――今日は松井さんのソロ・アルバムのお話も聞きたいんですけど、その前に東京女子流の「Partition Love」のお話から伺っていきたいなと思います。そもそもBase Ball Bearの小出祐介さんが作詞作曲で関わることになったのってどういうきかっけなんですか?
松井 「そこはよくわからないんですけど……(笑)。あの、僕がアレンジしました」
――はしょりすぎじゃないですか(笑)! 小出さんとの最初の接点は『B.L.T.』の対談(2012年1月号:小出の連載『完全在宅主義者』)ですよね。
松井 「そうです。それが最初で」
――そのときは制作の話は全然なかったんですか?
松井 「それよりも、(小出さんが)〈ヒマワリと星屑〉のギターを弾きたいっていう話で盛り上がって」
――その対談で小出さんと繋がりができて。制作に関しては、どういうふうに進行していったんですか。
松井 「ガレージバンド(音楽制作ソフト)で小出君がデモを作ってきてくれて、デモに仮歌が入ってて、それを聴いて“あぁいい歌だな”と思って」
――その時点で歌詞は入ってたんですか?
松井 「割と完成形に近い歌詞が入ってました」
――小出さんの声のまんまですか?
松井 「そうです」
――ピッチとかも変えずに?
松井 「はい。いつもアレンジするときって、僕は歌データを貰うんですよ。そのデータを女子流のキーに合わせてアレンジを始めるんです。だから、リミックスしてる感じに近いかな」
――じゃあ元の仮歌とキーは違うんですか?
松井 「違います」
――普通に男性ヴォーカルの曲みたいな感じで作っていくんですね。
松井 「そうそう。仮歌のキーのトップを(女子流のキーに)合わせて、アレンジをはじめます」
――トップっていうのは、彼女たちが出せる一番高いキーですね。他の作家さんのデモと比べて違いとか、特徴とかって何かありましたか?
松井 「曲が本当にいいなっていう。歌ってる人が作ったものだなっていうのは感じました」
――そういうのって違ったりするんですか?
松井 「最近はコンペとかあったりするから。東京女子流に限ったことではなくて、おそらく
AKB48もそうだと思うんだけど、100曲の中から1曲を選ぶみたいな。そうすると、どうしても既製品の匂いがするっていうか。でも、今回みたいな場合ってオートクチュールじゃないですか」
――女子流のために作った曲ですもんね。
松井 「だから、すごくいい」
――仕上がりに関してはいかがですか?
松井 「グッドですよ」
――作っていく上で大変だったことってあるんですか?
松井 「それはあんまりないんですけど。って言ったら全然苦労してないように取られますけどそんなことはなくて、やれることを全部やるっていう……他のクリエイターの方って結構物語があったりするんだけど、僕は、まったくないんで。ホントにすいません(笑)」
『Mirrorball Flare』
――では、ソロ・アルバムの話に移りましょう。松井さんのソロ・アルバムが3月12日にリリースされるということで。制作のきっかけとして、「死を意識しはじめた」というような話をブログで書かれていました。
松井 「ここ最近、仲のよかったDJとか、同世代のクリエイターに色々あったりとか。風邪ひいたりとかすると、昔はすぐ治ったんですけど、こうやって人間って朽ちて死んでいくんだなって、最近、肉体をもってわかるようになってきて」
――だんだん治るスピードが遅くなってきたり(笑)。
松井 「そうそう。だるーいみたいな。ちょっと用意しないとマズいかなと(笑)」
――ソロ・アルバムは、以前から作ろうとは思っていたんですよね。
松井 「そうですね。自費で好きなものを作りたいなとは思っていて。周りにいる仲のいい友達にも、手伝ってねって話はしてました」
――アルバムとしては『CALL YOU BACK』以来ですか?
