加護亜依が6月に発表したシングル
「no hesitAtIon」でソロ活動を開始! 作詞は本人が初めて手掛け、作曲は
中西圭三が担当。躍動感のあるロック・サウンドに、ポジティヴな言葉がちりばめられ、新たなスタートを切る彼女にとって、希望に満ちた一枚となった。本作について、彼女に話を訊いた。また、彼女の音楽的なルーツともいえる、お気に入りの音楽も訊いてみた。
――ソロ・デビューのきっかけはどんなシチュエーションだったんですか?
加護亜依(以下、同) 「中西圭三さんのライヴを観に行って初めてお会いしたんですけど、そこから“曲を出してみるのはどうですか”って流れになって」
――中西圭三さんはどんな人でした?
「心が綺麗で、音楽に対して信念があるというか。音を愛している人だなっていうのを実感しましたね」
――彼の曲はそれまで聴いたことありました?
「〈ウーマン〉という曲は聴いてました。ご自身の曲だけでなく、いろんな曲を作ってますよね。〈おかあさんといっしょ〉のエンディング・テーマ(〈ぱわわぷ体操〉)もそうなんですよ。弟と妹がいるので自分も聴いてたんですよ。すごい前向きな曲で。最初は知らなったんですけど、中西さんのコンサートに行ったときにアンコールで歌われていて感動しましたね。ジャンルが幅広い。でも、その中にピュアな感じがすごくある。もちろん〈タイミング〉とか〈Choo Choo TRAIN〉も好きなんですけど」
――制作はどんな感じで始まりましたか?
「打ち合わせをして、曲をもらって、それに合わせた詞を書いていくという感じで、打ち合わせは何回もありました。カラオケにも行きましたね。中西さんが歌ってる声を聴いておきたかったっていうことで」
――今回が初めての作詞ということになりますが、すんなり出来ましたか?
「今回いただいた2曲は、日本語が乗せづらかったんですよ。とくにカップリングの〈Children of the night〉は日本語がうまくはまらなくて、英詞になったんです。〈no hesitAtIon〉は、最初にチョコレートの話を書いていたり、加護亜衣ワールドな内容の詞を書いてたんですけど、“面白いけど伝わらない”ってなっちゃって(笑)。そうこうしているなかで、“初めはストレートに、前向きな詞がいいな”ってことになって。自分が今まで感じていたことを忘れないために書きとめておこうというものです。この曲を聴くと、すごいポジティヴなのに泣けてくるんですよね」
――そうですね。過去に見切りを付けて、先に進もうとする強い意気込みが伝わってきます。言葉の並べ方とかで工夫された点はありますか?
「サビの部分では、いろんなネタを考えました。音がすごいキャッチーだったので、それに合わせて書かなきゃと思って。サビ書くのに2ヵ月くらいかかっちゃいました。“遠回りした景色 愛しくて”というところは自分ぽいかな」
――音楽は“生き様”ってよく言いますけど、この曲にもご自身の経験を反映させてますよね。
「私、尾崎豊さんの詞が好きで。〈シェリー〉とか。シンプルなんだけど、すごい深くて。あえて答えを出さないというのもいいのかなって」
――表面上の言葉の奥に、何らかの背景や哲学がありますよね。
「ありますよね! さらっと言ってるんだけど、深くて。詞を書くのって難しいですね。今までずっと作詞をしたことがなくて。やってみたいと思ってたんですけど、難しくて出来ないと思ってたときもあって。でも、いろいろと書きとめていた歌詞ノートがあるんですよ。それ見ると面白いですよ(笑)。〈no hesitAtIon〉は、活動休止しているときに書きました」
――活動休止していた頃はどんな状況でしたか?
「辛いと思ったり、辛いと思ってなかったり……。生きてるのか生きてなかったのかわからない状態でしたね。芸能活動もやるとは思わなかったし」
――テーマの“no hesitation”って言葉は気に入ってた言葉ですか?
