なんてキュートな人だろう。
シガー・ロスのフロントマンであり、2009年にはボーイフレンドのアレックス・ソマーズとのユニット、
ヨンシー・バーギッソン&アレックス・ソマーズでインストゥルメンタル作品
『ライスボーイ・スリープス』をリリースするなど、多忙な日々を送る
ヨンシー・バーギッソンと出会ったら、誰もがそう思うに違いない。見るものすべてが輝いて見えていた子どもの頃のように、瞳を輝かせながらこちらの質問に答えてくれる様子はまさに、彼のソロ・デビュー作『GO』から飛び出してきた主人公そのままだった。まるで印象派の絵画のような眩い光と色彩に満ちた世界。そんな本作のサウンドスケープを彼は、一体どんな気持ちで作り上げたのだろうか。
――ソロ・アルバム『GO』は、最初はもっとアコースティックな作品になる予定だったそうですね。
ヨンシー(以下、同)「そう。このアルバムのためにまず30曲用意して、そこから10曲に絞った。最初の段階ではアコースティック・ギターやピアノ、ハルモニウム、ウクレレなどで作ったシンプルな曲だったから、余計な装飾を削ぎ落としたシンプルでミニマムなアルバムにするつもりだったんだ。でも、アメリカの作曲家/アレンジャーのニコ・ミューリーや、今は
ムームのメンバーでもあるフィンランド人のドラマー、サムリ・コスミネンなどいろいろなミュージシャンとコラボレーションしていく中で、それがどんどん発展していったんだよ」
――たとえば?
「まずニコには、シガー・ロスとは違ったアレンジ、もっとカラフルで陽気でエキサイティングなものにしてほしいと思うようになった。それに、サムリが参加してくれたことによって、リズミックで力強く、時にパーカッシヴなサウンドになった。さらに、コネティカット州のタークィン・スタジオに行って、ピーター・ケイティス(
ザ・ナショナル、
インターポールほか)とレコーディングしたことも大きかったよ。彼と一緒にさまざまな楽器をレイヤーしていくことで、最初のイメージとはだいぶ違う作品に仕上がったんだ」
――コラボレーションの相手として、ニコとサムリを選んだわけは?
「ニコとは今まで仕事をしたことはなかったのだけど、共通の友人が多かったし、アイスランドでもかなり多くの仕事をしていたからよく知っていたんだ。『GO』のストリングス・アレンジは、シガー・ロスでやっているような情緒あふれるものとは違うものにしたかったから、ニコのカラフルな作風がピッタリだったよ。
サムリのことも以前からよく知っていたし、彼のプレイは何度も観ていた。いつか一緒にやりたいと思っていたので今回声をかけてみたんだ。彼はスタジオにオモチャとかガラクタを山ほど持ち込んできてね(笑)。その場でインプロヴァイズしながらリズムを付けてくれたんだ。本当に素晴らしい演奏だった」
――曲作りの方法は、シガー・ロスの時とはどのように違いましたか?
「シガー・ロスの場合は、誰か一人が曲を持ち込むということはなくて、つねに四人で集まって曲作りを行なう。だけどソロの場合、最初の段階では完全に僕一人の作業になるよね。リビング・ルームとか、そういうところでアコースティック・ギターを弾きながらメロディを紡ぎだすんだ」
――曲のモチーフは、どういうところから生まれてくるのでしょうか?
「最初は何も考えず、とにかくピアノの前に座ったりギターを持ったりするところから始める。弾くと同時に歌い始めていて、ピアノやギターで弾いているメロディと歌っているメロディが、自然と絡み合いながらハーモニーが生まれていく。こういうやり方だとどんどん新しいメロディが浮かんできて、わりとすぐに曲が完成するんだよ」
――今回、英語の歌詞が多いのには何か理由がありますか?
「これまでちゃんとした英語の歌詞を書いたことがなかったので、トライするいい機会だと思った。もっとも心配だったのはアクセントだね。アイスランド訛りになってしまうのではないかと思ったのだけど、やってみたら気にするほどのことじゃなかったよ。あと、アイスランド語と比べるとどうしてもボキャブラリーが少ないので、その辺が少しだけ苦労したかな」
――歌詞の内容はポジティヴで力強いものが多いですね。
「ポジティヴな部分とそうでない部分、“希望”と“怖れ”の両方があると思う。とくに意識してそうしたわけではなくて、完成してからあらためて歌詞を読み返して、そのことに気付いたんだ。たぶん、自分自身がその時に感じていたことがストレートに出たんじゃないかな。ソロになって、すべて自分で決められる自由や開放感を感じていたけど、それと同時に、いきなり一人きりになってしまった不安や戸惑いも感じていたからね」
――たとえばポジティヴな歌詞でも、“世界が素晴らしいからポジティヴ”なのではなく、“世界が混乱しているからこそポジティヴであるべき”というメッセージが込められているように思いました。
「うん、まったくその通り(笑)。人生は短いんだし、やりたいことをやって、楽しんで、そして死ぬしかない(笑)。実際、そういうふうに生きていくべきだと思う。ただ、僕の歌詞の中に、いわゆる政治的な意味だとか社会的なメッセージを込めたつもりはないよ。もちろん、聴いた人が自由に解釈してくれて構わない。いろんな解釈ができるよう、シンプルな歌詞にしたつもりだからね」
取材・文/黒田隆憲(2010年8月)
<ヨンシー JAPAN TOUR 2010>
●日程:12月1日(水)
●会場:大阪・なんばハッチ
●時間:開場 18:00 / 開演 19:00
●料金:7,000円(1Fスタンディング・2F指定 / 税込 / 別途1ドリンク)
※一般プレイガイド発売:調整中
※問い合わせ:キョードーチケットセンター [Tel]06-7732-8888
●日程:12月2日(木)
●会場:愛知・名古屋CLUB DIAMOND HALL
●時間:開場 18:00 / 開演 19:00
●料金:7,000円(1Fスタンディング・2F指定 / 税込 / 別途1ドリンク)
※一般プレイガイド発売日:8月28日(土)…SMCプラザ / チケットぴあ / e+
※問い合わせ:SMCプラザ [Tel]052-265-2666
●日程:12月4日(土)
●会場:東京・新木場スタジオコースト
●時間:開場 17:00 / 開演 18:00
●料金:7,000円(オール・スタンディング / 税込み / 別途1ドリンク)
※一般プレイガイド発売日:8月28日(土)…チケットぴあ / ローソン / CN / e+
※問い合わせ:クリエイティブマン [Tel]03-3462-6969