つい先ごろ、ヴァイオリンの
川久保賜紀、チェロの
遠藤真理と組んだピアノ・トリオのアルバム
『RAVEL』がリリースされ好評を得ているところに、今度はコンチェルトを含むソロ・アルバムを発表する三浦友理枝。意欲だけでなく、音楽的にも充実した時間を重ねているようだ。
「トリオは結成してまだ間もないですが、録音のおかげもあってコンサートの予定が入り始めています。3人のスケジュール調整は大変ですが、できるかぎり活動したいと思っているんですよ。ソロ・アルバムの方は、前々から“そろそろコンチェルトを”という話があり、運よくオーケストラのスケジュールが空いたところに、録音の予定を入れていただきました。オーケストラとの共演は大好きなので、ピアノばかりが目立つのではなく、全員で作り上げていくような作品がいいなと考えました。それでいてあまり重くなく、すんなり聴けるようなものをと」
ラヴェルのト調のコンチェルトは、ジャズの要素なども取り入れられ、オーケストラも大活躍する作品。ケン・シェ指揮の
オーケストラ・アンサンブル金沢とは、いいコンビネーションだったようだ。
「じつは1日しか録音時間がなかったので、ものすごく不安だったんですよ。そんななか、1歳上のケンさんとは何でも言い合えたし、彼の力でオーケストラの皆さんとも学校の仲間のように和気あいあいとした雰囲気で、演奏にも一体感を感じることができました。複雑に構成された作品を緻密に組み立てていきたいと思っていたのですが、それが実現できましたね。また音のおもちゃ箱をひっくり返したような楽しさも味わっていただけると思います」
(C)Yuji Hori
カップリングのソロは、同じラヴェルの作品で。統一感のあるアルバムとなった。
「フランスの作品が響き合うのではないかと思い、最初はドビュッシーやメシアンも考えましたが、やはりラヴェルで落ち着きました。コンチェルトが形式美を持っているので、新古典主義で書かれた作品を中心に選びました。〈亡き王女のためのパヴァーヌ〉はデビュー・アルバムの録音の時にも弾いたのですが、納得できなくてボツにさせてもらった曲。今回はリベンジなんです。新たに取り組んだのは〈高雅にして感傷的なワルツ〉。これは〈ラ・ヴァルス〉を録音した際にラヴェルのワルツのあり方がつかめていたので、すんなりと取り組むことができました。全体的には、透明感のある音色にこだわって弾きましたね」
透明感のある音色は彼女の特長。デビューの頃から比べると、しなやかさや柔らかさ、温かみも加わってきたようだ。
「弾きたいように歌いたいように、手が動いてくれるようになってきました。表現の幅は広がったと思いたいです」
録音したい作品はたくさんある。
「トリオでの活動で新しい引き出しが増えそうなので、ピアノ・ソロのレパートリーも広げていきたいと思っています。今、一番はまっているシマノフスキはヴァイオリン・ソナタの伴奏をした時に出会って、好きになりました。そのほかはフランスもの、ショパン。メシアンはもしかしたら自分に合っているかもと思い始めているし、モーツァルトもいいかもしれない」
ピアニスト人生はまだ始まったばかり。次に何が出てくるのか、楽しみだ。
取材・文/堀江昭朗(2009年3月)
【三浦友理枝 コンサート・スケジュール】
●三浦友理枝〜ピアノレクチャーコンサート〜
5月5日 14:00 東京・ヤマハ銀座店(仮店舗)6Fピアノサロン
問:ヤマハ銀座店[Tel]03-3572-3132
●日本フィルハーモニー交響楽団 第53回さいたま定期演奏会
5月15日 19:00 大宮・大宮ソニックシティ
●日本フィルハーモニー交響楽団 第331回名曲コンサート
5月17日 14:00 東京・サントリーホール
●『RAVEL』発売記念インストア・イベント
5月18日 19:00 東京・石丸電気 SOFT2(7F)
※ミニライブ、サイン会とも参加券が必要
●『RAVEL』発売記念インストア・イベント
5月22日 19:00 東京・タワーレコード渋谷店 6Fクラシックフロア イベントスペース
※サイン会は参加券が必要
問:タワーレコード渋谷店[Tel]03-3496-3661
●『RAVEL』発売記念インストア・イベント
5月26日 18:30 東京・銀座山野楽器 本店 7F イベントスペース“JamSpot”
※ミニライブ、サイン会とも参加券が必要
問:山野楽器本店[Tel]03-3562-5051
●三浦友理枝ピアノ・リサイタル
6月7日 14:00 東京・ルネこだいら(大ホール)
※その他のコンサート、詳細は
オフィシャル・サイトへ。