マイケル・ジャクソンをブラスでカヴァー 『THIS IS BRASS ブラバン!〜Beat It〜』のツボ

マイケル・ジャクソン   2011/06/07掲載
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 マイケル・ジャクソンのヒット曲をブラスでカヴァーした前代未聞のアルバム『THIS IS BRASS ブラバン!〜Beat It〜』が6月8日にリリースされます。そこで、この1枚を100倍楽しむツボを、管楽器のマルチプレイヤーとして活躍するYOKANさんにご紹介いただきました。

東京佼成ウインドオーケストラ
 “キング・オブ・ポップ”ことマイケル・ジャクソン。数々のヒット作品を放ち、アルバム『スリラー』に至っては全世界で1億400万枚以上のセールスとまさにギネス級。2009年にみずから最後と宣言したロンドンでの大規模なライヴ“THIS IS IT”を企画。全世界が注目するも、公演目前に50歳という若さでの突然すぎる死――。

 そんなマイケルの楽曲を数多くのアーティストがカヴァーし、トリビュート作品として発表しているなか、面白いアルバムが発売になりました。その名も『THIS IS BRASS ブラバン!〜Beat It〜』。日本が誇る吹奏楽団、東京佼成ウインドオーケストラがマイケルの名曲ばかりを演奏した画期的な1枚です。まずアルバム・ジャケットにググッときました。管楽器でデザインされたマイケル像、超ステキです!

 このアルバムは、マイケル・ファンや吹奏楽ファンといった“リスナー”の方々、そして実際に楽器を演奏するブラバンの“プレイヤー”の方々、両方の興味をそそると思われるので、“リスナー派”と“プレイヤー派”それぞれの楽しみ方を、わたくし“YOKAN流”に解説したいと思います。

■リスナー派の聴きどころ
松沼俊彦(指揮)

 このアルバムでは、基本的にオリジナルの楽曲のアレンジを尊重して、そのアレンジ・パーツを管楽器に置き換えての演奏となっています。これがまた奥深いもので、歌のパートを何の楽器でやるか、シンセだったりストリングスだったりコーラスだったりするパートをどの楽器で演奏させるかなどで大きく印象が変わります。偉大なる楽曲だけに、アレンジャーのセンスが試されるところです。オリジナルと聴き比べてみるのも楽しいと思います。

 それから、マイケルなどのポップスは好きだけど、クラシックや吹奏楽は苦手という方、逆にクラシックや吹奏楽は聴くけどロックやソウルなどポップスはあまり聴かないという方。このアルバムを通してジャンルの架け橋になったら、なんとステキなことでしょう!

■プレイヤー派の聴きどころ
田中靖人(アルト・サックス)
/東京佼成ウインドオーケストラ コンサートマスター

 吹奏楽でポップスをカヴァーするといっても、ポップス系のミュージシャンからみると、クラシック系のプレイヤーがポップスを演奏すると、ジャズのスウィング感やロック・ソウルのビート感が表現できていないなどという意見は否めないところ。でも逆に、ジャズやロックのプレイヤーがクラシックを演奏すれば同じような意見が出るので、ある意味、ないものねだりですよね。それが逆に独特な味を生み出していたりもするものです。

 とはいえ実際の演奏では、各ジャンルの音楽をリアルに追求し、クラシックでのタイム感、ジャズでのスウィング感、ロックなどでのビート感を、理屈ではなく肌で知っているに越したことはありません。そういった意味でもこのアルバムは、ブラスの切れ味もバツグンだし、各プレイヤーのソロも、今まで聴いた“吹奏楽ポップス”のように、いかにも書き譜をエチュードのように演奏しました的ではなく、パッションを感じられてステキです(ポップス系のアルバムのように、アドリブ・ソロのプレイヤーのクレジット希望)。

 というわけで、ヒップホップを聴いて育った世代がプレイヤーとして活躍していくこの時代、いろいろな意味で一石を投じるアルバムになると期待しています。なお、このアルバムは世界発売となるらしいのでワールドワイドな評価も楽しみですね。
YOKAN プロフィール
 トランペッターとして10代半ばからステージに立ち、サックス、トロンボーン、フルートやハーモニカなど管楽器のマルチプレイヤーとして活躍中。数多くの有名アーティストのツアーやレコーディングに参加、近年では作曲・アレンジやサウンド・プロデュースなども手がけている。
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