“聴いたことない人に音をぶつけてみたい”──凛として時雨、4thアルバム『still a Sigure virgin?』完成

凛として時雨   2010/09/17掲載
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 メジャー移籍アルバム『just A moment』から1年4ヵ月。その間、さいたまスーパーアリーナでの単独公演や、イギリスでの初の海外公演などを成功させ、日本のロック・シーンを牽引する存在になりつつある凛として時雨が、4thフル・アルバム『still a Sigure virgin?』を完成させた。ピアノのループが貫く「シャンディ」、12弦ギターからはじまる「this is is this?」、弾き語りに端を発した「eF」、345が切々と歌い上げる「illusion is mine」など、轟音=時雨というイメージに当てはまらない楽曲も、柔軟に自らの色に染め上げている。作詞作曲からエンジニアまで務めるTKを筆頭に、優れた表現力を持つバンドであることがわかる傑作。笑いの絶えないインタヴューに、その素顔を垣間見て欲しい。


――まず、アルバムを作り終えての率直な感想を、お一人ずつ伺えますか?
 ピエール中野 「凛として時雨らしい作品に仕上がったんで、早くみんなに聴いてもらいたいっていうのと、早くライヴがやりたいですね」
 345 「凄い9曲だなって思いましたね。曲作りの時って1曲1曲集中してるんで、並べてみて改めて凄いなって」
 TK 「僕は……6曲目の弾き語りの曲(『eF』)で、中野くんが遂にエレキ・ギター・デビューをしたんですよ。いつか出そうと思ってたんで、いよいよ今回」
 中野 「嘘でしょ(笑)!」
 TK 「(笑)早くライヴやりたいですね」
 中野 「座って弾こうとしてるんですけど」
 TK 「微動だにしないんで、要チェックですよ(笑)」
 345 「指先しか動かない(笑)」
 中野 「ギターは15年ブランクありますからね(笑)」
――(笑)。そもそもこのアイディアって、どこから出てきたんですか?
 TK 「そもそもは、今回ピアノの<シャンディ>とか、エディットする曲もあって、若干エレクトロニカっぽい要素があったんですけど、逆にシンプルになった時に、時雨のよさって出るのかなって思って、この曲では究極に削ぎ落として一本で弾いてみて。弾き語りってそれだけで完結しちゃったりするんですけど、僕もいつかは中野くんのギターで歌ってみたいって思ってたんで……」
 中野 「だから、嘘でしょ(笑)!」
 TK 「(笑)三人でやる方が、僕としてはより切なくなったし、光が見えるところもあって」
――作品ごとに、新しいことに挑戦していきたい気持ちもあるんですか?
 TK 「そうですね、それがお客さんにダイレクトに伝わるものじゃなくても、例えば中野くんがギター弾いてるところを見てみたいとか(笑)、そういうちょっとしたことが曲を作るきっかけになったりもして。違うベクトルから進めていくと、自分が思ってなかったフレーズが出てきたりとか。意外なところから物事が進むことは、時雨は昔からありますね」






――今回、他にそういうところから生まれた曲はありますか?
 TK 「……意外とないですね(笑)」
 中野 「そんだけ言っといて(笑)?」
 TK 「ただ、<シャンディ>に関しては、時雨でやるとは思ってなかったんですよ。元々息抜きみたいな感じでインストの曲を作ったりしていて、その延長線上でいくつか曲ができていて、プリプロの時に何となくスタジオで流しておいて、“何これ?”ってメンバーが反応してきたらやろうと思ったんです。そのくらいじゃないとやりたくないと思って。それで流してるところに、まんまと345が入り込んだんですね(笑)」
 345 「罠にハマった感じです(笑)。時雨の曲ではないなと思ったんですけど、凄いカッコよくて、“何これ何これ!?”って」
 TK 「よし、これは認められたんだって(笑)」
 345 「でも、それから、時雨でやるって言われた時にも、結構びっくりしました」
 TK 「大変でしたね。違うベクトルで作ってて、ある意味その状態で完成してたので。それを時雨のフォーマットに置き換えて構築し直しました」
――ピアノっていうのも新鮮ですよね。
 TK 「そうですね。時雨は何でもやれるんだなって、今回特に思いました。ピアノの音が元々すごい好きで、時雨らしくアウトプットできてよかったです」
――確かに、新鮮だけど自然なんですよね。あと、アルバム・タイトルも気になって。メタルっぽいところが(笑)。


 TK 「ありがとうございます(笑)。純粋に、聴いたことない人にも聴いてほしいっていうところはあって。イギリス・ツアーに行った時に、ちょっとしたきっかけがあって。そもそもイギリスに行ったのも、時雨を聴いたことない人に音をぶつけてみたいっていうところもあったんで、それが妙に自分の中でリンクしたんですよね」
――でも、さいたまスーパーアリーナやイギリス・ツアーっていう、いろんな経験を積んだ期間だったわけですもんね、今作ができるまでって。


 TK 「そうですね。意外と早くできました」
――早い……ですかね?


 TK 「2、3年空くと思ったんですよ。その感覚が人と激しくズレてると思う(笑)。単純にアルバムの作業は、自分自身を削り出す印象があったので、その割には、1年半ぶりって言われて、結構ちゃんと作ってるっていう(笑)」
――心身共に疲弊しますよね。


 中野 「楽しいですよ」
 TK 「楽しさがないとやってられないです(笑)」
 中野 「TKがブースにずっと入ってて、出てきた時に普通にみんなが心配して“お疲れ様”って言うじゃないですか。そうするとTKが“疲れてねぇよ!”って絶叫するっていう(笑)」
 TK 「お決まりのやり取りですけど(笑)」
 345 「3、4時間入ってるんですよ。びっくりしてるもんね、時間に」
――壮絶だなぁ。ライヴも、いろんな側面から楽しみにしてます(笑)。


 TK 「中野くんが弾き語ってたら一番面白いけどね(笑)」
 中野 「あのリフ弾きながら歌うんでしょ? キテるな(笑)」
 TK 「ぜひお楽しみに(笑)」
取材・文/高橋美穂(2010年8月)
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