祝来日!“マドンナ×クロスレビュー”!

マドンナ   2006/09/15掲載
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目の前に迫った来日公演を祝して、CDJスタッフが綴ります“マドンナ×クロスレビュー”特集! いちアーティストとして確固たる地位を築きあげた彼女を、様々な角度から検証&ズームイン!
 「私の秘密を話しましょう」なるタイトルも絶妙! ツアー・ドキュメンタリーDVD『アイム・ゴーイング・トゥ・テル・ユー・ア・シークレット』(2004年に開催された、リ・インヴェンション・ツアー時に制作)を何度となくリピートしては、約13年ぶりとなる来日公演に備える貴方へ発信致します、“来日記念 マドンナ×クロスレビュー”! 世界的ヒット作を連発、常に時代の先端をゆく彼女の歩んできた道のりとは……。マドンナの魅力を徹底解剖!


●〜活動初期にみるマドンナ〜

良くも悪くも80年代の質感が漂う音ではあるけれど、今でも恥ずかしくなく聴けるマドンナの初期アルバム群。『バーニング・アップ』でのダンス・チューンは、キュートさを兼ね備えたティーン・アイドルのような佇まいで、今となっては微笑ましいし、『ライク・ア・ヴァージン』は捨て曲なし、全曲シングル・カットしてもオッケーなその完成度の高さにびっくり。『トゥルー・ブルー』では自らプロデュースに参加。ヘヴィな内容の楽曲もサラリとこなし、アイドルからアーティストへ少しずつ変化していく。ティファニーデビー・ギブソンのようなティーン・アイドルが出現しても第一線を駆け抜けた、歌って踊れるポップ・アイコン、そして世界中のセックス・シンボル。これこそが初期マドンナ。「ラッキー・スター」なんていう歌を歌っていたけど、初期のマドンナはすべてが時代とマッチした、まさしく「ラッキー・スター」だったと思う。(千)



●〜『ベッドタイム・ストーリーズ』にみるマドンナ〜

“SEXで人は殺せるか”がキャッチコピーだった映画『BODY』、全世界の出版界に旋風を巻き起こしたヌード写真集『SEX』。日に日に増していった彼女の過激さもアルバム『エロティカ』でついにマックスを迎え、この『ベッドタイム・ストーリーズ』では一転して“脱エロティック”な方向へと進む。コマーシャルさに欠ける部分もあるためか、商業的には低迷してしまうのだが、自身の内面的なメッセージを込めた作風は、再び全盛期を迎えるその後の作品にも大きく影響を与えた意味合いもあり、その存在意義は高い。また『バラード・コレクション』収録の、マッシヴ・アタックとのコラボ曲、マーヴィン・ゲイ「アイ・ウォント・ユー」のカヴァーも、英クラブ・カルチャーとの相性の良さを認識させた意味で、大きなターニング・ポイントとなった1曲だ。どちらも派手なパフォーマンスを控え、内なる世界を表現した分岐的な作品として評価すべきであろう。(徳)



●〜『Ray Of Light』にみるマドンナ〜

ウィリアム・オービットらをプロデューサーに起用し大成功を収めた8枚目のアルバム。ポップ・カルチャーのイコンであり、聖母の名を実名に持つ“アバズレ”を演じ、肉体を耕し続けていたはずのマドンナが突然柔らかく内省的に変貌を遂げた、と評される作品。モノクロの画面イメージと手のひらに施されたヘナ・タトゥーが印象的で、秘密めいた美しいPVが記憶に残り、エキゾチックな弦楽器の音が神秘的な「FROZEN」、エッジの効いたアンビエント・ハウスのエッセンスをポップ・ミュージックに消化しきったトラックが耳に残る大ヒット曲「Ray Of Light」、挙句「Shanti/Ashtangi」ではブリンブリンにスペーシーなオービット節トラックにのせてサンスクリット語で祈りまで捧げてスピリチュアルな“気分”を提供してくれますが、やはりそこはマドンナ。必死に覗き込んでみてもその真意はなんともつかみ取れずもどかしさを残し、ポップの藻屑と消えていくのでした。マドンナの空虚こそが化け物であることを世に知らしめた怪盤。(服)



