清木場俊介は11月24日にリリースされる5thアルバム
『ROCK&SOUL』について「これが新しい自分」と力強く言い切った。ソロ活動を始めて5年目、理想とするロックを追求し駆け抜けてきた怒涛の日々。ようやくここにきて清木場は、「地に足がついた」と達観の境地に至ったという。
ダイナミックな展開に繊細さを兼ねたサウンド、“唄い屋”の本領を発揮した曲ごとに変化する七色の声と表現力。そして、これまでとは異なる、外へ向けた解放的なメッセージ。たしかに一皮むけた感のある清木場だが、一体彼に何が起こったというのだろうか……。
「今までは何もかもを自分で決めてきたんですよ。この方向性で行きたい、こういうイメージをリスナーに与えたいって。それで手一杯になっていて、まるで余裕がなかったんです。挑戦したいこともできずに逆にストレスを溜めてきてしまった……。けど、今年になってから所属事務所やレコード会社のスタッフと意志の疎通がようやく取れてきて、気持ちにゆとりが生まれてきたんです」
――ようやくまわりを冷静に見渡すことができたわけですね。
「ええ。あと今年30歳になったのも大きい。自分の中の考え方が変わってきたんですよ。今年、年頭にツアーが終わった後に休みをとったんです。そこで過去や未来、自分と向き合い、いろいろなことが整理できた。休むことは大切ですね。あのまま休息をとらなかったら爆発していたかもしれない。今までは休んだら終わりだって思ってましたからね。だから10代、20代と突っ走ってきて、30になってやっと自分の過去を振り返りながら、これからゆっくり生きていけるなって確信が持てた」
――年輪が焦燥感を薄めてくれた。
「僕は元EXILEのSHUNってことで、名前ばかりが先行していたわけです。実際に僕がどんな人間か理解されぬまま。ある意味で地獄だったし、“清木場俊介”って名前を浸透させるためにソロになってから頑張ってきた。それに元々ロック出身ではない僕が、ロックをやっていることを知ってもらうのにも時間が掛かかってしまいましたし……」
――そんな葛藤があったんですね……。
「けど、その経験も今考えれば感謝ですよ。それがあったから変われたし、自然の流れだと思うんだけど、デビュー10年目にしてやっと環境も整って真の意味での音楽活動ができているかなって思うんです」
――アルバムのタイトルは、まさにその心情を表現したストレートなものですね。
「新しい自分になれた、まさに僕の“生き方”や“魂”が反映されたアルバムですね」
――カラッとしたアメリカンロックに泣かせるバラードなど一曲一曲の完成度もさることながら、アルバム全体の構成がすごく美しい。通して聴くと、とても躍動感を感じます。
「デモの時点で曲順は決まってたんです。やっぱり僕はライヴを意識して曲作りをしているんで、このままライヴに行ける流れになっちゃうんですよ。あと声質も一曲一曲自然に変えているんで面白さはそこかな」
―― 一人のヴォーカルとは思えない使い分けでした。特にシングルにもなった「エール」の生声での唄い出しは頭を叩かれたようなショックでした。
「とにかくエールですから“届け!”って思いで。僕もラジオからこの曲が聴こえるとゾクッてきます(笑)」
――これまで清木場さんの曲は内向的なモノが多かった印象なのですが、今回はかなり違いますよね。
「メッセージが外に向いているんですよ。今までは自分に捧げるというか、葛藤や迷いを吐き出してきたんだけど、今回はまったく違ってファンに向けて正直にメッセージを送ったんです。“聴いてくれ”じゃなくて“一緒に行こうぜ”って。この心境になれたのも初めてだし、若いとき初めて曲を作った感覚に似ているかな。外に向けたものすごくポジティヴなメッセージが込められているし、僕のファンは幅が広くて、アルバムを作る前からすごく距離を意識しましたね」
――たしかにバラエティ豊かで、エネルギーをもらえるアルバムです。
「今はいろんなことが面白く前向きに考えられるし、それがこのアルバムには反映されています。まあ、スタート地点にようやく立ったという感じです。あと僕は日本一楽しめるライヴをやっている自負があるので、このアルバムを聴いて、ちょっとでも良いなと思ったら、ぜひ会場に足を運んでほしいですね」
取材・文/石塚 隆(2010年11月)