現在のヒップホップ・シーン、それを超えてユース・カルチャー・シーンで大きな注目と影響を与えているヒップホップ・クルー、
KANDYTOWN。そのメンバーである
YOUNG JUJUが、初のソロ・アルバム
『juzzy 92'』をリリースする。アルバムは、集団アプローチであるKANDYTOWNでは見えにくかった、YOUNG JUJUの“マインド”が色濃く表現され、JUJUの本質を感じることの出来る作品となっている。そして
IOやRyohu、NEETZなどKANDYTOWN勢に加え、
B.D.や
jjj、
FEBB、
MASS-HOLEなどアンダーグラウンド勢が集結しながら、どこかポップな色合いがあるのは、JUJUの軽やかなスタンスにもよるだろう。新世代の充実を感じさせる一枚だ。
――まずJUJUくんの音楽的な原点から伺えればと思います。
「両親が音楽好きだったっていうのがあると思います。あとは小学校の時とかから普通に歌ったりするのは好きだったんだと思います。いつからとかあんまり記憶は定かじゃないですけど小学生くらいの時から兄貴や親の真似してウォークマンとかMDプレイヤーとか使ってましたね。ヒップホップは、4つ上の兄貴が
50セントとかディプセットとかその辺を聴き出して、その流れで
『8 mile』を映画館に観に行った……んですけど、それは女の子とデートがしたくて、それでたまたまその時にやってたのが『8 mile』だったと思うんですよね。その子がヒップホップを好きだったっていうのもあって、誘うならこれかなって(笑)。小学生の時から
エミネムのことは知ってたと思う。それで中学に入ってから、
Kダブシャインさんとか、
Zeebraさんとかを聴き出したんですけど、それも映画の影響でしたね。
『凶気の桜』とか。USだと
2pacが出てた『JUICE』とか」
――映画が入り口として大きかったんですね。
「映画がいちばん好きでしたね。とにかく“映画やりたい”ってずっと思ってて。俳優になりたいとかじゃなく“撮りたい”って方で」
――どんな映画が好きだったんですか?
「社会的な映画が好きでしたね。最初に衝撃を受けたのが中1の時に観た
『ミシシッピー・バーニング』。その前からゴスペルだったり黒人文化にすげえ興味があったんですけど、映画を通して、ブラック・カルチャーや社会問題みたいな部分は知っていきましたね」
――なるほど。JUJUくんが所属するKANDYTOWNのメンツは和光学園の出身者が多いですが、JUJUくんも和光の出身ですね。
「幼稚園から和光ですね。幼稚園や小学校の頃から
菊丸やYUSHI、IOくんとは繋がっていて。彼らは2つ年上なんですけど。そこからRyohuやB.S.Cとも繋がっていって。だからKANDYはホントに昔からの仲で」
――ラップはいつぐらいから始めたんですか?
「ちゃんとレコーディングとかしだしたのは高校2年の時ですかね。IOくんとかYUSHIは喜多見が地元の連中でBANKROLLってグループを結成してて、それがとにかく格好良かったし、自分にとっての一番のラップ・グループだったんですよ。他のラップを聴いても“響かねえな”って思わされるぐらい。それぐらいのグループだったから、ヒップホップには興味があったけど、一緒にやれるもんでもないなって。でも何かのきっかけでYUSHI達が“お前もやれよ”って言ってくれて、それでちょっと本気になったというか。そうやって認めてくれたのが大きかった。俺は経堂の出身なんですけど、学校は違うけど地元の友達もいて、それがMIKIとかDIAN、GOTTZだったりで、その連中でYaBastaを結成して。YaBastaの連中は和光組じゃなかったんで、全然“色”が違ったんですよね。私立のやつは当時からクリエイティヴで、洋服を気にしたりとかしてたけど、地元の連中はもっとヤンチャっていうか(笑)」
――その当時と今のラップって違いますか?
