キノコホテル   2010/08/04掲載
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 今年2月のグランドオープン(アルバム『マリアンヌの憂鬱』リリース)からわずか半年、『マリアンヌの休日』と題されたカヴァー・ミニ・アルバムを発表するキノコホテル。全6曲すべてが昭和の和モノで、なおかつサウンドもディテールにこだわり抜いた“あの頃感”に満ちていながら、キノコホテル=“昭和ムードのギャルバン”という貧困なイメージを粉砕するに十分なオリジナリティが発揮されている。“和モノマニアなだけじゃこうなんねえだろ!?”という疑問を解消すべく、ある日の気怠い午後、支配人(歌、電気オルガン、パーカッション)のマリアンヌ東雲様と従業員(電気ギター)のイザベル=ケメ鴨川を恐れ多くも渋谷某所にお呼び立てし、いろいろと話を伺った。


「さんざん昭和だなんだって言われますけど、リヴァイヴァルのつもりではやってないから」(マリアンヌ)
──今回はカヴァー・アルバムですけど、選曲はどうやって決めたんでしょう?
 マリアンヌ東雲(以下、マリアンヌ)「私が勝手に決めました。ライヴでやってた曲もあるし、そうではない曲もあるけど」
──「謎の女B」(平岡精二)や「山猫の唄」(エルザ)あたりは特に、“なんでこんな曲知ってんだ?”と思いました。
 マリアンヌ 「キノコホテルをやる前からもともと好きな曲で、“いつかこんな曲をやってみたいな”と漠然と思ってたことをふと思い出して」
──ここに収録された曲のオリジナルは67〜75年と幅があって、実はその頃って録音年によってサウンドやムードがかなり違うんですよね。でもキノコホテルの曲として聴けてしまう不思議な統一感があるなと感じました。
 マリアンヌ 「バラエティ豊かに、あんまり年代に凝り固まらないでやりたいと思ったので。67〜9年と73〜5年で3曲ずつになってるんですけど、それはたまたま。私としては、別に“原曲が何年の曲か?”なんてどうでもいいこと。キノコホテルはさんざん昭和だなんだって言われますけど、リヴァイヴァルのつもりではやってないから。今回、こういう曲を選んだのも、私がそういうものしか知らないっていうのもあるんだけど(苦笑)、キノコホテルが演奏することでキノコホテルの音になるんだから、それでいいじゃない?」
──実はキノコホテルのような存在って当時はいないんですよね。ミリタリールックを着たシンガー・ソングライターwithバンド、しかも全員女の子、みたいなバンドなんて聴いたことないです。GSをカバーするにしても、なんで"リズム&ブルース演歌"とも呼ばれてる男クッサい「恋はふりむかない」(リンガーズ)なんだ?と思ったりもしました。
 マリアンヌ 「これは、なんでもいいからGSのカヴァーを演ろうかと考えていたときに、あんまり知られてない曲がいいなと思って。私、原曲はまったく好きじゃないの。かっこいいと思ったこともないし」
──うわ!(笑)
 マリアンヌ 「ただ、アレンジしたらかっこよくなるなと思ったんです。ね、つまんない曲だよね?」
 イザベル=ケメ鴨川(以下、ケメ) 「うん、元のやつはヒドい!」
──「ヒドい」って……(笑)
 マリアンヌ 「我ながら、あんなヒドい曲をよくもまあ……だからこれは、自分でアレンジして歌うようになってから好きになった曲ね」
──確かにあの曲はリフがキモなのに、キノコホテルはそこをばっさり切っちゃっててビックリしました。良くも悪くも原曲のリフは強烈だから、そっちに引っ張られそうなものを。
 ケメ 「ダサいんスよ! タッタラターターターアータ♪(イントロのリフを口ずさむ)……タッタラ♪ってのが、すっげダッセ!」

 マリアンヌ 「ねえ? 『ドラえもん』の歌みたいよね」
──ドヒャア!(取材陣一同悶絶)
 マリアンヌ 「……という具合に決してかっこいい曲ではないけど、私たちが演ることで、割といい曲になったんじゃないかと思ってます」



「GSとかは一通り好きで聴いてたかな。今はもう聴かなくなりましたけど。10代で卒業したよね」(ケメ)



