マイ・モーニング・ジャケットのジム・ジェームス、
M.ウォード、
ブライト・アイズの
コナー・オバースト。アメリカを代表する屈指のソングライター3人が2004年に始めたジョイント・ツアーが5年を経て、グループ名を冠したアルバム
『モンスターズ・オブ・フォーク』に結実。3人が5曲ずつ提供した全15曲は、ジムのソウル色など、それぞれの個性を主張しながらも1つに溶け合い、美しいハーモニーとともにアメリカーナの今を伝えている。この秋から冬にかけて、彼らはアメリカ、ヨーロッパをツアーする予定だ。今回、話を訊いたコナーと4人目のメンバー、マイク・モーギス(ブライト・アイズ)によると、このモンスターたちはままだまだ進化を遂げそうな予感! ぜひ、来日ツアーも実現させてほしい。
マイク・モーギス(以下、マイク)「運命さ」
コナー・オバースト(以下、コナー)「ハハハハ! 運命?! それいいね!」
マイク「だろ(笑)」
――運命ですか。なるほど(笑)。たとえば、アメリカーナって言葉で表現できる世界観が4人の共通点じゃないかと思うんですけど。
コナー「そうだね。アメリカ人が4人揃って、1つの部屋で演奏すれば、自然とアメリカーナって言われているような音楽にはなるよね(笑)」
マイク「育ちはそれぞれに違うかもしれないけど、たぶん似たような音楽を聴いてきたんだと思う。メンバーそれぞれのバックグラウンドを円で表現したとき、真ん中で重なる部分は、他のバンドよりも大きいんじゃないかな」
コナー「そして、その周りにある、それぞれが持っている個性を、それぞれが持ちこむことによって自分たちが想像もしていなかったような音楽が出来上がったんだよ」
――つまり、4人は音楽という部分で一番結びついている、と?
マイク「もちろん」
コナー「たしかにね。そもそも僕はマットとジムの大ファンだったんだよ。そういう人たちと、このプロジェクトを通して人間的にもつながりあえた。そんな嬉しいことがあるかい?」
――モンスターズ・オブ・フォークというグループ名はもともと、周りの人間がつけたあだ名だったそうですね。正式にそれを名乗っている現在は、そのグループ名にどんな意味を見出しているんでしょうか?
マイク「ハハハハ。意味なんてないよ! 意味はないんだけど、僕たちにしかつけられないという意味では特別なのかもね」
コナー「ほかのバンドよりもおっかなそうだろ? だってモンスターズだぜ。ほかのバンドをビビらせてやりたいんだよ(笑)」
――モンスターズ・オブ・フォークとしてツアーするだけに飽きたらず、アルバムも作ることになったのは、誰のアイディアだったんですか?
コナー「誰だっけ?」
マイク「さあ」
コナー「マットだっけ。いいや、マットにしておくか(笑)。実は覚えてないんだよね。もちろん、誰かが言い出したことはたしかだよ。その瞬間、全員が同意したんだ。でも、その時はそれぞれに忙しくて、その後1年ぐらい、アルバムを作るって話は棚上げにされていたんだ。だけど、誰かがまた、やろうやろうって言い出したんだよね(笑)」
――曲はジム、マット、コナーがそれぞれに持ち寄っているそうですね。持っていった曲が他の2人にダメ出しされるなんてことはあったんですか(笑)?
コナー「そういうことはいっさいなかったよ。すごくポジティヴなプロジェクトなんだ。お互いに励まし合うっていうか、むしろ曲を持ってきた本人以上にほかのメンバーが興奮して、その曲に新しい命を吹きこんだってケースのほうが多いぐらいさ。たとえば、マットが持ってきた曲の中に、彼自身はそれほど満足していない曲があったんだけど、全員でアイディアを加えていったら、マット本人も乗ってきたなんてこともあったよ」
マイク「そういう愛に満ちたレコーディングだったんだ(笑)」
――レコーディングの現場では一体どんなことが起きていたんだろうと誰もが想像を膨らませると思うんですけど、実際、レコーディングはどんなふうに進んでいったんですか?
コナー「1つのルールがあったんだ。今回のレコーディングには、ジム、マット、マイク、僕の4人しか参加しないっていうね。だから、すべての演奏を、4人でやらなければならなかった。場合によっては、あえて不慣れな楽器も演奏したんだ。そうやって、いろいろなことを試しながら、仲間と遊んでいるようなレコーディングだったよ」
――モンスターズ・オブ・フォークが現在の4人以外の才能を加えて、発展する可能性はあるのでしょうか?
マイク「今度のツアーにはドラマー(テキサス州デントンのバンド、セントロ・マティックのフロントマン、ウィル・ジョンソン)が加わるよ。彼は一時的にモンスターになるんだ(笑)」
コナー「この先、何が起きるかはわからない。その可能性は否定しないよ」
マイク「たとえば
ベス・オートンが加わるかもしれないし、
ドクター・ドッグの連中が加わるかもしれないし(笑)」
コナー「あるいは
ジャック・ホワイトかもしれないし(笑)」
――じゃあ、来日ツアーも可能性がないとも言えない?(笑)
コナー「もちろんさ。みんなが望むなら、ぜひ戻ってきたいね!」
取材・文/山口智男(2009年7月)