おもにインターネット・シーンを中心に活動する仙台出身の2人組ユニット、Nina77(ニーナナナナナ)。YouTube再生回数86万回以上を記録した代表曲「一人ぼっちの革命」を新たに再録、新曲「追憶の声」などを追加した初のCD『一人ぼっちの革命』をリリースした2人に話を聞いた。
――まずは、Nina77がどんなグループか教えてください。
シンイチ「2019年から活動をスタートしました。ほぼYouTubeをメインに活動してます。もともとエレクトロ風の曲を個人で作っていて、それにさくらまきのヴォーカルを乗せて発表していくという形で始まったんです。活動していくうちにだんだんロック要素が強くなっていきました」
――グループ名の由来は?
シンイチ「地元の仙台に由来する27と77って数字を2人で考えて、それを合わせてNina77になりました。あまり公表してないんですけど」
――どのような経緯で、2人で活動していくことになったのですか。
シンイチ「同じ会社で働いていたんです。クリエイター系の会社でデザイン、グラフィック系の仕事をしていて。その仕事とは別に、僕が個人で音楽を作っていて、(さくら)まきが歌がうまいのは知っていたので、ちょっと歌ってみてと頼んだのが始まりでした」
さくら「もともとシンイチさんが作っていた音楽を聴かせてもらっていて、かっこいいな、こんな曲を作れる人が仙台にいるんだなと思っていたんです。なので一緒にやれてうれしかったです」
――面白いグループのスタートですね。では、2人がどんなものに影響を受けて、ご自身でも音楽をやるようになったのか教えてください。
シンイチ「僕はもともとパンク・ロック系が好きでした。活動休止していましたが、世代的にELLEGARDENをよく聴いてましたね。あと、2010年代にEDMがめちゃくちゃ流行って、アヴィーチーとかマーティン・ギャリックスがすごく好きで。なので、ロックとEDMが自分のルーツにあると思います。自分が音楽を始めたきっかけは、中1のときにモテたいなと思って、ギター始めたのが始まりです(笑)。当時はビートルズとかをコピーして弾いてました。エリック・クラプトンとか古めの洋楽も聴いてて、そのあとボン・ジョヴィ、ガンズとかハード・ロック系に行ったりという感じでした」
――音楽の道に進もうと考えたことはあったんですか。
シンイチ「一時期ありましたね。高校、大学の頃はバンドも組んでました。でも、プロの方の練習を見に行く機会があって、レベルの高さがすごすぎて、これは無理だって心折れて……音楽の道は諦めたんです。でも、曲を作るのが好きだったので、趣味でずっと作り続けていました。それで会社で働きながら作っていたんですけど、ある程度仕事もやりたいことをやれたし、音楽をもっとやりたいなという気持ちになって、Nina77を立ち上げました」
――さくらさんは?
さくら「私はJ-POPから音楽を好きになって。2000年代のエイベックスのアーティストさん、ELTさん、倉木麻衣さん……そのあたりの方々に影響を受けています。あとアニメソング、ボーカロイドも大好きで、supercellさん、坂本真綾さんが好きでした」
――歌はどういうきっかけで始めたんですか。
さくら「もともと家族みんな音楽をやっていて、私もピアノを習っていたんです。でも、やらせられてる感があってあまり好きではなくて。唯一、歌うことは楽しいなと思ってました。歌手に憧れた時期もあってオーディションを受けたりしたんですけど、結局、私も一度は音楽を諦めたんです。そのあとシンイチさんと出会って今がある感じですね」
――さくらさんが歌がうまいのをシンイチさんが知っていたのは、披露する場所があったんですか。
さくら「シンイチさんが音楽をやってるのは知っていたので、自分が何曲か歌ったデモテープを聴いてもらったりしてたんです。それで声をかけていただいて。こうしてユニットという形になれたのは運がよかったなと思います」
――Nina77としてYouTubeで曲を発表し始めてからの流れを聞かせてください。
シンイチ「最初の2〜3曲は全然反応がありませんでした(笑)。〈嘘とアイデンティティ〉を出したときにぼちぼち反応があって、2020年3月に〈一人ぼっちの革命〉を出したときにめちゃくちゃ再生数が伸びたんです」
――どういうきっかけがあったんですか。
シンイチ「ちょうどコロナ禍だったんですが、その時期の感覚にハマったのかもしれないです。たぶん、YouTubeのアルゴリズムのおかげでおすすめによく出てくれたんじゃないのかなって思うんですよね。“古参になります”みたいなコメントがめちゃくちゃついて(笑)」
さくら「私は〈一人ぼっちの革命〉を聴いたときに、“これは来るぞ!”と思ったんです。メロディと歌詞の語呂がいいし、何回も聴いてもらえそうな曲だなと感じました」
シンイチ「僕としてはそこまでじゃなかったんです(笑)。でも、まきがイケるって言ってくれて、実際に曲を出したらほんとに反応がすごくてうれしかったです」
――「一人ぼっちの革命」は86万回以上再生されてますね。
