『LOVELESS -Tribute-』
[収録曲(バンド)]
01. Only Shallow (Vidulgi OoyoO)
02. Loomer(電子羊)
03. Touched(Sunkyeol)
04. To Here Knows When(Sei & Swann)
05. When You Sleep(Jowall)
06. I Only Said(GhostMutts)
07. Come In Alone(n I n a I a n)
08. Sometimes(KiHap)
09. Blown A Wish(Soil Sugar Poco Largo)
10. What You Want(Big Baby Driver)
11. Soon(LoOm)
註 パステル・ミュージックとエレクトリック・ミューズ
どちらも韓国を代表する人気インディ・レーベル。
パステル・ミュージックはポップなロック系アクトやシンガー・ソングライターを中心にリリースしており、海外バンドのディストリビュートも行なっている。
エレクトリック・ミューズは国内のオルタナ、シュゲイザー、ポスト・ロック・バンドを中心にリリース。
※リンク先からトリビュート参加バンドの曲が視聴ができますので、ぜひチェックしてみてください!
●Pastel Music
[Official Site]
http://pastelmusic.com/
[Youtube Channel]
https://www.youtube.com/user/pastelmusic
●Electric Muse
[MySpace]
http://www.myspace.com/electricmuse
[Soundcloud]
http://soundcloud.com/electric-muse
昨今、何かとポップ・ミュージック方面が注目されがちな韓国の音楽シーン。しかし、同地では90年代からいわゆる“オルタナティヴ”なロック・バンドがアンダーグラウンドで活動を続けていたという。そして、脈々と受け継がれてきたその流れが今、ここにきて徐々に実を結びつつある。本作は同地のシューゲイズ/オルタナティヴ・アクト11組が、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)の1991年の不朽の名盤『Loveless』(祝リマスター再発決定)全曲を丸ごとカヴァーしたトリビュート・アルバムだ。
本作の特徴は、新旧世代のバンド(主な所属先はパステル・ミュージックとエレクトリック・ミューズ/註)がバランスよく並んでいる点にある。たとえば“韓国シューゲイズの始祖的な存在”と呼ばれ、90年代に活動していたYellow Kitchenの元メンバーの関連ユニットが本作には多数参加しているし、また2000年代半ばに成功を収めたインスト・ロック・バンド、Sokot Band(ソコット・バンド)のメンバーのユニット、n i n a i a n(ニナイアン)とJowall(ジョーウォル)の中堅2組も秀逸なカヴァーを提供、そして3月に初来日を果たしたVidulgi OoyoO(ヴィドゥルギ・ウユ)をはじめとしてSunkyeol(ソンキョル)、Big Baby Driverら、2000年代後半に浮上してきた新世代組も参加など、黎明期から現在に至る韓国オルタナティヴ・シーンの系譜がこの一枚に総括されているといっても過言ではない。
内容的には、いずれのアクトも『Loveless』への愛情を下敷きにしながら、あの名作に対して妙に臆することなく自由気儘に調理しているという印象だ。エレクトロニカ風の味付けだったり、レイジーなスロウコア風、アコースティックなフォーク・サウンド、はたまたキテレツなサイケデリアなど、統一感の強い本家とは正反対のバラエティに富んだ作風からは、なかなか日本には伝わりづらい韓国インディ・シーンの豊かな個性の一端が垣間見えてくる。と同時に、20年以上の月日を経てもいまだに色あせない『Loveless』の原曲の良さが、客観的な視点で再確認できるという意味でもまた興味深い作品だといえるだろう。
文/佐藤一道