──ちなみにキノコホテルの曲が完成するまでのフローはどういう感じなんですか?
 マリアンヌ 「まずはアレンジね。最近はスタジオで3人に“だいたいこんなコード進行でこういうリズムでやってくれ”って言って演らせることが多いんですけど、最初の頃は、ドラムとベース・ラインと簡単なバッキング・ギターが入ってるものを持ってきてました」
──それはマリアンヌ様自らが弾いて?
 マリアンヌ 「いいえ、ぜんぶ打ち込み。それで一通りアレンジを固めた後に、メロディと詞をいちばん最後に乗せる感じ。ただそのメロディと詞を乗せるのが大変なので、アレンジだけできてるけどほったらかしになってる曲もけっこうあったりするのよね」
──キノコホテルは“どんな曲をやるか?”が重要ではなくて“サウンドありき”なんですね。
 マリアンヌ 「そうなの。コード進行とリズムと展開、それを考えてるときがいちばん楽しくて、詞とメロディがとてもしんどい……もういっそインストにしちゃおうかな?とか思ったりするし」
──じゃあホント、カヴァー・アルバムっていう形態はマリアンヌ様にとっていい息抜きだったんですね。
 マリアンヌ 「そうそう。やってみたら、ホントいい“休日”だったわね」
──ところでお二人は日本の古い音楽を熱心に聴いてた時期はありました?
 ケメ 「ずっと聴いてました! 10歳くらいのときから。ヒット曲も聴いてたけど、(吉田)拓郎とかエレックとかの古いフォークも聴いていて。そのあとはGS、60〜70年代歌謡曲、アニマルズとかモッズっぽい洋楽っていう感じ。もういろんなもの聴いてた」
──なんでまた、古いフォークに出会っちゃったんですかね。
 ケメ 「家にアン・ルイスとか海援隊とかカセットテープがいろいろあって、その中から吉田拓郎とかを勝手に選んで聴いて、みたいな」
──なるほど。きっかけは親のコレクションだったんですね。
 ケメ 「そうそう。一通り好きで聴いてたかな。今はもう聴かなくなりましたけど、GSとかは」
 マリアンヌ 「私も聴かないわねえ……」
 ケメ 「10代で卒業したよね」
──マリアンヌ様の場合はいかがでしょう?
 マリアンヌ 「私はもともとヴァイオリンを習わされてて、“クラシック以外聴いちゃダメ”という家で育って。でもたまたまハルヲフォンの『電撃的東京』を、CDでたまたま聴いて……」
──おお!ハルヲフォン!(取材陣一同どよめく)……なにかきっかけがあったんですか?
 マリアンヌ 「ホントたまたまね。当時、ケーブルTVの音楽番組かなにかで誰かが紹介をしてて“なんだろう?”と思って聴いたあたりからクラシック離れが急速に進んで。『電撃的東京』はGSとか歌謡曲をカヴァーしたものでしょ? だからそのオリジナルのGSとか歌謡曲も聴くけど、ハルヲフォン自体が活動してた時代以降のニューウェイブっぽいものも聴く、みたいなゴチャゴチャな感じ。あんまり体系立てて"この年代のものを聴くぞ"って聴いたことはないわね。その後もGSとかしばらく聴いてたけど、なんか疲れちゃって(苦笑)……現代音楽にいった時期もあったわ」
──まあなんというか脂っこいですからね、昭和歌謡って(笑)
 マリアンヌ 「うん、なんかお腹いっぱいになっちゃって」

 ケメ 「すごくお腹いっぱいになるね!」
 マリアンヌ 「“昭和ブーム”って何年かに一度来るじゃない? 昔はそういうイベントに遊びに行ったりもしてたけど、内輪ノリな感じを見てたらげんなりしてきちゃって、もうGSからしばらく遠ざかって、忘れてたのね。そのうち偶然、バンドを始めることになって、勧められるままに曲を作ってみたら、そういう年代の影響を受けたような曲ばかりできて……結局はすごく好きだったということなんだ、とそのとき気がついたのね」
──なるほど。例えば、デ・ラ・ソウルのようなヒップホップって、それこそ親のレコード棚にありそうな古いブルースやソウル、フュージョン、イージーリスニングなんかを再構築して、自分たちのメッセージと融合することで新しい音楽になったと思うんです。キノコホテルも同様に、一聴して昔のサウンドなんですけど、実はパンク〜ニューウェイブ的な再解釈がありつつ、よりサウンドのディテールにこだわることで逆に、現代的な音楽として提示してるように思うんですよ。
 マリアンヌ 「そうですね。私もそのつもりでやっているんですけど……いまだに分かってもらえないこともあります」
──それこそGS直撃世代の方々が主催するイベントにも呼ばれたりするそうですけど、そういう場での反応は?
 マリアンヌ 「たぶんそういうイベントのお客さんは“GSとか歌謡曲を若い女の子たちがやっているんですって、行きましょうよ!”みたいな感じで来るのかもしれないけど、聴いたらぜんぜん印象が違うんじゃない?って思うわ」
──すごくエッジのあるものに感じるんじゃないでしょうか。
 マリアンヌ 「そうね。エレキ・ギターもギャンギャンだから、耳を塞いでるような人もいるし。GSっぽかったり歌謡曲っぽい曲ももちろんありますけど、でもそれだけじゃないんで」
──個人的にはむしろパンクに感じることが多いです。話を伺ってると、80〜90年代のヒット、それこそ小室ファミリーあたりの曲でもキノコホテルならイケそうな気がしてきました。
 マリアンヌ 「私もね、そういうのをキノコホテルの曲として演って成立させることができたら、いろんな意味で凄いなって思うけどね」

 ケメ 「タイトルぜんぶ英語になるしね!」
──うわー聴きてえそれ! じゃあセカンドとサードの間の次の“休日”はそれでお願いします!(土下座)
取材・文/フミヤマウチ(2010年7月)


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サロン・ド・キノコ〜秋の人間狩り

■<サロン・ド・キノコ〜秋の人間狩り・心斎橋編>
10月3日(日)開場17:00 / 開演18:00
@大阪心斎橋クラブクアトロ
前売り:¥2,500 / 当日:¥3,000
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※問い合わせ:清水音泉 06-6357-3666

■<サロン・ド・キノコ〜秋の人間狩り・新宿編>
10月9日(日)開場18:00 / 開演19:00
@新宿ロフト
前売り:¥2,500 / 当日:¥3,000
※前売りは8月8日より、チケットぴあ(P112-327)、ローソンチケット(L74594)、イープラス、新宿ロフトにて発売。実演会場の物販、ディスクユニオン一部店舗でも購入出来ます。
※問い合わせ:新宿ロフト03-5272-0382

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10月17日(日)開場18:00 / 開演19:00
@名古屋クラブクアトロ
前売り:¥2,500 / 当日:¥3,000
※前売りは8月21日より、チケットぴあ(P112-640)、ローソンチケット(L45473)、イープラスにて発売。実演会場の物販でも購入出来ます。
※問い合わせ:JAIL HOUSE 052-936-6041



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