松井 「そうです」
――『CALL YOU BACK』は91年発表ですよね。あの作品はどういう感じで話が進んでいったんですか。
松井 「当時、ゲリラ的に、ハウスの12インチのアナログを何枚か出したんですよ。それが海外リリースされたり、ビルボードに載ったりとかして。その流れでリリースの話をもらって。半分企画モノっぽくしてほしいみたいな」
――「スパイ大作戦」のカヴァーとか入ってましたよね。
松井 「そうそう。だから、そんなに自分が全部考えてやったって感じではなくて」
――じゃあ実質的には今回の作品が、初のオリジナル・アルバムという位置づけになるんでしょうか。
松井 「そうですね」
――自主制作で出そうと思ってたところを、エイベックスから出すことになった経緯は?
松井 「ずっと
MISIAを一緒にやってた与田春生ちゃん(※MISIA、
AI、
加藤ミリヤらを手がけた音楽プロデューサー)っていう人がいて、彼と話してるときに、“ところで、どこから出すの?”っていう話になって。“いや、自主で出そうと思ってるけど”って言ったら、“じゃあ、女子流のツアーに段ボール持ってって自分で売るの?”って言われて」
――自主制作ですからね(笑)。
松井 「それはまずいなと思って、慌ててS竹さん(東京女子流A&R)に相談したっていう」
――松井さんが手売りしてる姿も見たいですけどね(笑)。全曲ではないですけど、僕もアルバムの音源を何曲か聴かせてもらって。バラエティに富んだっていうのは単純な言い方ですけど、かなり、いろんな要素を詰め込んだ作品になっているなと思いました。
松井 「そうですね。最初は現代音楽を集めた1枚と、いわゆるビートがあるポップスとかジャズを集めた1枚っていう、2枚の作品を作ろうと思ってたんですけど、それをギュッと1枚にまとめたらこういう感じになりました」
――現代音楽っていうのがポイントになっていて。松井寛さんのソロ・アルバムだったら、やっぱりハウシーなものやディスコっぽいものが中心になると思ってたんですけど、ミニマル・ミュージックとか現代音楽の要素がかなり入っていて、びっくりしたんですよ。
松井 「たとえば現代音楽とか、(ポップミュージックのフィールドで)今まで手付かずになってるジャンルがあると思うんですけど、こんなに面白いのに、なんでみんなここにいかないんだろうっていうのが前から不思議で」
――松井さんは現代音楽とダンス・ミュージックを並列に捉えているんですか?
松井 「ダンス・ミュージックって、音楽を知らない人が実験的なことをやってるようなところもあるじゃないですか。コードわかんないけど作りました、とか。現代音楽はわかってる人がどうやって既成概念を壊すかっていうところが裏テーマであったりするんで、その部分って結構重なってると思うんですよね。これだけいろんなジャンルが出てくると、手付かずで残ってるジャンルって希少価値が高いと思うんです」
――そこに今までやってきたものと合わせて切り込んでいこうかな、と。
松井 「そんな大げさなことじゃないんですけど、単にやってみたかったっていう」
――今回のアルバムには、たくさんのゲストが参加されていて。Twitterでご覧になった方もいるかもしれないんですけど、LinQの姫崎(愛未)さんが参加されたりとか、あとは某ラッパーさん。 ――ラップをフィチャーした曲(〈Univarse of Love〉)はどういうイメージで作ったんですか?
松井 「もともとは、
バリー・ホワイトっぽい世界観を焼き直したいと思って。70年代の黒人音楽って、間違った宇宙感とか未来感ってあるじゃないですか。ギターからレーザー光線が出ちゃったりとか」
――Pファンクとか。
松井 「そうです。バリー・ホワイトの曲で自分で喋ってるやつがあって、“これを日本語でやったらどうなるのかな?”っていうのが最初ですかね」
――ヒップホップ的なアプローチとはちょっと違う感じになってるっていうか。バリー・ホワイト出発だからこういう雰囲気になってるんですかね。
松井 「そうですね。某ラッパーさんは僕と同世代だから。子供の頃に観てたアニメも『宇宙戦艦ヤマト』とか、宇宙ものだったりするじゃないですか。だから、こんな感じだよねっていうイメージは共通認識としてあって。たとえばプラネタリムで流れてるナレーションも、ある種、ラップじゃないですか」
――なるほど!
