【KOBUDO -古武道- interview】 尺八、ピアノ、チェロによるユニット 結成3年目の3rdアルバム『時ノ翼』をリリース

KOBUDO -古武道-   2009/07/03掲載
はてなブックマークに追加
 尺八奏者の藤原道山、ピアニストの妹尾武、チェリストの古川展生と、当代きっての人気演奏家3人が意気投合して2007年に生まれたユニット、KOBUDO -古武道- 。純邦楽、ポップス、クラシック、それぞれが背負っている音楽を強みに、ジャンルを超えた新しいインストゥルメンタル・ミュージックを創造してきた彼らから、待望のニュー・アルバム『時ノ翼』が届けられた。テレビや舞台のために作曲したオリジナル曲から、話題の映画音楽なども含むカヴァー作品まで、KOBUDOならではの世界観がさらに広がった本作について、ユニットを代表して古川展生さんにお話を伺った。



――結成3年目にして、3枚目、ユニットとして3人の絆も、より深まってきたのでは?
古川 「そうですね、コンサート・ツアーを重ねて、一緒に過ごす時間が多くなったり……それだけじゃなく、仕事以外でも飲みに行ったりして、いろんなことを語り合ったり。最初はお互いに気を遣ったりしてましたけど、今は本音で言い合える仲になりましたね。気心が知れている分、やりたいこともよく見えて、今回はかなり僕たち“らしい”アルバムを作れた気がします」


――3人3様のユニークな組み合わせから生まれるサウンドに、いまや各方面から注目が集まっています。
古川 「……だといいんですが(笑)。やっぱり、それぞれが自分の音楽世界に責任を持ち続けている姿勢が大切なのかもしれません。たとえば僕自身は、東京都交響楽団の首席チェロ奏者の名に恥じない演奏ということを常に意識しつつ、“そんなクラシックの王道を行く人が、なんて斬新なことをやるんだろう”って音楽ファンを驚かせるような活動をしたい。そういう意味では今回のアルバムで、僕が声をかけて集まってもらった、都響のメンバーを中心としたストリングスとの共演が実現したことが、とても嬉しいんです。とくに、プッチーニのオペラ『マノン・レスコー』の〈第3幕への間奏曲〉は、僕の一押しでどうしてもKOBUDOでやりたくて選んだ曲だったので、それをもっとも信頼する弦楽器仲間と一緒に録音できて最高でした。この名曲が持つ魅力に加えて、僕らが伝えたかったことが表現できたと思います」


――カヴァー曲にはほかにも面白いものがありますね。たとえば藤原歌劇団の創設者であるテノール歌手の藤原義江が作曲し、昭和7年に発表した「討匪行」。これは満州での行軍の辛さを歌った軍歌とか。
古川 「妹尾さんが持ってきた曲で、僕はもちろん初めて知ったのですが、勇ましさの中にある哀愁を帯びたメロディが印象的で……。それでもやってみるまでは半信半疑だったんですが、結果として、なにか“世代を超えて残したい音楽”って妹尾さんが言う意味がわかった気がします。じつはレコーディングしてあらためてその良さに気づいたというのは、道山さんが長唄の名曲〈元禄花見踊〉をベースにKOBUDO風にアレンジして作った〈百花繚乱〉なんかもそうでしたね」





――古川さんがサウンドトラックでもソロを担当した、大ヒット映画『おくりびと』のテーマ曲も、KOBUDOヴァージョンで収録されています。
古川 「みなさんの期待にお応えしたくて(笑)。カヴァーすることを快諾してくださった作曲家の久石譲さんにも感謝しています。2007年の初夏にサントラを録音した時には、まだ撮影も終わっていなくて、主人公がチェロ奏者の設定の映画ってことぐらいしか知らされていなかったのですが、久石さんの書く旋律が本当に美しいと思ったのが印象に残っています。その後映画館で観ましたけど、もちろん素晴らしい作品でしたし、プロのオーケストラ団員の描き方とかもリアルで。曲の使われ方も良かったし、本木雅弘さんがチェロを演奏するシーンもとても美しかったですね」


―一方でオリジナル曲も魅力的です。石井ふく子の演出による舞台『華々しき一族』のために書かれた曲も素敵ですが、やはりTBS系テレビ『NEWS23』テーマ曲のフル・ヴァージョン収録もファンには嬉しいところです。
古川 「オープニング・テーマの〈翼〉も、エンディング・テーマの〈明日は晴れるかな?〉も、僕らの伝えたい想いは同じ。一日の終わりに、明日という未来に希望を繋いでいけるような音楽を届けたいということでした」


