい”って言ったんですよ。昔の気持ちを思い出してみると、人の前に立ちたいって気持ちはずっとあったんだと思います。自分でも驚きました。ずっとアイドルになりたかったんですね、きっと。けどふさいでた。けどなれた!」
銀海 「おめでとう!」
銀海(ぎんか)
晴後すずめ(はれのちすずめ)
仆破フリル(ふわふりる)
喫茶めい(きっさめい)
――もうひとつCDジャーナルにこじつけた質問ですが、アルバムではCDにだけおしゃべりトラック「一瞬しかないラジオ」が収録されていますよね。その内容を少し突っ込んでみたいと思います。喫茶さんはドラムをやっていらしたそうですね。
喫茶 「父の影響でフュージョンをよく聴いてて、学生のときは部活のなかでもちょっと浮きながらずっと練習してました。ドラムはいまも叩けるなら叩きたいなとずっと思ってます」
――あと、命名の由来を「喫茶店が好きだから」と言っていました。
喫茶 「はい。ゆっくりできるので、昔ながらの純喫茶が好きです。わたしもこれ、初出し情報なんですけど、最近、自分で考えた自分の名前に救われた経験がありました。わたしは去年から活動を休養してた期間がありまして、アイドルのことは頭にはありつつも、まずは自分の生活を立て直そうと思ってアルバイトに専念したんですね。そのとき自分の名前にちなんで喫茶店やカフェから選んだんですけど、そこで仕事をこなしてるうちに、規則的な生活やひととのコミュニケーションを頑張って、やっと真人間に近づけたんです(笑)」
銀海 「すごい!その名前じゃなかったら復帰してないかもしれないわけですもんね」
喫茶 「そこはあんまり突っ込まないでください(笑)」
晴後 「“レストランめい”だったらいまと違ってたかもしれない」
銀海 「わたしたちもうれしいです、めいさんが真人間になれて(笑)」
――あと動物がお好きだとか。
喫茶 「はい。いまは飼ってはいないんですけど、実家ではいっぱい飼ってました。ヤギとかいました」
銀海 「ヤギ!?」
喫茶 「そうです。実家が本当に田舎で、毎日起きたらまずヤギの乳を絞ってました。草食動物が好きなんです。馬とかアルパカとか」
銀海 「わたしアルパカにツバかけられたことある(笑)」
晴後 「わたしも……って、めいさんが話してるときに割り込んでこんな話、って思いますけど、大学のサークルでみんなで牧場に行ったんです。最初はグループ行動でしたけど、午後は自由行動になって、わたし組む人がいなかったので、放牧されてるヒツジをひとりでボーッと見てたんです。そしたら目の前で2頭で交尾を始めてしまって(笑)」
銀海 「この話大好き(笑)」
晴後 「呆気にとられて一部始終を見守る晴後すずめを、友達みんなが見てたんです」
銀海 「それを友達に撮影されてたんですよね(笑)」
晴後 「ヒツジもペアなのに、わたしだけがひとりぼっちで。すごく恥ずかしかった……」
――その流れで次はすずめさんにいきましょう。リーダーなんですよね。
晴後 「加入3ヵ月でリーダーになりました。最初は冗談だろうと思ってたんですけど、あるとき会議室でプロデューサーさんに“すずめさんリーダーになってもらうので”って何の脈絡もなく言われて。わたしもいまだによくわかってないんです」
――へっぽこリーダーだとか。
晴後 「へっぽこです!本当は“そんなことないよ”と言ってほしいんですけど、みんな“はい”ってすごく自然に受け入れてくれるんです(笑)。でもお金の管理をしてるのと、あと旅先で道案内を見たりとかは率先してやってます」
仆破 「この前、メンバーみんなで新幹線に乗ったんですけど、ホームに辿り着けたのがすずめちゃんだけだったんです。ほかの3人は“いま東のほうにいるんですけど”“まず階段上がってください”みたいな感じでした(笑)」
晴後 「もともとは方向音痴だし、地図も読めないんですけど、グループに入って鍛えられたかもしれないです。責任を持てる人間になりたいので、それを目標にがんばってます」
――あと英語がお得意でいらっしゃるそうですね。
晴後 「(英語で)Not really」
仆破 「銀海ちゃんの生誕祭のときにメンバーからのプレゼント企画で、原宿にいる人たちにメッセージをお願いするっていうのをやったんですね。そのひと組目の方がインターナショナルスクールの学生さんで、親御さんがバリバリ海外の方だったんですけど、了承をとるための説明をペラペラペラ〜って」
晴後 「たいしたもんじゃなくて、日常生活を送るには困らない程度です。コロナで英語を使う機会が減ってしまって、そのときひさしぶりに話しました」
銀海 「夢は日本語で見るの?」
晴後 「日本語です!よく母親に怒られてます、夢の中で(笑)」
――フリルさんは握力が7しかないとか。
仆破 「そうなんですよ。足がすごく速くて、中学生のとき陸上部にも入ってたんですけど、体力測定をするとグラフが握力のとこだけギュンと下がってて(笑)、総合でD判定でした。体も硬くて、長座体前屈で0センチを出したことがあります」
――いまは大学で音楽の勉強をされているんですよね。ほしい楽器の名前を列挙していて、エレクトーン、アコーディオン、マリンバ、ハーペジー、シタール、タン・トラン、オルガニートと、ここまではわかったんですけど、最後のがみんなのツッコミとかぶって聞き取れなかったんです。
仆破 「ヴィオリラかな。大正琴を弦で弾くみたいな」
――弦楽器が好きなんですか?
