現在のクラシック・シーンを代表する人気ヴァイオリニストのひとりであり、国内外のアーティストとのジャンルを超えたコラボレーションでも注目の的。加えて、J-WAVE『MITSUBISHI JISHO Classy Cafe』のナビゲーターや、日本テレビ系『NEWS ZERO』のカルチャー・キャスターを務めるなど、多面的で活躍中の
宮本笑里。
彼女にとって初の映像作品がついにDVDで登場した。今年6月29日、東京・サントリーホールでのリサイタルを収録した
『ライヴ・アット・サントリーホール』。
初回生産限定盤には、2007年10月2日にサントリーホールの小ホール(ブルーローズ)で行なわれた貴重なデビュー・ライヴを収録したボーナスDVDが付いているのも嬉しい。
――ピアノとヴァイオリンだけのシンプルなステージなのに、あの広いホール全体が華やぐような雰囲気を醸し出していました。
宮本笑里(以下、同) 「ありがとうございます! 尊敬するアーティストの演奏を何度も聴いた、憧れのサントリーホールのステージに自分が立てるなんて、4年前に小ホールで演奏した時には夢にも思わなかったので、当日は胸がいっぱいでした」
――そのデビュー間もないころの演奏を特典DVDで拝見しましたが、やはり初々しいです。
「ついこの前のことのようにも思えますが、あらためて映像を見ると、かなり必死で頑張ってる感が出ていますよね。演奏もそうですが、とくにMCの部分が見てられなかった……あの時の緊張感が蘇ってきて(笑)。でも、とりあえず元気いっぱいなところがすごいです。やはり若さでしょうか」
――さて今回のリサイタル、宮本さんのヴァイオリンの魅力を余すところなく聴かせる選曲です。
「4枚目のアルバム『
for』の収録曲を中心に、
エルガーや
クライスラーの小品からオリジナルまで、さらには
ベートーヴェンのソナタありと、クラシックの演奏会がはじめての方でも抵抗なく楽しめて、名曲との幸福な出会いがあるように、と願いを込めて選びました」
――TVでおなじみの曲「ZERO」は多方面で活躍されている今の宮本さんのイメージ・ソングのようですね。
「『NEWS ZERO』のスタジオでいつも流れている曲ですが、私にとっては新しい体験をさせてくれたこの番組を象徴する大切な一曲です。キャスターの仕事はもう1年半くらいになりますが、いまだに緊張しますね。最初にこの仕事のお話をいただいた時は、誰か別の方と間違えてるのかと思ったくらいでした。ただ、もともと何にでも挑戦してみたいタイプなので、不安はありましたが最初からやる気はけっこうあったと思います(笑)」
――いろんな分野で一流の方とお会いする機会も増えたのではないですか?
「やはり、ジャンルは違っても同じ音楽界の方にお話を伺うのは楽しいし、勉強になります」
――「Marina Grande」は自作の曲ですね。どんなイメージで書かれたのでしょう。
「まだ見ぬイタリアの“青の洞窟”への憧れを曲にしたもので、自分の中では深いブルーのイメージ。この曲もじつは『NEWS ZERO』の仕事をはじめて、新しい世界でたくさんの方とお会いしたことがいい刺激となって生まれたものです。それまで自分にはなかった旋律が湧きあがる手応えのようなものを感じました」
――リサイタルの第2部では、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」がやはり聴きどころですね。
「覚悟を決めて挑まないと弾ききれない、偉大な名曲ではあるのですが、幸福感に満ちた親しみのある旋律は万人に愛されるものだと思います」
――アンコールで演奏した
木村カエラの「Butterfly」のカヴァーは、昨年お姉様の結婚式でも演奏されたとか。
「はい、大好きな曲ですが、シンプルなメロディを歌詞のないヴァイオリンでどう歌うかが難しかったです」
――J-WAVEの『MITSUBISHI JISHO Classy Cafe』も楽しみにしています。呼んでみたいゲストって誰かいますか?
「もし機会があれば、同じヴァイオリニストで年齢も比較的近い
五嶋龍さんにお話を伺ってみたいです。共通の友人がいたりするのですが、まだ実際にお会いしたことがないんです。なので話が弾むといいなと思います」
――来年はどんな年にしたいですか?
「今年あったことを忘れずに、私にできることを精一杯! 来年はデビューからちょうど5年になるのですが、今までと変わらずに、皆様に音楽を届けたいと思います」
取材・文/東端哲也(2011年11月)