「ぜんっぜん違います。録ってたラップは恥ずかしくて聴けたもんじゃない(笑)。リリックの内容だけじゃなくて、フロウもそうだし、何か見えないルールみたいな物に縛られて誰かの模倣になってましたね。だから何も響かないし、何も伝わらない、何も感じない内容だったと思いますね」
――でも、その当時からRECはしてたんですね。
「最初にしっかりした環境で録ったのはYUSHIの家かな……あっ、QN(現:
菊地一谷)くん家か。元
SIMI LABの。当時、
ズットズレテルズの活動が終わったぐらいで、YUSHIはSIMI LABとつるんでて――とはいえ、YUSHIは“俺はBANKROLLだからSIMI LABには入ってない”って言ってた――“曲が録れるから”ってほぼ毎日、成城から相模のQNくん家まで通ってて。それで、俺もYUSHIと一緒にQNくんの家に行って。SIMILABも出始めの頃だったと思うし、SIMILABの人達が覚えてるかわからないけど、俺は高校の制服で学校休んでちょこんと座ってましたね(笑)」
――SIMI LABが1stを出す前ですね。
「多分前だったと思う。そこではQNくんとYUSHIに教えてもらってはないけど多分無意識のうちにスキルだったりそのマインドだったり刺激をうけたり盗んでたんだと思いますね。2人共、トラックを作り始めたら誰にも真似できないスピードとクオリティで作り上げるし、“音楽以外いらない”みたいなその姿勢には影響を受けましたね。まぁ、とにかくあの2人が好きで付いて回ってましたね」
――そしてBANKROLLとYaBastaが合流してKANDYTOWNになっていくと。
「俺が両方と繋がってたんで、だんだん仲良くなっていって、BANKROLLのライヴにYaBastaが呼ばれるようになったり、一緒に曲づくりもするようになっていって。それで2014年の11月に『KOLD TAPE』をリリースするタイミングで、クルーとしてKANDYTOWNって名前をつけたんですよね。それで、ちょっと反応あったから“じゃあ、引き続きやってみますか”みたいな感じだったかな」
――そこからクルーとしての作品や、メンバーもソロとしても数々リリースを展開しているし、KANDYTOWNもデビューから2年でメジャーに進出して。その意味では注目は感じていますか?
「当時もなかったし、今も全然ないですね。本当に音楽が好きな人が、ディグって俺らの音楽を評価してくれてると思うし、そう言ってくれる人はリアルだと思うけど、注目度というとちょっと違うかなって。正直“俺達の音楽が分かる人がいるのか?”って思ってたし。でも、いろんな人に声をかけて貰うようになって、自分の中でのラップに対する気持ちが固まっていって」
――KANDYTOWNは情報の供給が多くはないですね。音源やMVはしっかり分かるようになってるんだけど、WEBを見てもいま話に出たような、成り立ちやバックグラウンドは書かれていなくて。
「いかに音楽だけでやっていけるか、音楽だけで人の心に入っていけるかが大事だと思うんですよね。IOくんは“説明したくない”っていうスタンスだし、KANDYは人に理解してもらうのは難しいだろうなって思うんですよね。だけど、とにかく音楽が好きだっていうのは分かって欲しいし、それが伝わればいいのかなって」
――JUJUくんはBCDMGとマネジメント契約を結んだわけですが、NOBUさんその経緯を軽く教えてもらえますか。 DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!(BCDMG) 「UNITED ARROWS & SUNSの動画(「Break Beats is Traditional」)を制作した時だよね。その時はKANDYのIOとDONY(JOINT)がBCDMGと契約してたんだけど、撮影に一緒に参加したJUJUのパフォーマンスや佇まいを見て、華があるし、
JASHWONと契約するしかないなってその場で話して。撮影の後に“入んなよ”みたいな話をしたよね」
「そうですね。もう嬉しくてびっくりしました。その時も、“いいのかよ、俺かよ”と思ったし、“マジいいの?”ってIOくんにずっと確認してて……。だってIOくんも言ってましたもんね? “JUJUをBCDMGに入れるのはちょっと……”みたいな」
――保護者的な感じで(笑)。
「アルバムの制作もBCDMGとP-VINEから設定して貰って始めたんですけど、“え! IOくんの次、俺なの?!”って感じだったし、そうやって決めてくれなかったら、絶対ソロなんて作ってなかったと思う。俺、マネージャーとかやりたいと思ってる方なんですよ」
――そうなんですね。
「IOくんと一緒にやってる映像チームのTHE TAXi FILMSも、IOくんがディレクターで、俺はサポートする立場でもあって」
――ライヴとかだと、スゴく目立つからそれは意外でした。
「そういう時はパッと切り替える感じですね。色々考え始めると、“雑誌の表紙とか……大丈夫?”って思ってしまう自分もいて(笑)。だから今回のソロも“俺の出んの?!”っていう感じだし、“他のみんなの方がいいんじゃないの?”って感じで。こんなこと言って申し訳ないんすけど、BCDMGに(笑)」
――ただ、アルバムの制作を始めたのは、一つ覚悟が決まったということだと思うんだけど、全体的なイメージはありましたか?