仆破 「それが全然できなくて……ずっとピアノは習ってましたけど。今年からウクレレを練習しています」
――さっき言っていた作詞・作曲をしてステージに出たときは?
仆破 「へたくそなギターとピアノでした」
――みんなでバンドできそうじゃないですか?喫茶さんはドラムができるし。
仆破 「みんな複数の楽器ができるんです。晴後さんも喫茶さんも。弦楽器もそうですし、金管楽器とか、いろんな形態でバンドが組めそう」
晴後 「本当にみんな楽器やってますね。こないだレコーディング・スタジオにちっちゃな鍵盤とギターが置いてあったので、フリルさんがキーボード、わたしがギターを弾いて、喫茶さんが机を叩いて銀海さんが歌ってセッションをしたんです。それを見たファンの方に“アルバムの隠しトラックに入れてほしい”と言われました(笑)」
――あと、フリルさんは電車の写真を撮るのが好きとか、エアコンの室外機が好きとか、ちょっとオタクっぽいところがあるようで。
仆破 「所有したいというよりは、好きなもののことを全部知りたいっていうクセのあるタイプかもしれないです。けっこう何でもそうで、たとえばカレー屋さんの評判を耳にして、行ってみてすごくおいしかったら、“もっとあるに違いない”という探究心につながって、そこから……えっと……綱渡り的じゃなくて……」
晴後 「いもづる式?」
仆破 「ありがとうございます(笑)。いもづる式にどんどん興味が派生して広がっていくんです」
――文筆でも活躍できそうな気がしますね。
仆破 「もともと志望はそうだったんです。中学生のときから漠然と音楽業界に入ろうと決めてて、高校1年生のときにいまの大学に行こうって決めたんですけど、進路説明会のとき先生に“どうやったらこの学校に入れますか?”って聞いたら、“高校3年間、とにかく好きなことだけやりなさい”と言われて」
晴後 「すばらしい教え!」
仆破 「勉強もほとんどせず、授業中はひたすら寝てて、放課後から自分の一日がスタートするぐらいの勢いで(笑)。ライヴや展示を見に行ったりして、いろんなものを吸収して、好きなことだけをやってきた結果がいまなんです」
――銀海さんはお料理が得意なんですよね。バースデイ企画の動画を拝見しましたが、とってもおいしそうでした。
晴後 「わたしとフリルさんがごちそうになったんですけど、本当においしかったです」
仆破 「フレンチ初めて食べましたけど、こんなにおいしいんだ!ってびっくりしました」
銀海 「そんなに?うれしい。2年間ぐらいフレンチ料理をやってたんです」
晴後 「こだわりを詰め込んで振る舞ってくれて、見た目も味もトレビアンでした」
仆破 「でもふだんは出前頼んじゃうんですよね」
銀海 「そうなんです。なんでこんなケータイ代高いのかと思ったら、出前をケータイで決済してるから(笑)」
――作れることと作りたいことはまた別ということですね。
銀海 「ですね。冬はけっこうがんばります。お魚さんが好きなので」
――自分でさばいたりも?
銀海 「しますね。三枚おろしもできます」
仆破 「釣りはしますか?」
銀海 「じっとしてられないので厳しいかな。むしろモリ突きのほうができそう(笑)」
――子どものころからふざけるのが好きな子だったんですか?
