ニッキーにとって世界デビュー作となる
『ニッキー〜フォー・アナザー・デイ』を聞くにあたって、“バンクーバー五輪開会式でカナダ国歌を歌った、16歳の天才少女”うんぬんといった情報は、むしろ念頭に置かないほうがいいかもしれない。アルバムの半分を占めるオリジナル曲が放つ、いきいきとした感受性。それに触れるには白紙の状態のほうが好ましい、と思われるからで、タイトル曲の一節、“They leaves us with questions, for another day”は、そんな彼女の若さと卓越した歌唱力とが交錯する、文字通りのハイライト。ほんと、期待の星と断言したい。素顔もかわいいし。
ニッキー(以下同) 「オリジナル曲には、ありのままの私の姿を反映させたいと思っていたの。〈フォー・アナザー・デイ〉の歌詞は私も大好き。スタンダード・ナンバーを
カヴァーする時には、ブロードウェイの舞台に立っているような気分、ある意味“演技”に近いアプローチをしているから、オリジナルではなおさら“素”の自分を出したかった」
「モントリオールにある私の家の地下室に3人で集まっては、セッションしていったの。ロン・セクスミスは
ボブ・ディラン、
レナード・コーエンと並ぶ、私のアイドル。歌詞を書く上で、たくさん学んだわ。一方ジェシーは、独特のコード展開が素晴らしい。〈ネヴァー・メイク・イット・オン・タイム〉は、ジェシーがピアノで、あのシンコペートするフレーズを弾いたところから生まれた曲なのよ。
――「ネヴァー・メイク・イット〜」は歌詞もおもしろいですね。
「私自身、(“時間に間に合わない”という歌詞同様)大の遅刻魔なの(笑)。あれこれ空想にふけるのが好きで、気がついた時には“いっけない、また遅刻”という事態になっちゃってる。〈ネヴァー・メイク・イット〜〉は、普遍的なラヴ・ソングであると同時に、そんな私の性格をからかった、“内輪の冗談”でもあるわけ。
――「トライ・トライ・トライ」は、ロン同様、あなたにとって同郷の先輩にあたるファイストの書き下ろしですね。 「ファイストにはジュノー賞(カナダのグラミーにあたる)授与式で、一度会ったことがあるだけなんだけど、ジェシーが彼女と親しかった。“ファイストが書いたカントリー・ブルース調の曲があるんだけど”と聞かせてくれたデモ・テープを耳にしたとたん、“絶対歌いたい!”と思ったのよね。
(c)Jeff Lipsky
「よく言われるのは“
ボニー・レイットに似てる”。でもアレサは大好きな歌手の一人だから、比べられるのはうれしい」
「今回、スタンダードとオリジナル曲を半々に収録したのは、そうした持ち味を伝えたいという意図があったからなの。エラ・フィッツジェラルドは尊敬してやまない歌手だけど、ふだんの私は
ジェイ・Zや
ケイナーンだって聞く、普通のティーンエイジャー。ジャズも歌えば、R&Bやポップも好き。そんな私のうそいつわりのない姿を聞いてほしかった。
――歌手活動で日々多忙な中、音楽から離れたときの楽しみを挙げるとすると?
「詩を書くこと。学校に通えないぶん、仮題を出されているんだけど、ふと気がつくと教科書の余白に詩を書きなぐっている(笑)。あと、ショッピングが大好き。今日も渋谷に連れていってもらう予定なの。109に出かけて、60年代っぽい長い羽根のついたピアスを買いたいな」
取材・文/真保みゆき(2010年4月)
<ニッキー来日公演>
【大阪】
10月4日(月)大阪・心斎橋クラブクアトロ
開演:19:30
【名古屋】
10月5日(火)愛知・名古屋クラブクアトロ
開演:19:30
【東京】
10 月6日(水)東京・東京国際フォーラム ホールC
開演:19:00
【チケット一般発売】5月22日(土)
総合問い合わせ:ウドー音楽事務所[URL]
http://udo.jp