みやけん、人気ピアノYouTuber 早くも2ndアルバムを発表

みやけん   2022/05/09掲載
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 ピアノYouTuberとしてチャンネル登録者数18万人、動画総再生回数4400万回を超え、昨年リリースした1stアルバム『俺のヒットパレード!Vol.1』がAmazonのJ-Jazz予約チャートで2位を記録するなど、人気の“みやけん”が、待望の2ndアルバム『俺のヒットパレード!Vol.2』をリリース。J-POPを中心に、洋楽、映画音楽、そしてオリジナル曲も収録した本作について、選曲やアレンジ、そして今後の展望を聞いた。
――昨年1stアルバムをリリース、今年はテレビ番組『芸能界特技王決定戦 TEPPEN』にも出演。反響はいかがですか?
 「1stアルバムの時は、ずっと“CDはいつ出すの?”と聞かれていたので、皆さんがすごく喜んでくださって、自分もうれしくなりました。『TEPPEN』も反響が大きくて、放送後、毎週YouTubeでやっている定期配信を観に来てチャンネル登録してくださった方が、たくさんいらっしゃって。本当にありがたいです」
――そんなみやけんさんが、早くも2ndアルバム『俺のヒットパレード!Vol.2』をリリースします。
 「自分はJ-POPや歌謡曲が好きで、親の影響もあってそういう音楽が好きになったのですが、次にやりたい曲が頭の中にいっぱいあったので、それが早くも出せてうれしいです」
――今作には、Official髭男dismの「Cry Baby」をはじめ、AIの「アルデバラン」、YOASOBIの「群青」などヒット曲のほか、『となりのトトロ』のメドレーや美空ひばりのメドレー、さらに荒井由実、山下達郎の懐かしのナンバーも収録。世代もジャンルもバラバラで、選曲はどのようにされているのですか?
 「シンプルに自分が好きな曲を選んでいます。古い歌謡曲も選曲していますが、それも自分が好きだからです。たとえば藤井風さんはバズっているというのもありますけど、今自分がめちゃめちゃハマっている曲で、もしVol.3を出せる頃には別の曲にハマっていると思うので、“今のうちに入れておかないと!”と思って入れました。あとは、ストリートピアノで弾いた動画で再生数が伸びているものを選んだり、毎週火曜日にやっている定期配信でリクエストされて弾いた曲で、動画になっていない曲も収録しています」
――今作には3人との連弾も収録されていますね。
 「〈secret base 〜君がくれたもの〜(feat. 朝香智子)〉、〈マツケンサンバII(feat. ヒビキpiano)〉、〈群青(feat.Jacob Koller)〉がそうです。4本の手で弾くので、連弾=ゴージャスというイメージがあると思いますが、〈secret base 〜君がくれたもの〜〉は、弱奏の美しい部分もきれいに聴こえるように意識していて、最後は盛り上がりますけど、最初はすごく静かに弾いているところも聴き応えがあると思います」
――連弾もレコーディングの時は、一台のピアノで隣に座って弾くんですか?
 「はい。たとえば左に座る人は、吹奏楽で言えばチューバやコントラバスで、ハーモニーや伴奏、右に座る人は装飾音やメロディを弾いたりするのがだいたいの役割分担です。アレンジによってそれがときどき入れ替わったりもします」
――手がクロスしたりするんですか?
 「ジェイコブさんの時はそうでした。自分が弾いている目の前にジェイコブさんの手が伸びて来て、即興でそれが起きたので、“ひえ〜!”って思いながら弾いていたんですけど(笑)。朝香さんとジェイコブさんとは、即興で演奏しています。この2曲はお互い知ってる曲だから大丈夫だと思って、コード譜も何も用意せず、スタジオで2、3回リハーサルをやっただけで録りました」
――ジャズっぽい感覚もあるようですね。
 「音的な対話もそうですけど、打ち合わせからジャズっぽかったです。ジェイコブさんとの時は、“じゃあここで8小節、みやけんのアドリブね”って急に言われて、自分の作品のレコーディングなのにドキドキしちゃって(笑)。でもそれが、すごく楽しいんです。ストリートピアノも、その場の雰囲気に合わせて選曲とかアレンジをするので、アドリブ力がすごく鍛えられますし、たしかにジャズっぽい感覚があります」
――ストリートピアノの時も、その場に合わせてアレンジを変えているんですか?