銀海 「好きでした。毎日何かで怒られてる子でしたから」
――みなさんのキャラクターはだいたい把握できました(笑)。では、アルバムの話をさせてください。聴いて印象的だったのが、最後に「一瞬しかない(Overture)」が入っていることでした。“序曲”という意味だし、1曲目でもおかしくないのに、なんでだろうと思いながら聴いていて、もしかしてもう一回アタマから聴きたくなる効果を狙ったのかなと。
晴後 「そう解釈してくださってるお客さんもいます。Overtureはライヴが始まるときSEで流れるんです。だからわたしも最初のイメージだし、お客さんもそう捉えてくださってる方が多いから、これが最後にきてるっていうのが不思議だ、なんでだろうって考えてくださってますね。最初の〈ここからはじまる物語〉で“はじめまして”と言っているから、そこにつながってると考えてくださる方が多い印象です。輪廻転生ですね」
銀海 「輪廻転生、なんそれ!ですね。めいさん知ってますか?」
喫茶 「四字熟語?」
晴後 「生まれ変わり的な。あ、でも“♪生まれ変わ〜る〜”(〈ここからはじまる物語〉)って歌ってる!」
銀海 「そうか!」
晴後 「裏コンセプトが暴かれたかも(笑)」
――プロデューサーさんがそこまで考えているかどうかはともかく……というか、考えていても言わなさそうですね(笑)。
晴後 「全部そうですからね。曲の意味も教えてくれない。解釈を任されてるんですよ」
仆破 「ライヴが終わったあとに集合して反省会するアイドルさんが多いですけど、そういうのも一回もやったことないんです。各自で動画を見返してチェックするだけ。最初のうちは“これでいいのかな?”と不安だったんですけど、いまは“自分で考えてやらないといけないんだ”と思えてます。プロデュースされてる感じがいい意味でないんですよ。各自が各自で考えてやれ、という」
晴後 「うん。ああしろ、こうしろとかは全然言われないです」
――ナタリーのインタビューでメンバー各自の好きな曲を挙げて話していますが、たぶんこの記事を読む方はそちらはすでに読んでいると思うので、もう一歩踏み込んで、アルバムのなかでいちばん好きなフレーズを挙げていただけますか?
銀海 「わたしはほかのメンバーが歌ってるパートで好きなのがけっこうあります。たとえば〈恋する温泉ガール〉で“ヤだ!ヤだ!”っていうところのすずめさんの歌い方が本当に……(鼻に抜いた声でものまねしながら)“♪んヤだ、ヤだ”って、わたしには絶対できない」
晴後 「こうやっていつもバカにするんですよ(笑)」
銀海 「こんなに上手にコミカル感出せるんだって思って。“♪湯ンあンが〜り、宿のあか〜りッ、リーバサーイッ”」
晴後 「そんなに最後ハネてないから!!」
銀海 「“こんな感じでお願いします”ってディレクションされたときの100点感がすごいんですよ。ぜひ聴いてみてください。ライヴのほうがわかるかな?」
晴後 「ものまねがなかったら素直に喜べるんですけど……(笑)」
銀海 「すごーく面白……じゃない、すごーく好きなパートです」
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――いじられ……じゃない、ほめられたすずめさんは?
晴後 「2ついいですか? “自分たちの曲に救われた”とおっしゃるアイドルさんが多いですけど、わたしも一瞬しかないの楽曲に支えられてて、その2トップが〈ここからはじまる物語〉と〈今日を生きよう〉なんです。まず、〈ここからはじまる物語〉の“動き出す このドラマ/新しい日々へ今/行こう 勇気ください”っていうパート。わたし、こう見えて4人なかでもダントツで不安が強くて緊張するタイプなんですけど、これを最初に歌うと自分のなかで覚悟ができるんです。初めてお客さんの前で歌ったのがのくだりだったこともあって、初心に返ると同時に自分に喝を入れられるフレーズです。〈今日を生きよう〉では、“わたしの時間も限りあると知れば/ふいに怖くなるけど/負けないように/前を向いて”というところ。何でもそうですけど、アイドルって有限じゃないですか。わたしも日々“この先どうするの?”って言われてるし、自分でも考えて不安になっちゃう。だけどやっぱりわたしはここでずっとがんばりたい、いまここで全力を出したい、って思うんですけど、その覚悟を持たせてくれるフレーズです」
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仆破 「わたしは〈わたしのプリズム〉の2番の“〈意味〉や〈価値〉やプライドとか/解けやしないパズルは/放りなげて ありのままに/いま飛び込め”が好きです。アイドルという職業だから、みんなに幸せを届けたい気持ちはもちろんあるんですけど、それ以前にまず絶対に自分だけは幸せでいようとずっと思っていて。いろんな境遇の方がいらっしゃるなかで、ひとと比べるでもなく“自分の幸せとは何か”って考えることがあるんです。そういうときに思うのは、それこそ意味とか価値とかプライドって、相対的なものだったり、誰かが決めたものだったりするし、自分の幸せの前では無価値なんじゃないかなと思って。だからそれを放り投げて、ありのままに飛び込めっていうのがグッときます。とにかく幸せになりたいです」
――最後、喫茶さんは?
