いわゆる、ちょい不良オヤジ的なコッテリと贅を尽くしたものではなく、ある種、所ジョージにも合い通じる、肩の力が抜けたグッド・センスな大人の遊びゴコロ。真心ブラザーズのニュー・アルバム『DAZZLING SOUNDS』には、そんな“わかってる大人”の遊び心がそこかしこにちりばめられていて、まさに“きらめくサウンド”という作品タイトルそのままに、キラキラとまばゆい光を放っている。
「今作では、今までやっていないことだったり、やったことはあるけど、“もっといけるんじゃないか?”みたいなものに積極的に取り組んでいこうと思ったんです。危険を冒してでも遊んでみようって」(
桜井秀俊)
「それも(前作の)『FINE』があったから、できたことだと思うんですよ。長い目で僕らを見てもらえるような、そういう意味での安定感が前作で得られたことは本当にありがたいことで。だからこそ、今回のアルバムには、予定外のビックリな要素が入っていた方が面白いなと思ったんです」(
YO-KING)
桜井の手によるイイ味出しまくりのキッチュな打ち込みが導入された「家巣、愛無 OK!」「ちょう」「メッセージ」といった楽曲を筆頭に、YO-KINGいわく「
フィル・スペクター・サウンドを意識した」という美しいハーモニー・ワークが印象的な「ずっと遊ぼう」、そして
吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズを彷彿とさせる軽妙洒脱なジャンプ・ブルース「あれあれ、あの、あれ」など、ポップで耳馴染みのいい今までの真心カラーを踏襲しつつ、“おっ!”と思わせる新たな試みがさりげなく施された楽曲の数々。そう。アルバム・タイトルの『DAZZLING SOUNDS』は、“磨きがかかったサウンド”と読み替えることもできるのだ。
「たとえば〈あれあれ、あの、あれ〉みたいなジャンプ・ブルースっぽい曲とか、前だったら、やりたくてもできなかったような気がするんですよね。そういう意味では、やっと年相応になったのかな、と」(桜井)
「年齢を重ねることによって生まれる、なんともいえない“いなたさ”。それが、細野晴臣さん言うところの“おっちゃんのリズム”だとしたら、それを長続きさせるためにも、やっぱり僕は健康でありつづけなければいけないと思うんです。だって病気とかしたら、すぐに衰えちゃいそうでしょ」(YO-KING)
結成から18年、その時々の自分たちのトレンドに従って、しなやかに音楽的な変節をくり返してきた彼ら。いつでもヴィジョンはクリアに。そしてフットワークは軽く。そうした柔軟な姿勢も真心ブラザーズの音楽に瑞々しい感覚や風通しの良さをもたらしている、大きな要因の一つであると思うのだ。
「もともと洋服とかスニーカーとか、チャラチャラしたものが好きなので、そういうミーハーな感じも、そのまま出していければいいなって。この歳(40歳)になったら、枯れようと思えば、すぐに枯れられると思うし」(YO-KING)
「義太夫節をやってる知り合いに言われたんですけど、芸事でいちばん悪だとされるのは地味になることらしいんですよ。それを聞いて、“なるほどな”って。長くやってると求道者っぽく見られたり、地味な方向に向かっていきがちなんだけど、意識して、そこには行かないようにしたいですね。やっぱり芸事には華が必要だと思うので」(桜井)
取材・文/望月 哲(2007年10月)
【真心ブラザーズ 「DAZZLING SOUNDS TOUR」】 ●2007/11/30 Zepp Sendai
●2007/12/02 Zepp Sapporo
●2007/12/07 Zepp Nagoya
●2007/12/09 Zepp Fukuoka
●2007/12/10 CLUB QUATTRO
●2007/12/15 大阪府NHKホール
●2007/12/16 大阪府NHKホール
●2007/12/19 東京都・中野サンプラザ
●2007/12/20 東京都・中野サンプラザ
※詳細については
公式サイトにて