 「はい。たとえば新宿住友ビルのストリートピアノは、オフィス街のすごく静かな場所にあるので、激しく弾くと音が反響しすぎてしまう。渋谷マークシティなど駅の近くだと周りがザワザワしているので、その中で目立つようにアレンジしたり打鍵を強くしたり、その場で考えて変えています」
――「マツケンサンバII(feat. ヒビキpiano)」はどのように?
 「これは事前にアレンジをして譜面を書いてお渡しして、ヒビキさんに弾いていただきました。ヒビキさんはクラシックをメインで弾かれている方なので、即興的なものよりはクラシック寄りの超絶技巧の部分をフィーチャーしたほうがいいだろうと思って。それはそれで、ほかの2人とはまた違った楽しみがありましたね。自分ではこんな難しいものは弾けないけど、ヒビキさんなら弾けるだろうと思って書いたので」
――ちょうど昨年末の『NHK紅白歌合戦』にマツケンさんが出ていましたね。
 「前から〈みやけんサンバ〉って言いながら弾いていたんですけど、『紅白』に出てくださったおかげで、再生数が伸びました(笑)。そうやって好きで弾いたものに、運良く後から意味が付いてくるものが結構あって。山下達郎さんの〈さよなら夏の日〉もそうです。もともと配信でリクエストしていただいたのがきっかけだったのですが、たまたま練馬の光が丘にあるストリートピアノで弾いたら、その後“としまえん”の閉園がニュースになって再生数が伸びたのですが、そのニュース記事で〈さよなら夏の日〉はとしまえんの思い出が題材になっていることを知ったんです。でも、この曲を弾いたことで山下達郎さんの楽曲の魅力を再発見することもできました。僕の中では〈クリスマス・イブ〉の印象が強かったので。アナログっぽい空気感が独特だし、音が響いているというか、車で聴くのにぴったりな曲が多いですよね」
みやけん
――メドレーが何曲か収録されています。メドレーは曲と曲とのつなぎや、最初に弾いたフレーズが最後にまた出てきたりと、いっぱい遊べますね。
 「これは吹奏楽をやっていた経験が大きいんですけど、吹奏楽やオーケストラでメドレーをやると、だいたいイントロにバーンと華々しいアレンジで鳴らしたフレーズが、最後にまた静かな感じで広がるという構成が定番としてあるんです。完全にそれだなって、自分でアレンジしながら思いました」
――『となりのトトロ』のメドレーは、まさしくという感じですね。
 「そうですね。僕は久石譲さんが好きなので、久石さんがオーケストラでアレンジしたものをピアノに落とし込んでいます」
――久石さんの音楽は、みやけんさんのルーツの一つだそうで。
 「ジブリ映画が好きで、小学1年生の時に『もののけ姫』を映画館で観たのが最初です。『千と千尋の神隠し』は好きすぎて映画館に2回観に行きました。子供には内容的に少し難しい部分もあったんですけど、音楽はすごく頭に残っていて。最初はその音楽を手がけているのが久石さんだとは知らずに、ジブリ名曲集の楽譜を買って弾いていました。久石さんのことを認識したのは小学校高学年で、そこから久石さんのCDを集めるようになって、久石さんの音楽が好きすぎた結果このアレンジになったというものも多いです。じつは、今作には自分で作った〈beloved〉という曲も収録しているんですけど、これも久石さんのエキスが入っています」
――「beloved」は、胸にしみるバラードです。
 「久石さんのファンの方が聴いたら、“この展開は!”と思うかもしれません。自分もまだ作曲をそこまでたくさんやっているわけではないので、そういう自分の中にあるルーツからイメージを広げていくことしかできないし、その色が強かったとしても影響として確実にあるものだから、それはそれでいいんじゃないかと思っています。自分でも、なかなかいい曲ができたなと思っています(笑)」
――作曲は今後も?
 「挑戦していきたいです。基本的にカヴァーがメインになるとは思いますけど、自分の曲も残していきたいと思います」
――バンドやオーケストラとのコラボは考えていますか?
