カシオペアのメンバーとして神保彰がアルバム・デビューしたのは1980年、つまり、2020年はちょうど40周年という節目に当たる。その間、彼は自身の設定するハードルを少しずつ上げ、パワー・アップしながら2019年2月に還暦を迎えた。記念ライヴはチケット発売からわずか10分で完売となり、日本だけでなく世界にファンを持つトップ・ドラマーの健在を見せつけたが、驕った態度は微塵もない。「ゲスト・ミュージシャンが豪華でしたからね。お陰でこれまでを総括する印象深いイベントになりました」とソフトな口調で振り返る。フレンドリーな雰囲気の大御所は、いまさらながらの質問、ドラムとの出逢いについても懐かしそうに話してくれた。
「小学校低学年の時にグループ・サウンズの音楽を聴きドラムに興味を持ちました。そんな僕を見て父が中学の入学祝いでドラム・セットをプレゼントしてくれたんですよ。でも、すぐに飽きて押し入れに放置(笑)。ところが、高校の終わり頃にCTIレーベルのアルバムから聴こえてきたスティーヴ(・ガッド)さんのプレイにすっかり魅了されて、こんなふうに叩きたいと再チャレンジしたんです。今も彼は僕のヒーローですよ」
さて、神保は2020年も元旦にアルバムを2枚同時にリリースする。2019年の元旦に発表した2枚と同様、1枚はニューヨーク(26作目)、もう1枚はロサンゼルス(27作目)で録音した。1月から6月末までに書いた80曲の中から厳選し、7月から8月にかけてアレンジおよび譜面作り。レコーディングの2ヵ月前には共演者に楽譜を送るといった一連の流れはみずから課している決まりごとだ。
NY盤はふたつのデュオが楽しめる。ひとつは2019年盤で実現したウィル・リー(b)との再演、もうひとつはギタリスト、オズ・ノイとのプレイ。
「オズさんのキレは本当にすごかった。持ち味でもあるアウトの仕方はとてつもなくカッコいいですし。ウィルさんとは2019年の秋にオトマロ・ルイーズ(key)とのトリオでツアーした直後ということもあり、さらに打ち解けたなかでレコーディングできました。とはいえ、10代から憧れているレジェンドとの共演は何度ご一緒しても特別な気持ちになります」
色の名前が付いている自作曲を収録したLA盤はラッセル・フェランテとパトリース・ラッシェンというふたりの人気キーボーディストをフィーチャー。ベーシストは盟友のエイブラハム・ラボリエルで、ベテラン・サックス奏者、ボブ・ミンツァーも2曲で華を添えている。
「NY盤が月だとすればLA盤は太陽のイメージ。透明感がありながら奥行きのあるサウンドを残せました。対照的なふたつのアルバムだからこそ、両方、聴いていただきたいです」
2020年も年明け早々、恒例のワンマンオーケストラ・ツアーで幕を開け、以降、80ヵ所以上でライヴを開催する予定だ。
「太鼓の歴史は長いですが、ドラム・セット自体は100年ぐらい。ですから、まだまだいろいろな可能性を秘めていると思っています。最低でも80歳までは現役で追及していきたいですね」
取材・文/菅野 聖