「永く聴いて“いいな”って思えるようなものにしたい、というのが原点的にありつつ、単純に自分が“好きだな”“いいな”って思えるものを選んだと思いますね。人に“これいいんじゃない?”とか言われて決めるんじゃなくて、とにかく、やりたいもの、自分の好きなものを基本に、シーンの流れとかを意識しないものを作ろうと思ってました。トラックは特にそうで、完全に音だけで選んだんで、
SCRATCH NICEさんとか面識のない方もいらっしゃって。今回はビートに関していちばんこだわったし、選んだ時間も長かったですね」
――前半はオーセンティックなんだけど、後半にかけて今っぽい感じにもなっていって。
「そうですね。前半は自分のベーシックな気持ちを押し出しつつ、最後の方はどっちかっていうと“最近”な感じになりましたね。あまり意識はしてなかったんですけど、作り上げたらこういう構成になっていって。だから、一体感はあまりないと思うし、それは俺の飽きっぽさが出たのかなって」
――トラック先行でリリックを書いていったということになりますね。
「今回はそうですね。ビートを聴いて、合わせる言葉を選んでいって。だから、内容も音からのインスピレーションで決まっていった感じですね」
――客演はどう決めていったんですか?
「ホントに好きな人、自分が信頼できる人、ずっと一緒に制作したいと思ってた人ですね。それがB.D.さんとFEBB。KANDYのメンツに関しては、KANDYのアルバムがあったんで、タイミングが合った人って感じですね」
――アルバムの中には“ダサいラッパーはダメだ”みたいなニュアンスのリリックがあったり、けっこう強い言葉もありますね。
「自分に言ってるような感じだと思いますね。人をディスったり、説教してるような感じではない」
――「Live Now」では、自然体で自分がどう思うか、みたいな言葉もあって。
「“自分を出したね”って、みんなに言われるし、そう思います。自分に対して一回“しっかりしろよ”って、“浮き足立つなよ”って言い聞かせてるのかもしれない」
――確かに1stにしては落ち着いた内容ですね。
「ヒップホップが好きじゃない人でも聴けるような感じだとも思いますね。それは結果的にと言うよりは、意識してたかも知れない。ヒップホップ・シーンに頼っててもどうしようもないなって思うし、“音楽”をやりたいんで。ヒップホップは好きだけど、俺は音楽をやりたい」
――その意味でも、音楽に対するイメージが変わった?
「変わったっすね。音楽がもっと好きになったし、考えるようになったと思います。最近は古いものから新しいものまで、改めてちゃんと音源を聴くようになったし、言葉の使い方も考えるようになって。だから、精神的な部分で変わったと思います。アルバムの制作を通して、色んな人に支えられてることをより深く理解するようになったし、支えてくれる人のためにも良い音楽を作らなくちゃいけないなって」
――ある種の責任感のような感じが生まれたと。
「この先、自分がやりたいことは、これ(音楽)だってしっかり思えたし、後悔しないようにやらなくちゃなって。そして、その基本にはYUSHIとかIOくん、KANDYのメンバーから教わった“格好いいもの”があるし、それを“教えたい”。そしてそれが伝われば、世の中が格好良くなると思うし、自分も住みやすくなるのかなって」
取材・文 / 高木“JET”晋一郎(2016年10月)
2016年11月25日(金)
北海道 札幌 VANITY SAPPORO
開場 / 開演 22:00
前売 2,000円 / 当日 4,000円 / 広告持参 3,000円(別途2Drinks)
[出演]
SPECIAL GUEST: YOUNG JUJU(KANDY TOWN) / DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!
LIVE: ROZETTA / ACE OF DIAMOND / NASTY TEZ / SAKI ほか
DJ: JUNYA / KAORU
DANCE: YUMI&KANAKO / RUM SQUAD
2016年11月26日(土)
北海道 苫小牧 CLUB ROOTS
開場 / 開演 22:00
前売 2,000円 / 当日 3,000円 / 広告持参 2,500円(別途2Drinks)
[出演]
SPECIAL GUEST: YOUNG JUJU(KANDYTOWN)
※同日23:30〜〈苫小牧CUP ラップバトル〉開催
2016年11月27日(日)
北海道 旭川 CLUB BROOKLYN
開場 / 開演 19:00
前売 2,000円 / 当日 4,000円 / 広告持参 3,000円(別途2Drinks)
[出演]
SPECIAL GUEST: YOUNG JUJU(KANDYTOWN) / DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!
LIVE: ROZETTA / ACE OF DIAMOND / D-HOOD / NASTY TEZ / SAKI / RAZY / Blhite a.k.a.Rainman / LUSH /
DJ: JUNYA / TAKECEED / ALEX / KO-KI / KAORU / ZOO
DANCE: BLOOM / GENKI / MARTON a.k.a. SLUGGER / YUMI&KANAKO / Hinako&Mami / RUM SQUAD