松井 「そういうちょっとファンタジーとか夢のある話でラップしてほしいなっていう」
――仕上がり的にはどうですか?
松井 「もう大満足でございます」
――姫崎さんが参加された曲も意外なアプローチだなと思ったんです。喋りが入った曲で。これはそもそもどういうきっかけですか?
松井 「もともとは、
斉藤和義さんの〈幸福な朝食 退屈な夕食〉みたいな曲をアイドルっていうか声優さんの声でやりたいなと思って。あとはフジテレビで日曜の午後にやってるノンフィクション番組で渋谷の家出少女を追ったやつとか、ああいうイメージですね。本当の東京みたいな。外からじゃなくて頭の中で女子高生が思ってることを表現できないかなっていうのが最初ですかね」
――アイドル的な声の使い方ではなくて。大人な雰囲気って言ったらいいんですかね。
松井 「たとえばアラーキー(荒木経惟)さんの写真とか見るとドキッとするじゃないですか。なんで音楽ではそういう表現がないんだろうっていうのもあったりして。割りとイメージどおりに上手くいったんじゃないかと」
――松井さんがtwitterで写真をアップしたりするから、それで制作の進行がわかるんですよね(笑)。僕はソロ・アルバムを作ってることを全然知らなかったんですけど、東京女子流と一緒にスタジオに入ってる写真をアップされてて、あっと思ったんです。松井さんって女子流の曲をアレンジされてますけど、ヴォーカル録りには参加しないんですよね。
松井 「無理」
――ははは。
松井 「専門の人がいるんだもん」
――なのにスタジオに入ってるから、“これは?”と思ったんですよ。
松井 「なるほど。行きがかり上、さすがにいないと、ちょっとね」
――女子流の話は後ほどお聞きしたいと思います。「Bogota」はドラムブレイクのみで構成されてるような曲ですよね。これはどうして作ろうと思ったんですか?
松井 「パラメーターどこまでイジれるんだろうって(笑)」
――すごい曲ですよね。しかも長尺で。
松井 「与田春生ちゃんからは長すぎると言われましたけど(笑)」
――今回のアルバムは長い曲が多いんですよね。
松井 「僕の中で3分半とか4分の歌謡曲のフォーマットって、物足りなかったりするんですよね」
――やっぱり7、8分あったほうが。
松井 「そう。12インチ買いたい系だったんで」
――これ聴いてみましょうか。
松井 「どうぞ(笑)」
――この曲のタイトルの読み方は「ボゴタ」でいいんですか?
松井 「ボゴタです。コロンビアの首都で」
(曲が流れる)
――こんな感じで、ドラムのブレイクで7、8分続いていくんですよね。これもある意味現代音楽的というか、アプローチ的にはポップ・ソングとは全然違うところにありますよね。
松井 「ジャズのカテゴリーだと、こういう曲って結構あるんですよね」
――なるほど。今回の作品には昔書いた曲も入ってたりするんですか?
松井 「頭の中で残してたものとか、打ち込んで終わりのものもあるし、譜面まで書かないと整理できないものがあったりして。今回はやるんだったらちゃんとやります、みたいな」
――逆に、プライヴェートではなく仕事で書いてたけど、フィニッシュまで持っていかなかったみたいな曲もあったりするんですか。
松井 「この中では、名前は言えないけど一曲ありますね」
――ちなみに女子流が歌ってる曲は、いつぐらいに書いたんですか?
松井 「東京女子流に歌ってもらった〈Paint in Black〉は、発売日が決まってから作りました」
――そうなんですか。
松井 「やっぱり売れる要素を入れないと(笑)」
――(笑)。女子流に書くのと自分の作品で女子流に歌ってもらうのとは、ちょっと違ったりするんじゃないですか?
