結果が全て――結成11年目を迎えた岸田教団&THE明星ロケッツの新作「シリウス」

岸田教団&THE明星ロケッツ   2018/08/24掲載
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 結成11年目に突入した4人組ロック・バンド、岸田教団&THE明星ロケッツがニュー・シングル「シリウス」をリリースした。同人音楽ユニットとして活動をスタートし、現在ではアニメ主題歌を数多く担当するソングライター / 表現者でもあるという、ほかにないユニークな存在感を放つメンバーから、リーダーでもある岸田(b)と、ichigo(vo)を迎え話を聞いた。
――「シリウス」は、アニメ・タイアップのシングル曲としては珍しい、ミッドテンポの骨太なロックですね。
岸田 「今回はTVアニメ『天狼 Sirius the Jaeger』とのタイアップ曲で、“出来ている分はとりあえずこれですー!”って送られてきた脚本を読んでから、曲作りを始めました」
――可能性として、ストーリーが最後には全く違うことになってしまうリスクも(笑)。
岸田 「脚本を書いている人たちがOKを出してくれたから、大丈夫だと信じてる(笑)」
ichigo 「希望としては最終話のラストで流れたりしてほしいもんね」
岸田 「自分たちの表現も残しますが、“アニソン”ってジャンルがあるわけだし、作品に寄り添った曲じゃないとリスナーの支持は得られないですね」
――メンバーそれぞれが虎視眈々と自分の見せ場を狙ってアピールする、緊張のようなものを感じました。
ichigo 「ある意味、戦いですから(笑)。フェーダーを上げてもらえないんで。がんばらないと!」
岸田 「ヴォーカルでも出来が良くないとフェーダーを下げます。バンドだとヴォーカリストが中心にいることが多くて、周りがそれをどう生かすかって発想をしていくけど、うちはとりあえず“言うことをきけ”スタイルです」
ichigo 「言われたことが出来たうえで、自分の仕事もしたいんで大変です。出来ないと悔しいし、常にみんな岸田に倍返ししたいんです(笑)」
岸田 「結果、音楽が良くなるのなら大歓迎」
ichigo 「カッコいい音楽を作りたくてこのバンドをやっているよね。カッコいい音楽の中で、カッコよくありたい。バカみたいなんだけど(笑)。だから負けられないですね」
岸田 「無理難題に近いことは確かに言うし、ダメなときは否定もしますけど、メンバーはそのパートの専門家だと思ってます。彼らはそれぞれの分野で100点が取れる人で、自分は全体を見渡せる代わりにそれぞれ80点くらいしか取れない。だからメンバーが返してくれる、僕が気付かない20点の部分には得難いものがありますね。でも個々の意見が全体を見渡した時に正しくない場合は、ぶつかることもあります」
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――今回はカップリング曲「stratus rain」でichigoさんが作詞を担当されていて、すごく優しい言葉を使っているのが印象的でした。
ichigo 「この曲は、岸田から初めて“○○レイン”にしてほしいってタイトルの指定があったんです。そこで、色々と単語を合わせているときに“ストラト”って音がいいんじゃないかと思って。“重なる”って意味もあるし、ギターにも“ストラトキャスター”があるし……と打ち合わせていくうちに〈stratus rain〉というタイトルが先に決まりました。私自身は雨でも元気なんだけど(笑)、雨には悲しみや、後悔なんかのイメージがあるから、良いことも悪いこともあって、がんばるしかないね、っていう曲になりました」
――ヴォーカリストとして、岸田さんが作詞した楽曲のとき、アプローチは変わりますか?
ichigo 「岸田の描く人物像って、私からはちょっと遠いんです。今回のようなタイアップ曲の場合は、キャラクターや作品の持つ雰囲気、印象に近づけるようにしています。せっかく歌を担当して、人に聴いてもらう機会があるので、誰かが少しでも楽しくなるような影響を与えたいなという想いや、聴く人に寄り添いたいという意識も常にありますね」
――中盤のギター・ソロが個性的で驚きました。
岸田 「ギターのはやぴ〜さんはソロになると何をするか僕らにもよくわからないんで(笑)。本人は“流れ星のイメージ”って言ってました! あれは流れ星というより、墜ちそうな飛行機がついに墜落したんじゃないかって、僕は思いましたね(笑)」
ichigo 「華やかさと芸術性をプラスするのが彼の役割です。ライヴをぜひ観に来てください! ギターを後ろで弾いたり、歯で弾いたりして楽しいから(笑)」
