橋本淳&筒美京平コンビの最後の傑作「ホテル砂漠」でデビューする新人アーティスト「夏海姉妹」

夏海姉妹   2023/09/08掲載
はてなブックマークに追加
 数多のヒット曲を生んだ橋本淳・筒美京平の黄金コンビによる未発表曲「ホテル砂漠」でデビューする女性デュオ・ユニットの夏海姉妹。彼女たちは現役ストリッパーの夏海愛とお座敷芸者の夏海ジュンという謎めいたデュオで、昭和歌謡的なレトロで妖艶なムードをあわせもつ逸材だ。全6曲入りのデビュー作品について、表題曲の「ホテル砂漠」を中心に、2人に話を聞いた。
夏海姉妹
Debut CD
「ホテル砂漠」

(HOTWAXCD-2001)
 「ホテル砂漠」は、橋本と筒美がザ・スクーターズに書き下ろしたが、未発表となっていた曲で(ザ・スクーターズ版は歌詞を変え、「Hey girl」として2012年のアルバム『女は何度も勝負する』に収録されている)、彼女たちが掲げる“ビート演歌”というニュー・ワードそのものを表すような楽曲となっている。ヴォーカルを取るジュンの艶っぽくエモーショナルな歌声も吸引力がある。
 「第一印象は“難しそうだな”というものでした。でも歌ってみたら、新たな自分のスタイルが発見できました。いまの時代にはあまりない世界じゃないですか。すごく新鮮ですよね」(ジュン)
 「わたしも衝撃を受けました。でも、この形としては未発表だった橋本先生と筒美先生の曲なので、わたしたちがこのままでちゃんと形にしたかったんです」(愛)
夏海姉妹
 デラックス限定版(CD+DVD)に収録されているミュージック・ビデオも秀逸。矢沢ようこ、赤西涼、豊田愛菜という浅草ロック座などで活躍する有名ダンサーが参加、「ホテル砂漠」の世界観をいっそう広げてみせている。しかも、ひとりずつソロで踊ったものを組み合わせているのだが、彼女たちのダンスはアドリブだそうだ。また、「ホテル砂漠」はDVDでしか見られないまったく別の音源と映像による“新宿ニューアートMIX”のミュージック・ビデオもあり、こちらはさらにキラキラした妖艶な世界観で魅了している(予告編をYouTubeで見ることができる)。
 「ダンサーのみなさまに華を添えていただきました。本当にすごかったです。目が釘づけでした」(愛)
 「ホテル砂漠」以外の収録曲も濃厚な曲が揃っている。現代の昭和歌謡的シンガー・ソングライターの筆頭、町あかりが手がけた「ハーブみたいな彼」は、歌謡曲のツボを押さえつつ町らしい開放感たっぷりなメロディと独自の言語センスが冴えまくった痛快曲。4人のキッズ・ダンサーが参加したミュージック・ビデオもおもしろい。
 「この曲はクセになるというか、中毒性がありますよね。もともとは歌詞が違って一度は歌も入れてたんです。歌詞が変わって、ミュージック・ビデオの子どもたちとの交じりもすごくナチュラルになったと思います」(ジュン)
 「子どもたちは待ち時間もずっとこの曲を歌っていたんです。なじみやすい曲なんだなと思いました。〈ホテル砂漠〉は大人の歌ですからね(笑)」(愛)
夏海姉妹
夏海姉妹
 さらには2曲の昭和歌謡カヴァーも収録されている。「夏海の〈圭子の夢は夜ひらく〉」はザ・ファントムギフトのメンバーによる演奏、「愛して愛して愛しちゃったのよ〜お座敷小唄」ではプロデューサーの大久保ノブオ(ポカスカジャン)とデュエットしている。
 「〈愛して愛して愛しちゃったのよ〉はいろいろな方のカヴァーを参考にさせていただきました。奥村チヨさんのヴァージョンがすごくかわいくて印象に残っていたので、チヨさんっぽさを少し意識しました」(ジュン)
 昭和歌謡を“ビート演歌”という新機軸のスタイルで現代に示してみせた彼女たちのデビューは、令和という時代に新鮮なインパクトを与えそうだ。資料によると、すでにセカンド・シングルの制作もはじまっている。そちらも橋本淳・筒美京平のキラー・チューンだとか。新たな昭和歌謡の息吹を吹き込むユニークな存在である夏海姉妹の今後の展開に期待が高まる。
夏海姉妹

取材/高岡洋詞
構成・文/小山 守
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 角野隼斗 イメージ・キャラクターを務める「ベスト・クラシック100極」のコンピレーション・アルバムを選曲・監修[インタビュー] 色々な十字架 話題の“90年代ヴィジュアル系リヴァイヴァル”バンド 待望のセカンド・アルバムをリリース
[インタビュー] アシックスジャパンによるショートドラマ 主題歌は注目のSSW、友成空[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤
[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ
[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも
[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”
[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015