「タイトルは、いろいろ考えたんですよ! 何がいいかなって。自分がいつも何かにためらってしまうんですよ。心配性だから。それも全部なくして、もう先に行こうよということで。英語を勉強しているときに、この“hesitation”という言葉を見たことがあったんです。あまり聞かない言葉なので新鮮でいいかなと思って。まず初めに拒否ってるから(笑)、“no!”って。“A”と“I”を大文字にしているのは、“亜衣”と“愛”を込めてという意味ですね」
――サウンドを最初に聴いたとき、どう思いました?
「最初聴いたときは、“まさしくこの音だ”という感じでしたね。私が洋楽のロックとか、バラードとかを聴いているので、“こういう曲がいい”というリストを中西さんに持っていって、それで路線が決定して。で、レコーディングのときにベースの人だけのレコーディングがあったんですけど、すっごいかっこいいと思いました」
――レコーディング中のエピソードとかありましたか?
「レコーディングでは泣きましたね。ホントにいい歌だなと思って(笑)。普通に客観的に聴いてしまって。〈no hesitAtIon〉もそうですけど、〈Children of the night〉でも感動しちゃいました。音にやられましたね。初めに聴いたときに、ピーターパンの世界をイメージしちゃったんですよ。夜に私が空の上から街を見てて、家に窓があって、ライトが点いてて、ポチ、ポチって消えていく……、そこにティンカーベルが現れる絵が見えたんです。この曲は、小さい子供に向けた詞ですね。ずっと思ってたんですけど、嫌なニュースとかもありますけど、恋愛って大事だよって」
――中西さんからは、どういうふうに歌ってほしいと言われました?
「ポップな曲なので、あまりキャピキャピ歌わないようにって。歌うとアニメ声になっちゃうんで、そこは気を付けました」
――英詞を覚えるのは難しかったですか?
「自分で書くから意外と覚えますね。いま
(春風亭)小朝さんと公演をやってるんですけど、そのときのジャズの曲はなかなか覚えられなかったんですけど、今回は大丈夫でした。でも、たまに〈no hesitAtIon〉のサビを間違えちゃう(笑)。クセになってる……」
――サビは間違っちゃいけないですよね(笑)。
「いろんな歌詞を書きすぎちゃって、頭にインプットしちゃってるから、いつでも違う歌詞でも歌えるんですよ。だから混ざっちゃう。もしその違う歌詞をライヴで聴けたら貴重だと思います(笑)」
――詞を見てると、小さい子供が好きなんですね。
「たぶんね、一生子供でいたいんだと、いま思います。ファンタジーな世界が好き。ずっとそういう気持ちでいたいですね」
――今回、初めての作詞でしたが、詞を書くことってやってみてどうでした?
「複雑でしたね。大事なものが人に知られちゃうみたいな。原点が歌だったので、歌ってる加護亜衣を早く見てもらいたいなって気持ちもありました。今回のようなストレートに気持ちをぶつけるというのは難しかったですけどね」
――最後に、ソロ・アーティストとしての初めてのリリースでしたが、加護さんの理想のかたちってありますか?
「アーティストって、自分たちの世界を作れますよね。女優は自分ではない誰かになるものだけど、アーティストは自分でいていい。だから音楽をやることは、自分が安心していられる場所ですね。昔、夢だったのが映画の曲を作ることでした。やってみたいなって」
取材・文/清水 隆(2009年6月)
【Column】加護亜依のフェイバリット・ミュージック
――シングルの話の中で洋楽を聴くと言ってましたけど、どんなものを聴いてますか?
(写真は、イモージェン・ヒープ
『ひとりごと speak for yourself』)
「初めて知って、曲を聴いたのは17歳の頃です。〈ビリー・ジーン〉は、PV集をDVDで買って観てましたね。あと、〈ウイ・アー・ザ・ワールド〉も聴いてます。あれ、有名な人ばっかりですよね。友達と“私、
シンディ・ローパーやる!”とか言ってカラオケしてました」