「困難を乗り越えることそのものが私の原動力」――ケリ・ノーブルが語る新作『レット・ゴー』

ケリ・ノーブル   2007/12/18掲載
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 女性ならではの繊細さと力強さが“魂をゆさぶる”と、日本では女性を中心に大きな共感を集めている、ハスキー・ヴォイスの女性シンガー・ソングライター ケリ・ノーブル。10月に発売した『レット・ゴー』ではさらなる進化を多くのリスナーに印象付けた彼女に話を訊いた。


 アルバム『フィアレス』で、卓越した歌唱力と、感情の機微を繊細に捉え、ポジティヴに表現していく筆致で、本国アメリカはもちろん、日本の女性リスナーからも大きな共感を寄せられているケリ・ノーブル。前作から3年を経てリリースされるニュー・アルバム『レット・ゴー』は、シンガーとして、そしてソングライターとしてのさらなる飛躍を感じさせる内容となっている。

  「『フィアレス』以降、長い時間をかけて作曲をしていたので、今回のアルバムについてこういう作品にしたいというのは意識していなかった。ただ、できあがって自分で聴き直してみたら、すべての楽曲に共通したことが語られていると気づいたの。自分の人生を歩むうえで何かが障害になっていたりすることを解放してあげるということ。意識的にではなかったんだけれど、そういうものがテーマになっていると思う」

 アメリカのシンガー・ソングライター、クリステン・ホールとの共作といったチャレンジを経て完成した今作は、メランコリックでノスタルジックなメロディの陰からのぞくタフな女性像を感じることができる。誰もが経験する痛みや挫折を乗り越えようとする楽曲の世界はとてもリアルに響く。

  「曲作りの観点が進化したと思う。まったくのフィクションから曲を書くということはないけれど、今までは自分の実体験のことしか書けなかったのが、今回の< エミリー >や< ゴー・プラウド >といった曲では別の人のことを歌うという、今までにはできなかったことができるようになった」

 ファースト・シングルの「ウォッチ・ミー・ウォーク」をはじめ、ホーン・セクションで彩られた「ベイビー、カム・ホーム」、そしてゴスペル・フィーリングが活かされた「ゴー・プラウド」、ミニー・リパートンを思わせるメロウな「ハニー」など、それぞれの楽曲はこれまで以上にソウルフルで、彼女の強い意志がみなぎっている。



  「『フィアレス』と同じようなアルバムを作りたくなかった。あのアルバムのころの私よりもっと成長しているし、あのアルバムはとてもミニマルな音だったと思う。でも今回のプロダクションはとても広大で力強いものになっている。リリックも力強いものが多かったこともあるし、制作当時にR&Bをよく聴いていたので、そういう影響も出ていると思うわ」

 こちらをじっと見つめ、ひとつひとつ自信を持って語る姿が印象的な彼女、最後に音楽を生み出すモチベーションについて聞いた。

  「困難を乗り越えることそのものが私の原動力になっていて、自分の中の気持ちを吐き出してしまうことで困難に立ち向かっていけるんじゃないかって思うの。みんな現状に止まっていないで、行動するべきだと思う。痛みや大変なことというのは避けられないけれど、人生は短くて早く過ぎ去っていくものだから、ストレスを溜めないで楽しく過ごすというのは大切なことだと思うわ」



取材・文/駒井憲嗣(2007年11月)


写真は11月4日にclub IKSPIARIで行なわれたスペシャル・ショーケース・ライヴより


ケリ・ノーブル 来日公演


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