――最新アルバム『タイガー・スーツ』は、エレクトロニックとオーガニックなサウンドが絶妙にブレンドされた、奥行きのある音質が印象的です。プロデューサーにジム・アビスを迎えた理由を教えてください?
KTタンストール(以下、同)「レーベル・マネジャーからの提案なの。ジムは、今まで
アークティック・モンキーズ、
カサビアン、
アデルや
UNKLEを手掛けた実績があるけど、まったく自分の名を売ろうとしないところが素敵だと思った。私は今までレコーディングをライヴでやったことがなかったんだけど、今回、彼の提案でライヴ・レコーディングをすることになったの。ドラマー二人、そしてギタリストやベーシストと一緒にレコーディングに臨んで、ヴォーカルの部分も含め、今までよりもさらに感情を込めることができたんじゃないかと思っているわ」
――リンダ・ぺリーとも作業していますね?
「これも、レーベル・マネジャーからの提案。最初、私のサウンドはリンダが手掛けてきた
P!NKや
クリスティーナ・アギレラとは違うし、あまり乗り気じゃなかったんだけど(笑)、そういったアーティストを手掛けているからといって、同様の音しか作れないと思うことは非常に偏狭な考えだと気づいたの。リンダは私と同じように
レッド・ツェッペリンの大ファンだし、今ではとても仲のいい友だちでありながら、よき先輩でもある。的確なアドバイスをくれるし、素晴らしいシンガー・ソングライターだし、とても尊敬しているわ」
――アフリカ民族音楽風のコーラスの要素を含む「ウマナック・ソング」が印象的です。この曲を1曲目にした理由は?
「私にとって、とても大切な曲なの。グリーンランドで“ケープ・フェアウェル”という(気候変動への対応を促がす)チャリティ・プロジェクトに、
ジャーヴィス・コッカーや
ファイスト、
坂本龍一といったアーティストや、彫刻家や研究者たちと参加したの。その時に、自分の力量や、今後どうすべきかを理解し、この曲が完成した。アルバム用に最初に書き上げた曲でもあり、氷山に囲まれた北極海に浮かぶ船のデッキ上で、ライフベストを叩きながら作ったの。私のトライバルな雄叫びも収録されているんだけど、今まで囚われていた商業的な枠から抜け出すきっかけとなった曲なのよ」
――「ゴールデン・フレームス」では、“流浪のブルースマン”と呼ばれる
シーシック・スティーヴと共演していますね?
「彼は素晴らしいギタリストだと思う。始まりは彼のアルバムでのコラボレーションだったんだけど、すごく仲よくなって。彼はグレッチ・ギターの3本の弦だけで雰囲気たっぷりのブルース風の音を奏でていた。私も彼に影響されてグレッチを買い、弦を4本取り除き2本だけで演奏し始めたんだけど、途中で彼のギターに描かれていた絵を思い出してストーリーを描き始めたの。そしてシーシックの太い、素晴らしい声がこの曲のコーラスにピッタリだと思ったし、彼のギターがすべての始まりだったから、彼に歌ってもらったのよ」
――今回のアルバムで、作曲でもレコーディングでも一番チャレンジしたのはどの曲ですか?
「そういう意味では〈ディフィカルティー〉かな。今までは〈サドゥンリー・アイ・シー〉のような、メロディとコーラスがある歌いやすい典型的なポップ・ソングを作ってきたけど、ジムと一緒にやることによって、より実験的で、美しい音風景を描き出す曲を作れるようになった。今まではジャズっぽい音だなと思えばジャズっぽい曲として仕上げていたけど、今回のアルバムでは特定のスタイルに囚われず、自分が作りたい音を作るようにした。今回は曲がどう聞こえるかによって個々の場所を想起させたかった。それぞれの曲にまったく新しい世界を与えたかったから。それが一番上手くできているのが〈ディフィカルティー〉だと思う。今までとはまったく違うサウンドに仕上がったから、すごく誇りに思っているのよ」
――ありがとうございました。またぜひ、日本でもライヴをやってくださいね。
「ベーシストのRej Ap Gwyneddと元
アッシュのギタリスト、シャーロット・ハザレイがバンドのメンバーとして加わったから、バンドの新しいサウンドもみんなに聴いてほしいと思っているの。楽しみにしててね!」
取材・文/伊藤なつみ(2010年8月)
『タイガー・スーツ』発売記念タンブラーをプレゼント!
鮮烈なデビュー以来、数々の音楽賞を獲得しながら独自のサウンドを追求してきた女性ロッカー、KTタンストール。プロデューサーにジム・アビス(アークティック・モンキーズ、カサビアンほか)を起用し、ゲストにロビン・ヒッチコックやシーシック・スティーヴらを迎えた最新アルバム『タイガー・スーツ』の発売を記念し、特製タンブラーをCDJournal.com読者3名様にプレゼントします。当サイトの
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