ソロ来日を果たしたザ・ポウジーズのケン・ストリングフェロウを直撃!

ケン・ストリングフェロウ   2013/06/11掲載
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 ザ・ポウジーズケン・ストリングフェロウがソロで来日を果たした。バンドでは何度か来日があったが、ソロでは初となる。ギター、またはピアノを使用してのライヴだが、マイクは使わずに生声で、しかもほとんど客席で演奏するという特異なスタイルで驚いたが、演奏、唄は真摯で心を打つ素晴らしいものであった。昨年、ソロの日本盤をリリースした筆者が、インタビューを試みた。
――アルバム『Danzig In The Moonlight』を日本でリリースし、ソロ来日した経緯について教えてもらえますか?
 「シンプルな話だね。僕たち(ケンと筆者)が前回会ったときの話をしよう。前回ポウジーズで日本に来たときにタワーレコードでライヴをやったんだよね。そのときに君が来てくれたよね。僕が参加したホワイト・フラッグのレコードと同時にインクレディブル・カジュアルズとか、君が長年かけてリリースしたものを持って。僕たちはそうして友だちになり、君が非常に頑張っていることが判っていたのでアルバムを出せるか訊いてみました。君が“もちろんOKだよ”というのは判っていたけど(笑)。規模は小さいけど、良いものになるってね。あと、ライヴで言えば、今回、同時期にノーマン(ブレイク / ティーンエイジ・ファンクラブ)とジャド(フェアー)が来て、2回のライヴで一緒になるというのもとても大きな偶然だったと思う。ソロの前2作は日本でもリリースされたのだけど、自分にとってはソロ・アルバムに則した形での日本ツアーというのは今まで経験がなかったんだよね」
――アルバムのコンセプトは? 僕のイメージとしては“月”“ダーク”“クール”などの言葉が浮かびます。
 「イエス、たしかに。ここにはとてもシンプルなコンセプトがある。ポウジーズの前のアルバム(『Blood / Candy』)はいろんな色彩があって、日中の明るいイメージがあったと思う。なので、それに対して“月灯り”というイメージを潜在的に持っていたのかもしれないね。(月光が)“明るい”ということは欠けることのない、手を加えることのない、ということも言えるのかも。曲には極力手を加えない、必要ならやり直す、違うものをやる。今回はそれらを自分で意識したと言えるね。“暗闇の中での月灯り”というのを意識している」
――レコーディングに関して教えてくれますか? 参加ミュージシャンのことなど。
 「このアルバムはブリュッセル(ベルギー)で録音したんだ。素晴らしいスタジオで、JBメイジャーズはじめオランダの素晴らしいミュージシャンたちが参加している。彼らといっぱい録音したんだけど、何も説明する必要がなかったし、また彼らも何も質問してこなかったんだ。曲をプレゼンしたら“うん、OK! ”って感じで。いい感じで録音できたし、実際彼らはぜんぜんミスしないんだ。12日間で、計アルバム2枚分の曲を録音したんだ。ひとつは僕のため、ひとつはJB(メイジャーズ)のために。両方ともすごい良いものになったよ。僕たちは25曲くらい録音したのかな、同じ時期に同じミュージシャンで録音したのだけど、それぞれ違う雰囲気のものになったのは面白いね。そのあとホーンやストリングスなどをLAやシアトルで加えたりしたんだ」
――ソロ・ツアーについて話しましょう。今回の日本ツアーでは、日本のバンドが多くサポートしてますよね。ポウジーズでの来日のときとは違うスタイルですが、どう思いますか?
 「これが日本では普通のやりかたなんだ、ということを理解しているよ。規模は小さいけど、正直でシンプルなやり方だと思う。 僕のソロはものすごいフレキシブルというか、シンプルだけど、いかようにもできるし、それでみんなをビックリさせるようなことができると思うんだ。毎日5人の違う人が見に来てくれるならいいとは思う。もっといいやり方もあるのかもしれないけどね。小さいショウだと、来たみんなと知り合いになれるのもいいよね」
――あなたはいつも客席で演奏しますよね? ステージは嫌い?
 「嫌いってわけではないね。ただ、自分の周りに人がいっぱい居るのが好きなんだよね。自分の叫びが届くだろ? 言ってみれば、どこででもできるんだよ」
――ライヴはマイクやPAを使いませんよね? けっこう衝撃的だったんですけど。
 「シンガポールで演ったことがあって、そのときは野外のフェスティバルだった。1,000人を超える人が観てたと思うけど、マイクなしでやったよ! みんながすごく静かに聴いてくれてね。だから、可能なんだよね! 難しいけど可能なんだよ!」
――アルバムに入っている「Pray」という曲はアル・グリーンとハイ・サウンドへのオマージュとなっているけど、ソウル・ミュージックは好きですか?
 「イェー、僕のすべての音楽はソウル・ミュージックが元になっているよ。違うか(笑)。自分のやり方はいつでも情熱的でありたいと思っているし、そういった意味ではソウル・ミュージックはいつでも好きだね」
――アレックス・チルトンについて訊きたいのですが、2010年に彼が亡くなったとき、どう感じましたか?
 「……うまく説明することができないな……自分の友人として……とても大きなものを失った。30年前に祖父を亡くしたときの感情に近いのかもしれないけど、初めての感情だった。哀しみに陥ったけど、その気持ちを変えなければと思った。誰かが死んだとしても世の中の多くの人は生きている。あたりまえだけどね。彼ともっと時間を共有したかったとも思う。ときどき、パリで彼に会って、演奏以外の時間を過ごしたことがあるけど、それはそれは美しい時間だった。奇妙だけど、次の次元に行っているような気がしたんだ……。人生っていうのはいろんな道があるだろう。幸せっていうのもそうだ。結婚したり、仕事が終わってビールを呑んだりというのがそうだという人もいるよね。何を言っているのか分からなくなってきたけど、僕は、賢くなって、問題をクリアにして次へ行くという判断をした。彼に関しての考えはグルグルと回ってくるんだけど、この気持ちのままでいたり、考えたりするのはとてもハードなんだ……」
――今後の予定など教えてくだい。
 「たくさんあるよ(笑)! アレックスが逝ってからもビッグ・スターのドラマー、ジョディ(スティーヴンス)とは活動を共にしているんだ。一緒に演奏もしているし、いくつかのビッグ・スター関連のプロジェクトは継続されている。まず映画、ビッグ・スターのドキュメンタリー映画が来月公開になって、それに伴ってコンサートの企画もある。“サード”アルバムを小編成のオーケストラを加えた形で再演する。これはかなり良いものになるよ。ジョディ、ジョン、僕に加えてマイク・ミルズR.E.M.)、クリス・ステイミーdB's)などが参加するよ。また、1曲ごとに違うシンガーがゲスト参加する。これはカート・ヴァイルシャロン・ヴァン・エッテンピート・ヨーンマーシャル・クレンショウなんかが出る。場所によってはゲストが変わるんだ。ノーマン(TFC)、ヨ・ラ・テンゴ、dB'sなど、いろんな人が出てくれる。僕のソロも続いていくよ。シアトルでフル・バンド・スタイルで演るし、その形で夏にいくつかのフェスティバルに出る予定。あと、レコードも作りつづけるよ。12月までに6、7枚は作りたいね(笑)」
――でも、ソロのツアーはすごく長くやっていますよね。
 「そう、キープしてるよ。まずブッキングをするのが好きなんだよね。いまはもう2014年のライヴのブッキングを始めているよ(笑)」
取材・文・撮影 / 中上マサオ Target Earth Records (2013年5月)
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