●〜『Confessions on a Dance Floor』にみるマドンナ〜

現時点での最新アルバムは2005年11月発表(当時47歳)の『コンフェッションズ・オン・ア・ダンスフロア』。全編ノンストップのダンス・チューンを収録し、レオタード姿で乱舞するPVも話題に。今年のワールドツアーでは十字架パフォーマンスが物議を醸しています。そんな彼女の紆余曲折(挑戦?)は、やがて思いのほか真っ直ぐに見返せる正しい生き様に感じられるようになり、結局は“何をやってもマドンナ”という一言に行き着くことになります。聴き手側は今後も、善悪の彼岸で繰り返される女王様プレイに心地よくだまされ続けていくのでしょう。もとを正せばイメージを喚起するための記号に過ぎないアーティスト名(本名にして聖母マリアの称号)に、いまさらながらハッとさせられます。(吉)



●〜ビデオ・クリップにみるマドンナ〜

デビュー当時から巨額のマネーをプロモーションに投じてきたマドンナ。その成果か否か、ミュージック・ビデオ界の風雲児クリス・カニンガムから「二度と一緒に仕事したくない」とザックリ言われてしまっている。ポジティブシンキングを貫くと、この言葉からはマドンナサイドのこだわりが生半可なものでないことが読み取れる。そんな輝かしい作品群の中、フランスの有名なフォトグラファー、Jean-Baptiste Mondinoがディレクションした「Hollywood」(2003)が、違う意味で注目を浴びてしまった。同じくフランスのフォトグラファー、Guy Bourdinが撮った写真にそっくりな映像を何カットも撮影してしまっているではないか。この行為は"オマージュ"ともとれるのだが、言語道断、訴えられてすんなり盗作を認めている。写真家の、写真家による、写真家のためのビデオ・クリップとなってしまったことは否めない。もはやポップスターのICONと化してしまったマドンナ、彼女を被写体にすることで、表現者は溢れやまないアイデアの極地に辿り着くことができるのであろう。(酒)



●〜映画『プリティ・リーグ』にみるマドンナ〜

第二次世界大戦真っ只中のアメリカにて誕生した“全米女子プロ野球リーグ(All-American Girls Professional Baseball League ※AAGPBL)”(1943〜54年)をモデルに……なんて話はさておき。1979年/公開の『堕天使』(後に『レイプ/マドンナ イン セックス』として流通)出演を皮切りにはじまったマドンナの“女優”としての出世作といえばもちろん『プリティ・リーグ』『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』(1991年)、『BODY/ボディ』(1992年)と、立て続けにスキャンダラスな作品をリリースした彼女へ賛否両論高まる中、敢えて“スポ根/社会派”ムービーへと進出したそのアティテュードに感服。ジーナ・デイヴィスロリ・ペティトム・ハンクス、個性溢れるキャストが名を連ねる中「すれっからしのダンサー上がり」なるキャラクターを演じる、楽しそうな笑顔が実に印象的。名匠ペニー・マーシャル『レナードの朝』)が描く生き生きとした姿が心地良い快作です。この経験が『スウェプト・アウェイ』『007/ダイ・アナザー・デイ』(カメオ出演)へと繋がっている……とは思いたくないのが人の常かと。(星)



●〜サントラにみるマドンナ〜

80年代中盤から、映画のサウンドトラック盤にはロック/ポップスの人気アーティストの曲を使用するのが当り前になってきた。マドンナくらいのビッグ・ネームともなると、やはりサントラの方面でも人気。まずファンが思い浮かべるのは、本人もカメオ出演している『ヴィジョン・クエスト 青春の賭け』(85年)のサントラ盤ではないだろうか。このアルバムに収録された「クレイジー・フォー・ユー」はシングル・カットされ、全米チャート1位を記録している。以降、映画絡みで全米1位を記録しているのは『フーズ・ザット・ガール』(87年)のタイトル・トラック、『プリティ・リーグ』(92年)からの「マイ・プレイグラウンド」。それ以外にも自身の出演作はもちろん、『007 ダイ・アナザー・デイ』(タイトル・トラック/2002年)から『オースティン・パワーズ デラックス』「ビューティフル・ストレンジャー」/99年)まで、提供した作品は多岐に渡っている。(敬)
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