“すべての想いはあなたのために”──聴き手の心に寄り添うJUJUの4thアルバム『YOU』

JUJU   2011/07/01掲載
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 初のカヴァー・アルバム『Request』が60万枚以上のセールスを記録するなど、いまや完全に日本のトップシンガーとなったJUJUから、4thアルバム『YOU』が届けられた。「この夜を止めてよ」「さよならの代わりに」といったヒット・シングルを含む本作のテーマは“すべての想いはあなたのために”。自己顕示欲を抑え、“聴き手(あなた)の心に寄り添い、つい口ずさんでしまうような歌を届けたい”という想いに溢れた、極上のヴォーカル・アルバムだと思う。




――質の高い楽曲が揃った、素晴らしいアルバムだと思います。アルバム全体の統一感も、いままで以上に感じられて。
 「今回はひとつの物語みたいなアルバムになりましたね。主人公はひとりなんですよ。ある女性がそれぞれの曲のなかで、いろんな人のことを考えてるっていう。あと、”自分の歌を聴いてる方がいてくれるんだな”っていう確信が初めてちゃんと持てたんですよね、制作の前に。だから”私が、私が”っていうのではなく、”私とあなた”っていうアルバムになったんじゃないかなって」
――いままでは“リスナーがいてくれる”っていう確信が持てなかったんですか?
 「ニューヨークの生活が長かったせいか、誰も信用できないってところがありまして(笑)。お店の人に荷物を預けると、お財布を抜かれたりすることもありますからね。もちろん、いままでも”聴いてくださる方がいる”っていうのはわかりつつも、”でも、人の心は移ろいやすいしな”っていうのが心のどこかにあったんですよね。恐怖心が拭えなかったというか……。でも、『Request』というカヴァー・アルバムを出したときに、少し変わってきたんです。“どうしてこの曲を私にリクエストしたんだろう?”っていうことも考えたし、“JUJUの声で何かを聴きたいって思ってる人がいるんだな”ということも実感できて」
――アルバム・タイトルの『YOU』にも“リスナーに向けて”という思いが含まれてる?
 「そうですね。1曲1曲が“あなたと私の”っていうアルバムにしたかったし、もっと言うと一緒に歌いたかったんですよね。以前から“歌ってるのは私だけど、聴いてくれる人にも、まるで自分が歌ってるような気持ちになってほしい”と思っていて。そこから一歩進んで、どうしても口ずさんでしまうような歌にしたいなって。あるじゃないですか、大して好きじゃなかったはずなのに、つい歌ってしまうことって」
――ありますね、確かに。
 「それってメロディの強さだったりすると思うんですけど、いつの間にか頭に残ってるからこそ、ふとしたときに口から出てくるんですよね。このアルバムの曲も、そういうふうになってくれたらなって。あと、“実際に歌ってみることで、曲の内容が変わる”っていう体験を初めてしたんですよ、今回」
――“歌ってみると、イメージが変わった”ということですか?
 「そうそう。歌ってみると自分自身の体験とか思い出とより強く重なるというか……たとえば清作君が書いてくれた曲(MONGOL800の上江洌清作の作詞・作曲による<ANTIQUE>)もそうだったんですよね。ミーティングのときは“家族の曲にしよう”という話をしてたんだけど、上がってきた詞を読んでみると、”これって、恋愛の歌にも置き換えられるな”って思ったんです。でも、歌ってみるともう、自分の親のことしか考えられなくなって。“近過ぎて 遠過ぎる / 好きと嫌いが交差する”っていうのは、まさに思春期のときの親と自分の関係性だと思ったし、間奏の後の“月日語る 風になびく髪/かきあげる手 互いに年を重ねる”からは、現在の自分と親のことだなって」
――それくらいJUJUさん自身の思いが強いと、リスナーがそれぞれの思いを重ねられるように歌うのは難しくないですか?
 「……いまは難しくないですね。昔のほうが難しかった気がします、自分っぽさにこだわってた時期は。カッコつける気がなくなると、力を入れずに歌えるんだってことにも気づいたり。デビューから<奇跡を望むなら……>(06年)に至る2年間は、余分なものを削ぎ落とす期間だったと思うんですよね。そこから現在までにも、周りの人たちや聴いてくださる方に教えられることもたくさんあったし。もうね、カッコつけ方を忘れました(笑)。ライヴもそうですけど、カッコつけることで損することのほうが多いなってこともわかったし」
――なるほど。タイトル曲の「YOU」もいい曲ですね〜。
 「私もそう思います! この曲、初見のときにいきなり泣いちゃったんですよ。歌詞を見ながら、オケに合わせて歌ってみようか、っていう段階だったんですけど、“たとえば いつか 2人の未来が”のあたりで“ウウッ”って」
――どうしてそんなにグッと来たんでしょうね?
 「“手を伸ばせば 触れ合う ただ それだけで”っていう幸せなことを思いながら、“たとえば いつか 2人の未来が / 哀しみに溢れてしまっても”って考えてしまう、その気持ちがわかりすぎて痛い(笑)。私自身、すっごい楽しいときにすっごく悲しいことばかり思い浮かべる人なので。恋愛にしても、いちばん幸せなときに“これも長くは続かないんだろうな”って思ってしまうんですよね」
――歌い手としては素晴らしい資質ですよね。楽しい気分の裏にある、根源的な悲しみを感じ取れるという。
 「お、そうですか? でも“あの人、どうして楽しい曲を歌わないんだろう?”って言われてるみたいですよ(笑)。まあ、私自身も憂いのある曲が好きですからね……。だって、幼稚園のとき、いちばん初めに心惹かれたのが<シルエットロマンス>(大橋純子)ですから(笑)。そのころからずっと、切ない成分を求めてるんだと思います」
――幼少のころから趣味が変わってないっていう(笑)。8月から始まるツアーも楽しみです。
 「ぜひ、お客さんといっしょに歌えるライヴにしたいです。歌ってくれてる人を見ると、心がホッとするんですよね」
取材・文/森 朋之(2011年6月)
〈JUJU 全国TOUR 2011〉
● 8月26日 千葉県 松戸 森のホール21
● 8月29日 秋田県 秋田県民会館
● 9月 1日 新潟県 新潟県民会館
● 9月 2日 石川県 金沢 本多の森ホール
● 9月 9日 長崎県 長崎ブリックホール
● 9月10日 福岡県 福岡サンパレス
● 9月16日 北海道 札幌 ニトリ文化ホール
● 9月18日 宮城県 仙台サンプラザホール
● 9月19日 岩手県 岩手県民会館 大ホール
● 9月22日 埼玉県 サンシティ越谷市民ホール
● 9月24日 静岡県 富士市文化会館ロゼシアター
● 9月25日 愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
● 9月29日 大阪府 グランキューブ大阪メインホール
● 9月30日 大阪府 グランキューブ大阪メインホール
●10月 2日 群馬県 ベイシア文化ホール(群馬県民会館)大ホール
●10月 4日 栃木県 宇都宮市文化会館 大ホール
●10月14日 愛媛県 松山市民会館・大ホール
●10月16日 香川県 アルファあなぶきホール・大ホール(香川県県民ホール)
●10月18日 山口県 周南市文化会館
●10月20日 鳥取県 米子コンベンションセンター・BiG SHiP
●10月21日 岡山県 岡山市民会館
●10月23日 神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
●10月24日 兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
●10月30日 東京都 東京国際フォーラムホールA

【JUJU オフィシャル・サイト】 http://www.jujunyc.net/
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