喫茶 「わたし、歌詞もそうなんですけど、メロディと合わさって感情がワーッとくる感じがあって……」
銀海 「わかる!」
晴後 「歌いながら泣きそうになっちゃうことは多いです。やっぱり歌詞とメロディと楽器のサウンドがあってのものなんだなってすごく感じさせられます」
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喫茶 「その意味で、〈きっと君を好きになる〉の2番のサビ全体が好きなんです。“きっとわたしは君を好きになるんだね/その予感こそを/希望と呼ぶのだろう/風は踊るように/まるで初めからゆき先知ってたように/一緒に歩こう/すこしずつ変わっていくわたしとともに”。最初は恋愛の歌だと思ってたんですけど、それに限らず、ひとを好きになることで自分が変わっていく、自分のことも好きになっていくってことだと思ったら、人生に希望を持てるなって。このパートを歌ってるときの感覚も込みですごく好きです。ひとのことを好きになりたいなと思いました」
銀海 「えーっ(甘えた調子で)、わたしたちのことはー?」
喫茶 「大好き!大好きなんですけど……」
銀海 「急にめんどくさいひとみたいなこと言ってすみません(笑)」
喫茶 「ひとのことを好きになったら、どんどん世界が広がっていって、そこから自分の世界も始まっていくんだなって気持ちに、歌うたびになります」
晴後 「ただの恋愛ソングじゃないですよね」
――長々とありがとうございました。最後に今後の目標を教えてください。
晴後 「たやすいことではないと思うんですけど、海外進出をぜひしたいです」
仆破 「それはしたいですね、本当に」
晴後 「ライヴ前に円陣を組むとき、いつも出てくるのが“ひとりでも多くの方に届けよう”なんです。その先に国境も越えたいっていうのが、わたしの目標ですね。あと、届けた人のことももっと知りたいし、ただ届いたってだけじゃなくて、浸透じゃないけど……」
仆破 「好きになってほしいですよね」
晴後 「そうそう。みなさんの“こころのやらかい場所”に住まわせてほしい。遠くに届けたいのはもちろん、いま目の前にいる方たちにもしっかりと深く届けたいです」
仆破 「わたしはここ数年、有名になりたいって思うことが増えました。前はあんまりなかったんですけど。有名になったら厳しい批評に晒されたりもするかもしれないけど、わたしたちの楽曲を必要としてる方は、自分の手だけで届けるのは難しいところにもいらっしゃるんじゃないかと思ったことがあるんです。そこに届けるには公共の電波の力を借りたいし、そのためには有名になるのがいちばんいいんじゃないかなって」
――なるほど、ライヴ会場だけじゃなくていろんなメディアに乗りたいと。
喫茶 「メンバー一人ひとりの個性をいろんな人に知ってもらいたいなって思ってます。わたしは3人の話してることとか性格を観察するのが好きなんですけど(笑)、一人ひとりのよさを知ってもらいたいって気持ちが、後ろから見ててすごく強いです」
――わたし自身のことは?
喫茶 「あ、わたし……(小声で)そうですね」
晴後 「わたしは知ってほしいです、喫茶めいさんのこと、もっともっと」
喫茶 「ありがとうございます。あともうひとつは、、わたしたち“MCが面白いアイドル”としても評価が高いので、わたしも自分の言葉で積極的に話せるようになりたいです」
銀海 「めいさんの言葉に救われたって人めちゃめちゃいるんですよ。わたしはそういうのが逆にできないから。言葉選びがすごく上手なんです」
仆破 「本当にそうですね。含蓄があるっていうか、同じことを言ってもめいちゃんだからこそ響くってことがあると思います」
喫茶 「ありがとうございます」
――最後は銀海さんに締めていただきましょう。
銀海 「わたし、あれに出たいです。ドキュメンタル……じゃなくて(笑)、ドキュメンタリー。最近、練習するようになりました。タクシーの車内でインタビューされてる感じ」
晴後 「このアングル(斜めあおり角)ね」
銀海 「いままでのつらかった経験を話して“かわいそうだったね”って思われたい(笑)」
晴後 「えーっ!目標そこ!?」
銀海 「“つらいのに笑顔でがんばってくれてたんだね”って思ってもらって、好感度を上げたいです」
晴後 「いまの発言で好感度ダダ下がりです(笑)。でも積み重ねてきたものを知ってもらうのはいいよね。たくさんの方に一瞬しかないのいろんな面を知っていただくためには、ドキュメンタリーですね」
銀海 「そのためにも練習しておきます(笑)!」
取材・文/高岡洋詞 撮影/西田周平