松井 「どうだろう。あんま変わらないですけど。しいて言えば、Royal Mirrorball Mixって長いじゃないですか。無意味に」
――無意味にってことはないですけど(笑)。
松井 「自分の曲では、そういう感じを残したかったんですよ」
――確かに長いですよねこの曲も。ポップ・ソングの体はしてるんですけど、7分くらいありますよね。
松井 「はい」
――いつもの女子流の曲では土方隆行さんがギターを弾いてますけど、このアルバムではギタリストがそれぞれ違ったりするじゃないですか。そのあたりに関しては。 松井 「そうですね。僕、ギターが弾けないんで、洋食を食べたい時は洋食屋さんに、和食を食べたいときは和食屋さんに、みたいな感じに近いんです」
『Royal Mirrorball Discotheque』
――ソロ・アルバムは、東京女子流に提供したRoyal Mirrorball MixのミックスCDとの2枚組でリリースされるわけですけど、そもそもRoyal Mirrorball MixのミックスCDを作ろうと思ったのはどういう流れなんですか?
松井 「もともとRoyal Mirrorball MixのアルバムをS竹さんが作ろうとしていて、そしたら、付けちゃおうかとS竹さんのアイデアです」
――ミックスにしようと思ったのは?
松井 「すでに20曲近くRoyal Mirrorball Mixがあって、全部入れたいというところからノンストップMIXになりました」
――そこで松井さんの旧友であり、長く付き合いのある木村コウさん(KO KIMURA)にミックスをお願いしようと。お話を聞いてビックリしたんですけど、木村さんは歌詞の繋がりを考えてミックスしてるんですよね。
松井 「コウちゃんは、なにげにホンモノのオタクなんで。MOGRAでアニソンだけでDJやってるでしょ、あの人。方やヒップホップでメジャー・フォースの連中とやってたりとか。ホンモノのオタクですよね。そういう意味では任せてすごく安心」
――仕上がりを聴いていかがですか?
松井 「もう大満足。たぶん自分で繋げたらこうはならないだろうなって」
――松井さんご自身が作るっていうのも可能性としてはあったわけじゃないですか。でも、あえて木村さんに頼んだっていう。
松井 「このミックスはちゃんとやらないと、ファンの人も、何回も聴くものだと思うんです。アルバムだと、嫌いな曲を飛ばして聴かない人もいるかも知れないけど、たとえば車で聴いたり、通勤 / 通学とか、ポイントを抑えないといけないから、俺じゃ無理だなと思って。それでコウちゃんに電話して、よろしくみたいな感じですね」
――ミックスCDには「Get The Star」と「Last Forever」のRoyal Mirrorball Mixが2曲入ってるんですよね。その2曲のリミックスはいかがでしたか?
松井 「両方とも女子流に合った曲だなって。僕、オリジナルには関わってないので」
――そうですよね。普段の女子流のシングルでは、オリジナルのアレンジを手掛けてから、さらにリミックスもやるわけじゃないですか。それとは行程が違いますよね。
松井 「やる内容は同じで、なるべく自分が美味しいなと思うところをどれだけ入れられるかっていう。当然、彼女たちに合う合わないっていうのも判断してるんですけど」
――じゃあこれもスンナリじゃないですけど、いつもの作業の通りみたいな。
松井 「そうですね」
――一回アレンジしたものをもう一回リミックスするのはすごい大変じゃないかと思うんですけど。
松井 「大変です(即答)。アレンジャーの中間試験を受けてる感じ。“これどうすんの? 松井くん“みたいな」
――だってアレンジの時点で100点のものを作るわけじゃないですか。
松井 「100点はないですけどね(笑)」
――でも自分的に納得のいくものを作られた後に、さらにもう一回、リミックスしなきゃいけないわけですよね。
松井 「もう慣れました(笑)」
――アルバムに話を戻して、「Count Three」という楽曲の話をしたいと思うんですけど、これはすごく松井さんらしい曲だなと思ったんです。男性ヴォーカルをフィーチャーしたディスコっぽい曲で。
松井 「なんだろう。自分のなかではハードボイルドっていう」
――これもワンコーラスくらい聴きましょうか。
(曲が流れる)
――僕らが思う松井さんっていうイメージの曲ですよね。松井さんが作るポップ・ソングがいちばんストレートに出てる曲かなと思うんですけど。
松井 「単純に『ルパン3世』の主題歌みたいな曲をやってみたくて。ないじゃないですか、最近こういうの」
――そうですね。
松井 「ないものやりたかったっていうのもちょっとあって。突き抜けて、“楽しかった!”みたいな」
――今回のアルバムって制作期間はトータルでどれくらいなんですか?