シンイチ「ありがたいことです。再生回数が増えて自信もつきましたし、Nina77の基本的な音楽的な方向性が定まった感覚もありました。いろいろレコード会社からも声をかけていいただいたりして、いい形になればいいなという気持ちでした」
――曲を作る上で大切にしてることを教えてください。
シンイチ「まず、まきの歌が生きるか、まきの歌いやすさを重視してます。あと、リズム感が独特だと言われることが多いんですけど、自分の好きなリズム感は大事にしてますね。おそらくEDMの影響かなと思います」
――さくらさんはどんな部分にこだわりを持って歌っていますか。
さくら「真っ直ぐ歌うということです。声がいいと言っていただけることが多いので、そこは活かして歌えたらという思いがあります」
――歌詞は全体的にパーソナルな思いが出ているのかなと思いました。
シンイチ「そうかもしれないですね。自分が聴いて前向きになれるものにしたいと思っています。結局は自分のパーソナルなことしか書けないんですけど」
――そうしたシンイチさんの歌詞を歌うのは、さくらさん的にどういう感覚がありますか。
さくら「共感できる歌詞が多いので感情を乗せやすいです。自分もこの曲を聴いてがんばろうと思える曲が多いですね」
――Nina77の初CDとなるミニ・アルバム『一人ぼっちの革命』が9月20日にリリースされました。
シンイチ「デジタルの時代で、こうして形として残るものが出せるのは素直にうれしいです。内容的には、僕たちの代表曲〈一人ぼっちの革命〉や新曲が入っていたり、“今のNina77”という作品になってます。今回、〈一人ぼっちの革命〉を新しくミックスをやり直したんです。当時、自分のミックスのスキルがそんなになかったので、曲をよりよく聴いてもらうために、クリアに聴こえるようにしました」
――おすすめ曲を聞かせてください。さくらさんは?
さくら「新曲の〈追憶の声〉です。歌詞を見ると、〈一人ぼっちの革命〉を彷彿させるような曲になっていて、それに気づいてもらえたらうれしいです」
シンイチ「〈追憶の声〉は〈一人ぼっちの革命〉の別視点みたいな、ミニ・アルバムを締め括るイメージで作りました。まきが歌ってるパートは〈一人ぼっちの革命〉の主人公の視点で書いていて、自分の歌が強めのところは、主人公を側で見てる人みたいなイメージです」
――シンイチさんは?
シンイチ「僕のおすすめは〈不完全という証明〉です。この曲が自分の音楽ルーツに近いと思うんです。ロックでありつつエレクトロなところがあるのが、この曲でいちばん表現できているので推しの曲です」
さくら「この曲をいただいたときに、今までのNina77にない感じだなと思いました。それまできれいめな曲が多かったんですけど、アップテンポな曲で、また新しいNina77が出せたなという感じでした」
――ミニ・アルバム『一人ぼっちの革命』の感想や手応えを聞かせてください。
さくら「3年ぐらい活動してきて、やっとCDを出せた!という気持ちです(笑)。正直最初は、3年続くかな?と思っていたんですけど、こうして作品を形にできたのでほんとによかったと思います。次はフル・アルバムも出したいという欲が出てきました(笑)」
シンイチ「作品としてまとめられたうれしさがあります。あと、紙を破いたようなジャケットのデザインになってるんですけど、それが気に入っています。アートワークも含めてこだわって作ったので、実際にCDを手に取っていただけると、Nina77の世界観がより伝わるんじゃないかと思います」
――9月23日には初のライヴが行なわれます。どんなものになりそうですか。
シンイチ「インストアという形で初めてライヴをさせていただくんです。アコギと歌という、2人だけのライヴになります。アコースティック・アレンジが中心になるので、ライヴならではの楽しみができるんじゃないかなと思います」
さくら「初のライヴでうれしい反面、ドキドキというか緊張感があります。たぶん距離が近いライヴになるので、準備を怠らず楽しんでやれたらなと思います。今回はアコースティックでやるんですけど、いずれフル・バンドでもやってみたい気持ちもあります」
――Nina77としてこれからやってみたいことを聞かせてください。
シンイチ「まきも話したように、今度はフル・アルバムで、アルバム用の曲を作って全体的な世界観を表現したいです。そして、それをフル・バンドでライヴでやりたい。Nina77の世界観を生で表現して、お客さんを楽しませたいです」
さくら「個人的な野望としてはタイアップ曲をやりたいですね。そこは目標のひとつとしてがんばりたいです」
――こんな曲を作りたい、歌いたいというのはありますか。
さくら「Nina77の曲はアップテンポ、バンド・サウンドが多いんですけど、コテコテなバラードを歌ってみたいです。ストリングスがいっぱい入ってる曲を寒い時期に歌ってみたいですね」
――Nina77の世界はこれからどんどん広がっていきそうですね。
シンイチ「そうですね。僕は常に、自分たちにしか作れない曲、自分たちにしか表現できないものはなんだろう?というのを考えながら曲を作っているんです。今の流行りも気にはするけど、そこだけじゃなく、今後も自分たちならではの音楽、世界観を突き詰めていきたいと思っています」
取材・文/土屋恵介