――「材木座海岸」はもともと、妹尾さんのソロ・アルバムに収録されていた曲ですね。
古川 「一度、材木座海岸の近くにある光明寺でのコンサートでKOBUDOヴァージョンとして演奏した時、お客さんの反応がすごく良かったんです。それで道山さんも僕も、今回ぜひ入れようと妹尾さんに話して……。ストリングスと一緒に録音したものと、3人だけのもの、どちらも捨てがたくて両方収録しました」


――オリジナル曲といえば、古川さん作の「TANGO-J」も。イントロ部分が荘厳な“無伴奏チェロ・ソナタ”みたいで素敵です。
古川 「ありがとうございます。大好きなピアソラへのオマージュもあって、今回はタンゴ曲を。まあ、妹尾さんにかなり助けてもらって完成したんですが(笑)。タンゴ曲なのに道山さんの尺八との相性もなかなかでしょ。毎回、アルバムでは、僕もオリジナルを作るのが恒例になっているのですが、まあ、出来不出来は別として、おかげさまで作曲そのものに少しずつ楽しみを感じることができるようになりました」


――藤原さんのオリジナル曲「月想ひ」はもちろんのこと、今回もアルバム全体から、さりげなく“和”の感性が滲み出ていますね。
古川 「僕もKOBUDOの活動をするまでは自分の中の“和”の部分なんてとくに意識しなかったので、本当に良い機会だったと思います。妹尾さんなんて普段から日本人そのものですし(笑)、必ずしも道山さんの演奏する尺八=和のテイストっていう単純な図式じゃないのが、KOBUDOの音楽だったりします。道山さんとは去年、バロックから現代音楽までをデュオで演奏するライヴをやって、あらためて邦楽器の持つ音楽的な懐の深さみたいなものを感じました」


――3つの楽器が、上になったり下になったり、ときには三位一体となって生まれてくるサウンドに今回も心を揺さぶられました。9月からのライヴ・ツアーも楽しみにしています。
古川 「トリオという限られた人数の中で、サウンドに立体感を持たせられたらいいなと常に思っていますので、そういう風に感じてもらえたのなら嬉しいです。このアルバムを通じて、僕たちの音楽が沢山の方たちの心に響くことができることを願っています。ライヴに足を運んでくれた方にも幸福感を味わってもらえますように。皆さんに支えられてここまで来ました、3年目も世の中にKOBUDOの音楽が必要とされるように頑張りたいと思います」



取材・文/東端哲也(2009年6月)



KOBUDO -古武道-
〜尺八・チェロ・ピアノ コンサート〜『時ノ翼』
●9月12日(土)15:00 三重・青山ホール
問:伊賀市文化都市協会事務局 [Tel]0595-22-0511
●9月13日(日)14:00 千葉・青葉の森公園芸術文化ホール
問:青葉の森公園芸術文化ホール [Tel]043-266-3511
●9月14日(月)19:00 東京・浜離宮朝日ホール
問:朝日ホールチケットセンター [Tel]03-3267-9990
●9月15日(火)19:00 東京・浜離宮朝日ホール
問:朝日ホールチケットセンター [Tel]03-3267-9990
●9月17日(木)18:30 山形・文翔館
問:山形県生涯学習文化財団 [Tel]023-635-5500
●9月18日(金)18:00 栃木・岩舟町文化会館
問:岩舟町文化会館 [Tel]0282-55-7055
●9月19日(土)18:00 千葉・我孫子市ふれあいホール
問:ユニバース [Tel]047-349-5323
●9月20日(日)15:00 岡山・早島町町民総合会館 ゆるびの舎
問:早島町町民総合会館 ゆるびの舎 [Tel]086-482-4800
●9月21日(月)16:00 茨城・坂東市民音楽ホール
問:坂東市民音楽ホール [Tel]0297-36-1100
●9月22日(火)16:00 埼玉・越谷市サンシティ越谷市民ホール 小ホール
問:ユニバース [Tel]047-349-5323
●10月10日(土)15:00 北海道・たかすメロディーホール
問:たかすメロディーホール [Tel]0166-87-2500

※詳細はKOBUDO -古武道-オフィシャル・サイト(http://columbia.jp/kobudo/)へ
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
[インタビュー] ソウル&ファンク・ユニットMen Spyder 初のEPを発表[インタビュー] KMC 全曲O.N.Oによるビート THA BLUE HERBプロデュースの新作
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015