――「PRESENT」、素晴らしいですね。「明日がくるなら」に続き、ヒットの予感がビシビシ伝わってくるバラードですが。
JUJU(以下、同) 「ヒットするかどうかはわかりませんが(笑)。今回はね、私以外の人に曲を書いてもらいたかったんですよ。ここ最近は、詞・曲に携わっていた曲が続いてたんですけど、シンガー・ソングライターって言われるのには抵抗があって。ここで書いちゃうと、ホントにそうなっちゃうような気がしたんですよね」
――シンガー・ソングライターは嫌ですか?
「歌うのが好きなんですよ、やっぱり。契約を切られそうになったときに会社から“おまえは何をやりたいんだ?”って聞かれたことがあったんですけど、“歌を歌いたい”って答えたんですよね。歌詞や曲を書くのが本当に難しい作業だということは分かっていますからね(笑)」
――根本はシンガーである、と。
「そうですね。今回はまず、ディズニーさんから映画(『DISNEY'S クリスマス・キャロル』)のイメージ・ソングの話をいただいたんです。『クリスマス・キャロル』って、すごく大きい世界観を持った作品でしょ? そういう壮大なテーマで歌詞を書くのはおこがましいし、プロジェクト・チームを作って、トライしようと相談しました。で、私は歌うことに徹するっていう。そういう意味では、ちょうどいいタイミングだったかも」
――そうですね。歌い手として、この曲の印象はどうでした?
「仮歌の方が女の子っぽい歌い方だったから、最初は“これは無理!”って思ったんだけど(笑)、自分で歌ってみたらシックリきましたね。とにかく、歌ってると気持ちいいんですよ。先日、初めてライヴで歌ったんですけど、高い音が多かったり息継ぎするところが少なかったりするのに、歌っているとどんどん気持ちよくなってきて。ゴスペルっぽいところがあるというか、気分が上がってきて、ほんとに未来が変えられるような気になってくるというか……」
――歌詞もきっちり、『クリスマス・キャロル』の世界観と重なってるし。
「そうなんですよね。“上手いこと言うな”って歌詞が多し、やっぱり作家さんってすごいなって」
――(笑)。『クリスマス・キャロル』にはどんなイメージを持ってますか?
「子供のころは“ガンコじじいの話だな”って(笑)。大人になってからですね、その奥にものすごく深いメッセージがあることに気づいたのは。なんていうか、大人になると、自分にリミッターをかけちゃうことが多いと思うんですよ。“この年齢では無理だな”とか。でも、それは自分が思ってるだけで、いつからでも始められるんですよね」
――それはJUJUさんの実感でもある?
「そうですね。どんどん年は取りますが(笑)、たとえば6年くらい前に比べて、2オクターブくらい(音域が)広がってたり。やっぱり自分の心次第なんだなって思いますね。この曲も、人生に前向きに向き合うための応援歌になってくれたらいいなって」
――カップリングの「Everything Was You」はアコースティック・ジャズ系のバラード。いちリスナーとしては、「やっぱりJUJUは、コレでしょう!」って思いますけどね。
「お、そうですか。確かにジャズを歌ってるときって、どこにも力が入ってないというか、いちばんラクに歌えるんですけどね。〈PRESENT〉みたいな曲は、気合いを入れて歌う感じなので。ポップスになればなるほど、気を遣いますよね」
――だからといって、“ジャズに絞って”とは思わない?
「そんなことしたらブクブク太っちゃいますよ、ブラーンとしちゃって(笑)。もともとはジャズですけど、いろんな曲を歌いたいんですよね。ほら、カラオケ好きだから」
――(笑)。
「カントリーだけはちょっと無理かなって思うけど、それ以外の曲で自分が“いいな”って思えば、どんどん歌っていきたい。それにジャズをちゃんと歌えるのって、50歳過ぎてからだと思うんですよね。私の叔母がそうだったんですけど、人生の酸いも甘いも噛み分けて、水割りをカラカラやりながら、しゃがれ声で歌ってる姿にゾクゾクきてたので。私なんて、まだまだ甘ちゃんです」
――でも、今回のシングルで“歌”に焦点を絞れたのはいいことですよね。
「はい、久しぶりに歌手になれました。私は“歌うたい”がいいです」
取材・文/森 朋之(2009年11月)