ドラマ『のだめカンタービレ』にオーケストラの一員として出演したことに続き、話題のCM、
ヱビス<ザ・ホップ>でもこぼれる愛くるしい笑顔でクラシック・ファン以外からも注目を浴びる
宮本笑里。才色兼備の新進ヴァイオリニストが語るデビュー作
『smile』(写真は
通常盤)とは――。
「クラシックを取り巻く環境が少しずつ変わってきた」と若手ヴァイオリニストとして注目を浴びている宮本笑里は嬉しそうに語る。
「美容室に行ったり買物をしているとき、楽器を持っていると『"のだめ"観ているんですけど、それってヴァイオリンですか?』って訊かれたりするんです。以前はそんなことなかったけど、ドラマやテレビの影響力ってホントにすごいんだなって」
"のだめ"とは、もちろん『のだめカンタービレ』。彼女もオーケストラの一員として出演していた人気漫画を原作としたドラマだ。
このたび発売された彼女の初のソロ作品となる『smile』は、新しいクラシックのファンが増えつつある現在、「ヴォカリーズ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」といった誰もがどこかで聴いたことのある小品を中心にした、まさに時代のニーズに合致した"届きやすいクラシック"だといえるだろう。その一方で、彼女のために書き下ろされたヴァイオリンの音色艶やかな作品も収録するなど、非常に聴きやすくフレッシュなアルバムに仕上がっている。
「小さいときから考えていたんですけど、もし自分がCDを出すことがあれば慣れ親しんだ曲を盛り込んだ作品を作りたかった。そういう意味では思い通りのアルバムが出来たと思います。たくさんの人に聴いてほしいし、構えることなくふわっとした感じで聴いてもらえたら嬉しいですね」
有名な曲が多いということは、他の奏者の作品と比較されやすい。が、"聴きやすさ"をテーマに細部まで目の行き届いた彼女のタッチには、若いながらにさまざまな分野や楽団で仕事をしてきたキャリアの裏づけが感じられる。それは、味わい深い彼女ならではの色彩とでも言おうか。
「独特な薫りが出るような奏者になりたいですね。例えば、父の演奏を聴いていると、やはり何か他の人とは違うものを感じるし、私もああいった演奏が出来るようになりたいと理想に向かって努力しています」
父親とは音楽家であり元世界的なオーボエ奏者の
宮本文昭であり、本作の中でも絶妙なバランスをもって共演している。
サラブレッドにして才媛。ちなみに練習をしていない時間は「絵を描いたりして過ごしています」というから、隙がないというか芸術家として出来すぎというか……。
「いえいえ、こう見えてラーメンがすごい好きなんですよ。しかもトンコツじゃないとイヤなんです。気がつくとラーメンばっかり食べているんですから(笑)」
そのキャラクターから想像もできないことを言って笑う彼女からは、何ともいえない愛嬌が溢れ出ていた。今後は舞台や映画音楽などクラシックを軸にしつつも、垣根を越えた幅広い活躍をしていきたいという。
「私は小さいときからベラベラとしゃべるタイプじゃないですし、思っていることをヴァイオリンを通して伝えていけたらな、と願ってきました。ですから、これからもヴァイオリンととともにいろんな活動を通して自分を表現していきたいです」
取材・文 石塚 隆
宮本笑里が出演する“朗読劇を超越したスーパー朗読劇”
Radiogenic リーディング・スペクタクル『ミッシング・ピース』
8月4日〜8月12日まで東京・ル テアトル銀座 by PARCOにて上演
※宮本笑里出演の「ミッシング・ピース」は8月10日〜12日の期間上演
プロデュース/脚本:売野雅勇
演出:市川右近
音楽監督:塩入俊哉
音楽Based on:千住明
出演:市川右近、市川春猿、市川段治郎
案内人:古藤芳治
ヴァイオリン:宮本笑里 (「ミッシング・ピース」)