2月に発表されて各方面で話題を呼んでいる破壊専用ギター『SMASH』。本来、壊してはいけない、ギターという楽器をあえて破壊目的で作ってしまおうという荒唐無稽なアイディア、ギター界の常識を覆す5,000円という破壊的価格、過激なイメージとはウラハラの完全リサイクル対応など、さまざまな概念を破壊する『SMASH』について、“ギター破壊シーン”を愛してやまない超人気ギタリスト、
マーティ・フリードマンに語ってもらった。
──“破壊専用ギター”というアイディアを最初に聞いたとき一体どのような印象を持ちましたか?
マーティ・フリードマン(以下、同) 「かなり天才だと思いました。壊すためのギターなんて超カッコいいよ。もともと僕はほかのギタリストと違ってギターに対するコダワリが実はそれほどないんですね。一番優先してるのは楽器ではなくて音楽。僕が大事にしているのはエモーションの部分なんです。だから楽器そのものにはそれほど興味がなくて」
──ギターをたくさんを集めるようなタイプではないわけですね。
「数はたくさん持ってますよ。でもコレクトって気持ちじゃない。あくまで音楽を作る道具だと思ってます。だからギターを壊すってことにそれほど抵抗はないんです。もちろんお気に入りのギターや貰いもののギターは壊さないよ(笑)」
──実際、今までにライヴでギターを壊したことは?
「何度もあります。僕はライヴのときエキサイトして精一杯がんばるタイプだから最後は完全燃焼したいんですね。そのためにもギターを壊すのってすごく気分的にぴったりだし、お客さんの思い出にも残るじゃん。できれば毎回壊したいくらい」
──そういう意味で『SMASH』の登場は願ったり叶ったりというか。
「待ってましたって感じ! 5,000円っていう値段もいいよね。ライヴのクライマックスでギターを壊してお客さんを興奮させられる。それが5,000円でできるなんて、すごいお買い得だと思う。しかも女のコでも簡単に壊すことができるんでしょ? それってすごく大切なポイントですよ」
──といいますと。
「以前、ライヴでギターを壊したとき、そのギターがすごく頑丈で全然壊れなかったんですよ(笑)。10回くらいガンガン叩きつけても、全然、壊れない(笑)。だんだんお客さんも、“マーティ、何やってるの?”って感じになってきちゃって。なんか“超弱い男”みたいな(笑)。ツアー・ファイナルだったから、めちゃくちゃ恥ずかしかったです。だから簡単に壊れるっていうのは本当にうれしいことです。しかも壊したギターはリサイクルされるんでしょ? ストレス発散できて地球にも優しい。そんなの超最高じゃん」
──マーティさんにとって理想的なギター破壊プレイヤーは?
「やっぱり
KISSかな。KISSの前にもいろんなアーティストがギターを壊していると思うけど、正直、僕にはあんまりカッコ良く思えないんです。
THE WHOはちょっと怒りの気分を感じるし、
ジミヘンの場合はドラッグのやりすぎでギターを弾けなくなっちゃって壊しちゃったようなイメージ。どっちもネガティヴな感じだよね。でも、KISSがギターを壊すシーンは過激なんだけどグロリアスなんです。日本のヴィジュアル系バンドに近いというか、ライヴのクライマックスで紙吹雪が舞う中、ギターをカッコよく壊してくれるようなイメージ。すごくエキサイティングでエクスタシーで、観てるほうもスカッとした気持ちになるよね」
「超過激。アンドリューは50年代に活躍したロックンロール・ピアニストの
ジェリー・リー・ルイスの大ファンなんです。ジェリー・リーもピアノに火を点けたり過激なパフォーマンスをやってた人だから、彼はそういうところにもすごく影響を受けてるんだと思う」
──アンドリューとはどんな経緯で知り合ったんですか?
「もともと僕が彼の大ファンだったんです。好き過ぎていつか共演したいなと思っていたら、僕がやっていた『ROCK FUJIYAMA』という番組にゲストで来てくれて。その後、彼のライヴに僕が飛び入りしたりして仲良くなっていきました」
──一緒にレコーディングしてみていかがでしたか?
「すごく楽しかった。アンドリューも日本が大好きだから、今回の曲には僕ら二人の味がよく出てると思います。できあがった曲を聴いてみてもノリがすごく日本っぽい。たぶん聴いた人も僕らみたいなバタくさい外人が作ったとは思わないんじゃないかな」
──今後もアンドリューとのコラボは続けていきたいですか?
「もちろん。今も二人でいろんなアイディアを交換してるところです。できれば、また一緒にライヴもやってみたい。そのときには彼のピアノに僕がギターを叩きつけて壊すシーンが実現するかもしれないね(笑)」
取材・文/望月 哲(2010年2月)
撮影/高木あつ子
●『SMASH』の5大ポイント!
破壊専用ギター『SMASH』
(販売元:株式会社 K’S JAPAN / 税別5,000円) ポイント1:特殊空洞ボディ中央は普通のギターと同じ材木ですが、両端が空洞の特殊構造により、叩きつけたとき、両端が思い切り飛び散りつつも、心臓部の電気系統は保護。修理・リサイクルが簡単にできます。
ポイント2:軽量ボディ意外とギターは振りかざすと重いもの。そこで、ギターとしては極端に軽い木材を使用。ステージ上でカッコ良くギターを破壊できます。
ポイント3:破壊的価格とはいえ、高価なギターを壊すなんて……とお思いの方。大丈夫です。『SMASH』はたったの5,000円。ロッカーだけでなく、ストレス解消として一般の方にもお買い求めやすい破壊的価格となっています。
ポイント4:リサイクル・システム破壊後のギターを工場に送り返してもらえれば、100%リサイクルされ新しいギターとして生まれ変わります。地球にも優しいエコ・システム。
ポイント5:破壊的なサウンド壊すためのギターでもあるので音も破壊的! ご了承ください。
【マーティ・フリードマン PROFILE】CACOPHONY(カコフォニー)などのバンド活動を経て、1990年にMEGADETH(メガデス)に加入。MEGADETHのツアーで来日を重ねるうちに日本通となり独学で日本語の勉強を始め、アリゾナ州立大学の日本語弁論大会で2位になるまで上達する。MEGADETH脱退後、2004年に活動の拠点をアメリカから日本・東京へと移す。2005年からテレビ東京で放送された伝説のロック・バラエティ番組『ヘビメタさん』にメインのレギュラー出演者として登場し、日本国内のヘヴィメタル・ファンだけではなくYouTubeを通じて世界のヘヴィメタル・ファンを驚かせた。続編レギュラー番組『ROCK FUJIYAMA』は世界各国で話題の番組となる。現在、ギタリスト・作曲家・プロデューサーだけに留まらず、テレビ・ラジオ・CM・映画など、さまざまな角度でマルチ・アーティストとして活動している。
●オフィシャル・サイト:
http://www.martyfan.com/