松井 「取り掛かってから3年くらいかな。表の仕事、リミックスとかアレンジとかやって、その合間に8小節とか作っておいて、みたいな」
――やっぱり自分名義の作品だと、他アーティストの作業とは、かかる体力とかも違う感じでしたか?
松井 「いちばん思ったのが、“決められない”っていうことですね」
――たとえば音色とか、何をするにせよ、決断しなきゃいけない部分がいっぱい出てきますからね。
松井 「人のことだとスパスパ決められるんですね。アーティストさんとかにも、待てない性格だから“早くしてくれる?”とか急かしてばっかりだったんですけど、自分の作品になると、“Aにします? Bにします? あとにしましょう”みたいな感じで。こんなに決められないんだと思って。アーティストさんたちに心ない言葉をかけてきたのが全部、自分に返ってきた感じですね」
――これからアーティストさんと作業する時は。
松井 「待ちますよ(笑)」
――“そうだよねー、迷うよねー”って(笑)。
松井 「“迷っていいんだよ”って」
――東京女子流さんが参加した「Paint in Black」についてもお話ししたいなと思うんですけど、せっかくメンバーさんが来てるんで呼んでみましょうか。東京女子流の皆さんどうぞ。
(女子流登場。時間の都合で新井は欠席)
女子流 「松井さーん! いえーい!(松井さんに群がる)」
松井 「うるさい!」
中江 「松井さん帽子おっきいんじゃないですか?」
松井 「うるさいよ!」
中江 「ずっと見てたら下がってきてたもん」
松井 「いつも8ってサイズを買ってるんですけど、こんなにばらつきがあるとは思わなかった」
中江 「松井さんって、すごい格好かわいいですよね。膝下の短パンとかよく穿くじゃないですか。生足を出すのはいいと思いますよ」
松井 「デブってて暑いからだよ(笑)」
(女子流メンバー、席に座る)
小西 「松井さんの隣だ!」
庄司 「わたしもそこがいい!」
――松井さん、真ん中に座られたらいいんじゃないですか? 握手会の練習としてセンターのポジションに。
(松井さん、センターに席替え)
小西 「こういうユニットみたいですね」
――松井さんすっごい悪そうですね。完全にギャングですよ(笑)。
松井 「みんなこの絵を見て笑いたいだけでしょ(笑)」
――みなさん、「Paint in Black」の歌入れはどうでしたか? 松井さんがスタジオにいていつもと違う感じがした?
小西 「歌入れで、松井さんがスタジオにいてくれるのが初めてだったので」
山邉 「でも、松井さんとお話すると楽しいから。レコーディング前に松井さんとお話して、楽しい気持ちになってから歌入れできました」
庄司 「あと、アイスが」
全員 「アイス、アイスー!」
――アイス? それはなんですか?
山邉 「松井さんが高級なアイスを買ってきてくれたんですよ」
中江 「それが、すごく美味しくて!」
松井 「単にアイス食いたいだけじゃねぇか!」
――100円とかのじゃなくて。
小西 「もっと高級な」
松井 「コンビニで、ハーゲンダッツとかで新商品が出ると食わずにはいられない」
――音楽の話から急にキャッキャしたトークに(笑)。とりあえず印象に残ってるエピソードはアイス?
