トップ・ジャズ・シンガーの座を揺るぎないものにしているケイコ・リーの新作『The Golden Rule』がリリースされる(7 inch analog「Another One Bites The Dust(with T-Groove & Yuma Hara) / We Will Rock You(T-Groove Raw Mix)」も同時リリース)。ドナルド・フェイゲン、クイーン、ホイットニー・ヒューストンなどの洋楽ヒットを中心に、オリジナル曲を加えた構成で、70〜80年代のメインストリームの音楽を、その本質はそのままに、ブラッシュアップした印象だ。そこには、気ごころの知れたレギュラー・バンドのメンバーとの音づくりを楽しむのと同時に、新たな才能の抜擢もみずからの役割と考える、ケイコ・リーの姿勢が見て取れる。
――タイトルの『The Golden Rule』は、直訳すると“黄金律”ですが、どんな思いを込めたのですか?
「新曲の曲名をアルバム・タイトルにしました。この曲の歌詞は、10年くらい前、アメリカ人のDonny Schwekendiek(本作収録の〈The Flame(Dimitri From Paris Remix)〉の作詞も担当)と、“世界には矛盾や差別があるけれど、黄金律、つまり自分がしてほしいことを人に施すことが大切”というような話をして、書いてもらったものです。いまの時代にぴったりということで、曲をつけました。この曲には、(渡辺)貞夫さんが参加して、華を添えてくれています。いっしょに演奏したのが(全員、70〜90年代に渡辺貞夫グループに在籍していた)野力さん、岡沢さん、渡嘉敷さんだったので、“懐かしいなあ、当時を思い出しちゃうなあ”って、ニコニコなさっていました」
――数あるダリル・ホール&ジョン・オーツのヒット曲のなかから、「I Can't Go For That」を選んでいますね。
「迷ったんですけど、ランダムに聴いていたらこの曲が印象的だったし、ライヴでお客さまも体が動く感じかなと思って。ライヴっぽい感じでレコーディングをしようということもありました。岡沢さんがコーラスをつけてくれている〈You've Got A Friend〉は、ライヴでも同じようにやっています」
「スウィング・アウト・シスターの〈Now You Are Not Here〉は、意外なことにメンバーが知らなかったんです。この曲がヒットしたのは、ちょうど彼らがバリバリに仕事をしている頃で、耳にする機会がなかったのかもしれません。“この曲、うちのバンドでやったらいいはずだから”とやってみたら、野力さんも“いい曲があるんだねえ”って、気に入っちゃって。あとは〈The Flame(Dimitri From Paris Remix)〉ですね。2003年の『Vitamin K』で発表した曲を、Dimitri From Parisにリミックスしてもらいました。これは松木さんが弾いてくれているんですけど、マスタリングのときに松木さんの音を聴いたら、涙がぼろぼろ出ちゃって。そして、こんなに音が太いんだと。ほんとうにすごい。バズーカみたいです。ここまで太いのかっていうのを再認識して、彼への尊敬の念が一段と大きくなりました」