岸田 「彼はオーセンティックかつ伝統的なギタリストだと自認していて、少々エキセントリックなことをしても、ジミ・ヘンドリックスの範疇なんだろうな。エフェクターの方向性もそんなにめちゃくちゃではなくて、60年代からある機材を使っているから、おかしいのは頭だけで、実際はプレイ・スタイルもギターの基本に忠実なタイプですね。ブルース出身らしく、チョーキングとビブラートに対してしっかり向き合うし。(〈stratus rain〉は)良く出来たよね、結構好き。珍しくバラードで。落ち着いたシングルになりました」
――今年でバンドとしては結成11年目、同人音楽のユニットからスタートしたんですよね。
岸田 「“同人音楽”は同人活動の一種で、ゲームとか書籍なんかの二次創作にあたる音楽作品。音楽的な共通項ではなく、ルックスとまつわるカルチャーで音楽ジャンルとして成立した、ヴィジュアル系を想像してもらうとわかりやすいかな。同人音楽も既にジャンルのひとつだよね。その中で活動しているロック・バンドは意外と少ないです。そもそもは、アニメの曲でも、主題歌ではなく劇伴や、ゲームの音楽作家とか、エンジニアさんになりたかった。10代のころから先を見据えて、まだ一般的ではなかったPCを使っての録音を実践していたこともあって、バンドに参加しても感覚が全然違っていましたね。クリックでリズムを聴いたり、波形でチェックするような人は周りにいなかったから、排斥されましたね。ひとりで作曲してレコーディング、ミックスまでって練習を続けてちょうど24、5歳のころ、だいぶ自信がついて、メンバーを集めたのが岸田教団&THE明星ロケッツ。このバンドの活動資金をつくるためにゲーム屋さんの片隅にある、お菓子とかプレステが当たるような小さいクレーンゲームの曲を作ったり。カリーノって機種なんだけど置いてあると、自分の曲が流れてる。マジで俺っぽい曲だから、分かる人は気づきます」
ichigo 「探してみるよ(笑)。私も結局、いわゆるバンドマンには馴染めなかったんですけど、同人やアニソン界隈はすごくあったかくて、ノリがよくて、察しもよくて、冗談も通じる、サイコーのお客さんがいるんです。岸田教団を始めたときに、それまでと全然違って“これだよ! こういう風に楽しみたかったし、このライヴの熱さが欲しかった”って思えました。“ここだったのか”って」
――普通のロック・バンドの活動で満たされなかった部分があったんですね。
ichigo 「もっと売れたり、キッズに浸透していたら違ったかもしれないけど」
岸田 「そこにたどりつくために必要な要素がアニソンとはまた違うしね」
ichigo 「うん、違う才能が必要だった。今すごく、楽しいです」
岸田 「たしかにロック・バンドをやっていたら、良くも悪くも音楽制作よりも音楽活動、ライヴのほうが主軸になってスタジオにこもれない」
ichigo 「そうだね(笑)。うちはロック・バンドとしてはライヴ本数が劇的に少ない」
――10月のワンマン・ライヴは“nonシークレットパーティー”とのことですが、どんな内容になりますか?
ichigo 「東京ではいつも1,000人以上入るライヴハウスでやるんですが、ファンクラブがある体で、クローズドな内容にします」
岸田 「ichigoさんがシークレット・ライヴを開きたくても、ファンクラブが存在しないからできない(笑)」
ichigo 「ファンのみなさんは割とバラエティ脳というか、冗談が通じるんで(笑)」
――とはいえ「シリウス」のMVでは皆さんシリアスでカッコいいですよ?
ichigo 「MVは黒と白のヴァージョンがあるんですけど、白が普段の私のパーソナルなイメージです。黒い方はドレスを着る“ichigo”のイメージもあるので、どちらも見せたいな、と思って両方選びました。でも、なによりも後半、岸田が犬とクロスフェードしてる理由を、岸田の犬顔をフィーチャーしているMVってことを伝えたい!(笑)」
岸田 「たれ目のドーベルマン、グレースちゃん、よく似てた(笑)。編集した人めちゃめちゃ面白かっただろうね」
ichigo 「こんな風にバンドの性格的にどうしてもずっとカッコつけられないんです、決め顔も続かないし(笑)。でもグレイゾーンにいる人たちをゲットするために、もうちょっとカッコつけて欲しいんですけど」
岸田 「マジかよ。カッコいいことにみんなそんなこだわりあんの?」
ichigo 「わかんない(笑)」
岸田 「ロック・バンドやってモテる世界へ行かないと。でもそこには俺がモテる余地はないんだよ」
ichigo 「(爆笑)アニソン作家で良かったね」
取材・文 / 服部真由子(2018年8月)
岸田教団&THE明星ロケッツ ワンマン・ライヴ
「nonシークレットパーティー」

whv-amusic.com/kisidakyoudan/
2018年10月8日(月・祝)
東京 渋谷 TSUTAYA O-WEST
開場 17:30 / 開演 18:00
スタンディング 4,500円(税込 / 別途ドリンク代)
※お問い合わせ: ディスクガレージ 03-5533-0888(平日12:00〜19:00)

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