79年に結成した、ポスト・ハードコア〜オルタネイティヴ・シーンのカリスマ、
ノーミーンズノー(NOMEANSNO)。目下の最新作
『All Roads Lead to Ausfahrt』(2006年)でもジャズ、プログレ、フュージョン、カントリー、ブルース、メタルなどさまざまなエッセンスをゴッタ煮にして、変拍子満載、馬鹿馬鹿しさを楽しみながらの強烈なテクニックでリスナーを圧倒してくれました。そんな愛すべき“ジジイ・トリオ”が12年ぶりに奇跡の来日。驚愕と爆笑に満ちたステージを見せてくれたジョン・ライト(ds、vo)とギターのトム・ホリストンに話を訊いた。
平均年齢50歳のグレイトなオヤジ・バンドであるカナダのノーミーンズノーが、結成30周年で12年ぶりに来日公演を果たした。
パンクの勢いのファニーな馬力に満ちている不変の音で飛ばした今回のライヴ。でも、15年近い付き合いのAlternative Tentacles(元
デッド・ケネディーズの
ジェロ・ビアフラ主宰)から2001年以降リリースしてないことが、ぼくはずっと気になっていた。
「新展開をしたくなり、(
マイク・パットンと)イピキャックもやっている昔のマネジャーのグレッグ・ワークマンのAntAcidAudioから、ベスト盤
『The People's Choice』と最新作『All Roads Lead to Ausfahrt』(2006年)を出したんだよ」
(ジョン・ライト/ds、vo) パンク・ロックと呼ぶにはロックンロールの様式から逸脱しすぎて、プログレと呼ぶにはエネルギッシュすぎて、変態と呼ぶには歌心がありすぎる、ジャズのコクも十分のトリオだ。2000年発表の前作
『One』では、
マイルス・デイヴィスの「ビッチェズ・ブリュー」も
ラモーンズの「ビート・オン・ザ・ブラット」もカヴァーし、驚かせたものである。
「自分らの中ではわりと自然なことさ。3人とも70年代後半とかにラモーンズから影響を受けていたし。と同時に(兄の)ロブ(vo、b)がマイルス・デイヴィスを大好きだから、〈ビッチェズ・ブリュー〉に歌詞を付けて15分の曲にアレンジしてやったんだ」 (ジョン)
「かつてもっていたエナジーとか信念といったものが、そのへんの単なる流行とかに流されて、自分のアイデンティティを失ってしまうみたいな曲だね」 (トム・ホリストン/g)
年食うごとにレイドバックしていくバンドは多い。けどノーミーンズノーは82年のファーストの頃よりも激しくなっているのだ。
「若い頃は興奮した時のエナジーも神経質になった時のエナジーもあった。それが年と共に減っていく人もいるだろう。自分らもそういう部分があるだろうけど、今まで培ってきた経験で上手く集約させている。とにかく音楽のエナジーがあるから楽しくやれるのであって、ステージで楽しい気持ちが湧き上がらなきゃやっていても意味がないよ」 (ジョン)
ステージ上のうれしそうな3人の表情を見てノーミーンズノーに定年はないと確信した。
取材・文/行川和彦(2009年3月)