全員 「はい!」
松井 「アイス買ってきて、ひとりで食ってると、みんな欲しがるだろうと思って」
――アイスを食べて、みんなも機嫌よくなって。
中江 「食べ物与えるとゴキゲンになるから」
庄司 「あと、お年玉をいただきました」
全員 「そうなんですー!」
中江 「私の入れ物には“ハタチ”って書いてて」
松井 「だって自称ハタチでしょ?」
中江 「それけっこう古い話ですよ」
(会場笑)
山邉 「入れ物もかわいくて、プリキュアなんですよ!」
庄司 「かわいかった」
松井 「下のコンビニで売ってました(笑)」
中江 「松井さんがあれを買ってるところを想像すると」
山邉 「松井さんは、ほんとに優しいんです」
松井 「お前らに厳しくしてもしょうがないだろ(笑)」
山邉 「いつも優しい言葉をかけてくれるので、ちょっと落ち着いてできるというか。ライヴのリハとか、いつも緊張するんですよ。空気が静かだし。やばい、この緊張感みたいな感じなんですけど、松井さんがいるときは、いつもよりか穏やかです」
――さっき松井さんは、東京女子流用に曲を用意するのと、自分の作品で東京女子流に歌ってもらうのは、あまり違わないって言ってたけど、みんなはどうですか? あんま変わりない?
中江 「そうですね。大人の女の人っていう歌い方だったので、難しいと思ったんですけど、松井さんらしい曲だな、と思いました」
――それでは、聴いてみましょうか。
中江 「え!? 聴くの!?」
庄司 「聞いてなかった」
――せっかくだから山邉さんに曲フリしてもらいましょうか。
山邉 「……あれですか? タイトルが出てこない」
松井 「べーやま、大丈夫? べーやま、大丈夫!?」
――むしろ、べーやまさんに想像で言ってもらいますか?
(山邉、メンバーに曲名を確認。納得のいっていない表情)
――ぜんぜんしっくり来てないじゃないですか(笑)!
山邉 「あ、はい(笑)。でも私、英語の発音悪いんで、全員で」
全員 「それでは聞いてください! 〈Paint in Black〉」
(曲が流れる)
小西 「(イントロを聴いて)こんな感じでしたっけ?」
庄司 「変わりました?」
松井 「聴いてないだけでしょ。歌入れするとき、こんな最初から出さないから!」
小西 「(歌の直前が流れて)これです!」
(曲が終わる)
――こんな感じで7分間続くという。
庄司 「7分もあるんですか!?」
山邉 「長い! 7分かぁ」
――そこが女子流の曲との一番の違いじゃないかと思うんですけど。
山邉 「でも女子流の曲でも7分くらいの曲が」
小西 「一曲しかないんじゃない?」
山邉 「〈LolitA☆Strawberry in summer〉は7分ぐらいあるよね」
小西 「長いですね。なんでですか?」
松井 「よくわかりません(笑)」
中江 「この曲、今までの女子流にない感じじゃない? また新しい感じっていうか」
小西 「オシャンティーな感じ」
庄司 「レコーディング、めっちゃ難しかった」
――リズムが難しいってこと?
小西 「リズムも難しいし、なんかいつも以上に難しかった。息吸うところとか」
――松井さんが作曲まで手掛けること自体、女子流作品ではそこまで多くはないですよね。作曲も、となると3rdアルバム『約束』に収録された「月とサヨウナラ」以来ですか?
松井 「たぶんそうだと思う」
――最後に〈Royal Mirrorball Discotheque〉ツアーのお話も。このツアーは全曲、リミックス音源だけでやるんですよね。今、内容を詰めてる感じ?
全員 「これからです」
――振りとかも変わってくるでしょ?
山邉 「はい。リミックスってことで振りが全部変わるんで、頭に入るか心配です。ツアーって今まで20何曲とかあったりしたので、それが一気に頭に入るのかが不安過ぎて」
庄司 「ほんとに不安です」
――ある意味ゼロからの作業に近いわけですからね。
山邉 「この間、S竹さんとツアーの話したら、“S竹も時間なさすぎてお腹がいたいよ”って言ってて」
――S竹さん自分で自分のことS竹っていうんですか!?