 「夢のまた夢ですけど、できることならやってみたいです。ちなみに今回作った〈beloved〉はすでにオーケストラアのレンジが頭にあって、“ここでシンバルがパーンと鳴って”とか想像しながらレコーディングしていたんです。オーケストラで演奏してもらえる機会はなかなかないと思いますけど、いつかのためにと思って、時間を見つけて少しずつオーケストラの楽譜を書いています」
――美空ひばりメドレーや星野源メドレーもあります。
 「星野さんのメドレーは、自粛期間中に星野さんの〈うちで踊ろう〉が流行ってた時、この曲はアルバムに入っていませんけど、やりたいなと思って家のピアノで弾いた動画をあげたのが最初です。自粛期間が明けたら都庁のストリートピアノで弾こうと思っていたので、都庁サイズの5分以内でアレンジをして」
――都庁サイズというのがあるんですか?
 「都庁のストリートピアノは、1人1回5分と厳密に決まっていて、スタッフがストップウォッチで計って5分経つと曲が途中でも止められるんです」
――アイドルの握手会みたい(笑)。
 「弾き始めると、どこからか“ピッ”ってストップウォッチの音が聞こえます(笑)」
――時間と言えば、ラストのゴスペラーズのカヴァー「永遠に」は7分くらいあります。もともとは5分半くらいの曲ですよね?
 「シングル・ヴァージョンはそうなんですけど、〈ひとり〉のカップリングに〈永遠に -unplugged live version- 〉が収録されていて、それが7分以上あるんです。ピアノ伴奏だけで歌っているもので、僕はこっちのヴァージョンが好きでなじみがあったので、こちらのヴァージョンを弾きました。それにイントロを少しゆっくりめに弾いていて、一曲の中でテンポ感が変わるんです。こういうピアノらしい情感を込めて演奏したものは、僕の演奏ではめずらしいかもしれません。アルバムを静かに締めくくりたいと思ったので、これを最後に入れるのは、最初から決めていました」
――なるほど。細かいところを考察しながらじっくりも聴けるし、何かをやりながらBGMとして聴くこともできるし。いろんな楽しみ方のできるアルバムですね。
 「今作はテンポ感がある曲でもそんなに速くはないので、わりとヒーリング要素が多いかなと思います」
――ストリートピアノだけではなく、ワンマンライヴも予定されています。
 「4月29日に大阪、5月3日に中目黒でワンマンがあります。今年はライヴが続いていて、まだ告知できないものがたくさんあるんです。じつは12月まで予定が詰まっています。ピアノYouTuberのイベントにもたくさん出ますし、今の状況が自分でも不思議です」
――それはすごいですね。
 「すごくやりたいことだったのでうれしいんですが、急に増えたので戸惑いもあります(笑)。今までは趣味の延長線上みたいな感覚もあったのですが、今は聴いてくださる方が増えて、その期待にも応えないといけないので、技術をもっと磨かないといけないなと思っています。そう思うようになったのは去年の暮れくらいからなんです」
――もともとはトロンボーンが本業ですよね?
 「そうなんです。トロンボーンが本業で、ピアノは趣味と思っていましたけど、今はピアノも本業という意識でプレッシャーを感じつつあります。ただ、トロンボーンもピアノも自分が好きだから始めたことなので、どちらも続けていきたいです。先日知り合いのトロンボーン奏者とコラボ配信をやっていろんな曲を演奏したんですけど、やっぱり楽しくて。“これだからトロンボーンは辞められないな〜”と思いました。ピアノとは違う楽しさがあるので、トロンボーンの仕事を受けられた時は喜々としています」
――ステージでピアノを弾いたりトロンボーンを吹いたりすることもありそうですか?
 「そういう姿が見たいと言ってくださる方もいますね。でもトロンボーンってソロでは成立しづらい部分があるので、そういう時はピアノ伴奏をやってくれる方がいてくれたらなって思います。もう一人自分がほしいくらい(笑)」
――みやけんさんは今後どんな展望を抱いていますか?
 「単純にピアノやトロンボーンだけじゃなく、自分を通してクラシックを含めたインスト音楽に興味を持ってほしいという気持ちもあります。自分はピアノでクラシックの曲は弾けないですけど、クラシックもJ-POPも垣根なく聴いてほしい。実際にストリートピアノをきっかけに僕のことを知って、初めてオーケストラの演奏会に足を運んでくださる方も大勢いらっしゃって、それはすごくありがたいしすごくうれしいこと。僕が好きな曲を楽しく演奏することで、音楽の楽しさが伝わったらいいなと思っています」
取材・文/榑林史章
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