デンマークのロック・シーンを代表するバンド、ミュー。2年ぶりの新作『ヴィジュアルズ』は、前作『+-』のツアー中に曲を書き、彼らにしては短期間で作り上げられた。躍動感あふれるバンド・サウンドで疾走しながら、持ち前のファンタジックな音作りも光る本作は、バンドの今を切り取ったスナップショットのようなみずみずしいアルバムだ。メンバーのヨーナス・ビエーレ(vo, g)とヨハン・ウォーラート(b)に、アルバムの生まれた背景について話を訊いた。
――今回のアルバムの曲の多くはツアー中に書かれたものらしいですね。
ヨーナス 「うん。初めてやってみたんだ。いつもなら、ツアー中に曲を書く元気なんて残ってないからね(笑)。前回のツアーは6年ぶりのアルバムに伴うものだったから、ゆっくり休めてみんな元気だった。ツアーも楽しかったし、ライヴの高揚感や観客のリアクションを感じながら曲を書いたことが、曲の方向性に影響を与えているんじゃないかな」
――これまでに比べて、短期間で曲を仕上げたのもツアーの影響ですか。
ヨーナス 「ツアーから戻って、その勢いで曲を作り始めたんだ。このエネルギーをアルバムに反映させられるんじゃないかと思ってね。これまでは、レコーディング中に“これで大丈夫なんだろうか”とか、いろんなことに疑問を持ってしまってなかなか前に進めなかった。でも、今回は考えすぎないで、その場の勢いに任せて曲を仕上げることにしたら、曲が意志を持ったように自然に完成していったんだ。でも、いつもどおり音作りにはこだわっているよ。音を重ねたり、アレンジを工夫したり、初めてフィールド・レコーディング的なこともやってみた。ただ、あまり考えすぎないことを心がけたんだ。あと、僕たちが10代の頃に影響を受けた音楽が表面化してきた部分もあったね。インテリジェントな80年代ポップ・ミュージックの要素が」
――“インテリジェントな80年代ポップ・ミュージック”というと?
ヨーナス 「たとえば、ケイト・ブッシュ、プリファブ・スプラウト、スクリッティ・ポリッティ、ティアーズ・フォー・フィアーズ、デペッシュ・モード、トーキング・ヘッズ……彼らは僕らが共通して好きなミュージシャンなんだ」
――たしかに彼らの音楽はミューのサウンドに通じるものがありますね。そういえば今回、曲作りの際にヴィジュアル・イメージを大切にしたそうですが、それはどういうことなのでしょうか。
ヨーナス 「“この曲はどういう色合いかな?”とか“この曲を絵に描いたらどうふうになるだろう?”とか、そういうことを考えながら曲を作っていった。白紙の状態から曲を書くのは大変だから、発想のとっかかりとして何かイメージを思い描きながら書くことがけっこうあって。曲が一種のヴィジュアル・ストーリーになっているんだ」
ヨハン 「僕らは曲づくりにかぎらず、色にたとえて話をすることがよくある。曲にイマジネーションが膨らむような要素がほしい時に、“もっとギターがほしい”とか“ドラムが必要だ”みたいな具体的な言い方じゃなく、“もっと色がほしい”って言ったりしてね。音のダイナミクスとか変化とか、そういう“色”を大切にすることが僕らの強みだと思っているんだ」
――ヨハンは一度バンドを脱退して、前作で復帰しました。それだけに、客観的にバンドを見ることができると思うのですが、あらためてミューの魅力はどういうところだと思いますか?
ヨハン 「“ミューらしい音”と言えるものを持ってることかな。プロデューサーのロイ・トーマス・ベイカーが〈どんなアーティストにとっても重要なのは“ほかの誰とも違う自分の音がある”と言えることだ〉って言っているけど、そのとおりだと思う。好き嫌いは別として、一発でミューだとわかる音を持ってるってことが僕らの魅力だと思う。僕らは作品ごとに、これまでとは違うものを目指してきた。音楽的に何が良くて何がダメなのか、その価値基準は昔も今も変わっていないんだ」
ヨーナス 「僕らはメンバーの誰かが持ってきたアイディアにほかのメンバーが反応して、“いいね、これ”ってことになればさらにそこから広げていくし、あまり反応がなければ“もしかしたら、またこのアイディアを評価する時がくるかもしれない”って、そのアイディアはキープしておく。今回のアルバムでも、昔のアイディアを引っ張り出して発展させた曲がある。すべてのアルバムは、僕らの人生の日記みたいなもの。その時々に自分たちが考えていることが出ていると思う。まあ、2年に1回ぐらいしか書かない日記だけどね(笑)」
――歌詞に関しても日記的な要素はありますか。
ヨーナス 「僕は直球の歌詞というのはあまり書かないほうだけど、今回はこれまでより何を歌っているのかわかりやすいと思う。そういった点では、日記っぽいところはあるかもしれないね」
――歌詞のタッチが変化したことには何か理由があるのでしょうか。
ヨーナス 「去年は政治的な面で世界中の雲行きがよくなかったし、デヴィッド・ボウイをはじめ僕らのヒーローたちが大勢亡くなったりもして、自分の残された人生について考えたりした。今回のアルバムはダークだとは思わないけど、ダークなテーマを扱った部分はたしかにあると思う。高揚感があって希望を感じさせる一方で、人生の暗い側面も伝える。その二面性を持っていることが、僕らの作品にとってとても大事なんだ」
――最後にアートワークについて教えてください。とてもユニークな“ヴィジュアル”ですね。
ヨハン 「この万華鏡みたいな映像は“コンピュータで作ったものを自分たちの顔に投影したらどうなるのか”っていうアイディアを実行したものなんだ。それはヨーナスのアイディアで、最初はどうなるのか想像がつかなかったけど、やってみて“これはすごい!”と思ったよ。コンピュータで作った映像を人間の顔に投影するというのは、オーガニックなものと人工的なものを組み合わるということで、それって僕たちの音の作り方にも通じるものがあると思う」
ヨーナス 「今回、ヴィジュアル面はすべて僕がやっているんだ。ミュージック・ビデオとかステージの演出とかもね。今回は同じ人の発想から作り上げていくってことから生まれる一貫性を大切にしようと思ったんだ。レコーディングはセルフ・プロデュースだったし、『ヴィジュアルズ』は純然たるミューの世界を表現できたんじゃないかな」
2017年9月5日(火)東京 渋谷
CLUB QUATTRO開場 18:30 / 開演 19:30
前売 7,500円(税込 / 別途ドリンク代)※お問い合わせ: クリエイティブマン 03-3499-6669
2017年9月6日(水)東京 赤坂
BLITZ開場 18:30 / 開演 19:30
スタンディング 7,500円 / 2階指定席 8,000円(税込 / 別途ドリンク代)※お問い合わせ: クリエイティブマン 03-3499-6669
2017年9月7日(木)大阪 梅田
CLUB QUATTRO開場 18:30 / 開演 19:30
前売 7,500円(税込 / 別途ドリンク代)※お問い合わせ: 梅田クラブクアトロ 06-6311-8111
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