(会場笑)
山邉 「自分でS竹って言います」
小西 「わたしたちはもっとお腹痛いです。大丈夫なのかって」
――じゃあ松井さんもツアーに一緒について回って、手売りして、握手したり(笑)。
松井 「いや、いいです(笑)」
山邉 「ツアーファイナルは日比谷野外音楽堂なんですけど、そこは生バンドなので、松井さんに参加してもらって」
松井 「弾かないよ、俺(笑)。弾くの苦手だって言ってんじゃん」
山邉 「なんでですか」
中江 「えー! 嘘だー!」
山邉 「でも、松井さんは、確かに、リハーサルとか終わるとすぐ帰っちゃう」
中江 「そう! 終わった瞬間もう帰ってる」
小西 「だから、今みたくこんなに喋れなかったんですよ。昔は本当に遠い存在だと思ってたんですよ」
山邉 「いつも、“俺もう帰るね”って感じだったから、最初、松井さんが怖くてしょうがなくて。喋れないと思ってました」
松井 「そうなの? そんなイメージだったんだ」
庄司 「だってすぐ帰っちゃうから」
松井 「用事がないから、それは帰るよ(笑)」
小西 「他のミュージシャンの方たちは結構残ってくださってたから」
中江 「やっぱり、松井さんは偉い人なんだなって」
松井 「リハって2日に1回とか会うんだから別に話すことないだろ。何話すんだよ(笑)」
山邉 「もっと仲を深めるために」
松井 「期待してないでしょ、だって。ジジイの話、聞いて楽しい?」
中江 「子供だからかまってほしかったんですよ」
松井 「そういう風に言って下さい、じゃあ」
――今ではすっかり、松井さんのお茶目さがメンバーにも伝わって。
松井 「お茶目って(笑)」
中江 「今だったらそういうのもわかるけど」
――だから照れなんですよね。
中江 「照れくさかったんですか?」
松井 「帰った理由? いやほんとに帰りたかったから」
(会場笑)
――でも、せっかくだからツアーにも参加してほしいですよね。
庄司 「してほしい」
山邉 「来て下さい!」
松井 「じゃあ観にいくよ」
庄司 「違う違う(笑)! 参加してください」
山邉 「松井さんの握手会みたいなのやればいいんじゃないですか?」
中江 「メンバー全員行きますよ」
松井 「サイン会はね、ゴム印買ったから大丈夫」
(会場笑)
松井 「『ファントム・オブ・パラダイス』のスワン以降、悪徳プロデューサーはゴム印って決まってるでしょう」
――あはは(笑)。じゃあツアーでゴム印を持ち歩いて下さい。
松井 「持ってますよ。あとはハンズで、キラキラしたスタンプ台買えば」
――じゃあ、みなさんもアルバムを買って、松井さんを見つけたらゴム印押してもらいましょう。今日は、こんなところでしょうか。この後、松井さんも交えた握手会があるんですけど、松井さん、握手会は人生初ですか?
松井 「……そうですね」
中江 「え!? すごーい! 握手会やるんですか?」
庄司 「ひとみの代わりに?(やはり時間の都合で新井は握手会欠席)」
中江 「今からあるんだ!」
――松井さんも“ひーちゃん”ですから。
松井さん(a.k.a.ひーちゃん)初握手の図
中江 「うわー! 新しい!」
全員 「ひーちゃんー!」
松井 「……」
庄司 「握手してもらうみなさんも緊張してると思う」
――推し変されたらどうします? 松井さん、意外に握手の対応いいみたいな。
小西 「やだやだ!」
庄司 「どうしよー!」
中江 「意外とキュートみたいな(笑)」
松井 「……」
――あはは。今日はありがとうございました!
開演前に新井ひーちゃんを交えパチリ
取材・文 / 南波一海(2014年2月)
写真協力 / 土屋恵介