豊潤な歌声で魅了するジャズ・ヴォーカリスト 大城 蘭が、アルバム『LAN』でデビュー!

大城蘭   2008/06/10掲載
はてなブックマークに追加
 沖縄出身のジャズ・ヴォーカリスト、大城蘭。4年前に上京し、都内のライヴ・ハウスで歌い始めたという彼女は、2007年にヴォーカルの勉強のために渡米したが、父親が急死、母親が交通事故に遭い帰国を余儀なくされ、現在はレストランで働きながらも歌を続けている。そんな経歴を持つ彼女が6月にアルバム『LAN』でデビューを飾った。アニタ・オデイドン・マクリーンU2ガーシュウィン……などジャズやポップスの名曲とともにオリジナル曲も収録された本作。豊かな表現力を持つ彼女に話を訊いた。




 感情のグラデーションを滑らかに描いていく声、ジャズの奥深い魅力を力強く掴み取ったヴォーカリゼーション。大きな可能性を感じさせるジャズ・シンガーの登場である。アルバム『LAN』でCDデビューを飾る大城蘭。アニタ・オデイの歌唱でも知られる50年代のポップス「Vaya Con Dios」、マドンナがカヴァーした「アメリカン・パイ」で有名なドン・マクリーンの「Vincent」、U2の代表的バラード「One」、全共闘世代を象徴する昭和歌謡ナンバー「アカシアの雨がやむとき」、そして「ライヴでもよく歌っている」と言うガーシュウィンのスタンダード・ナンバー「Love Is Here To Stay」などを収録した本作には、抑制の効いたアコースティック・サウンドと豊潤なヴォーカルがゆったりと溶け合っている。
 「自分の声に似合う曲、ライヴでも歌ってる曲。それほど知られてない曲もあると思うんですけど、全部ホントにいい曲だなって。〈アカシア〜〉は母親が好きだったんですけどね(笑)。レコーディングは初めてだったから、最初はちょっと大変でしたけど……。とにかく、真っすぐに歌うことだけを心がけました」


 2つのオリジナル曲「笛を吹く少年」「手紙」はいずれも、昨年亡くなった父親の思い出が元になっていると言う。ノスタルジックな雰囲気を生々しく響かせる彼女の歌は、聴く者の気持ちをしっかりと揺らしてくれるはずだ。
 「父はずっと画商の仕事をしていて、とくにマネ(エドゥアール・マネ)の『笛を吹く少年』が大好きだったんです。絵画的なモチーフっていうのは、アルバム全体のテーマでもあるんですよ。〈Vincent〉はゴッホのことを歌った曲だし、〈Mona Lisa〉もあるし。〈手紙〉は、亡くしてしまった人をいきなり思い出したときの、胸がキュンとするような気持ちをストレートに表現しました」

 生まれついてのジャズ・シンガー、とでも言いたくなる彼女だが、じつは10代の頃は、ニルヴァーナレッチリなどのロック・ミュージックに熱中していたと言う。
 「コピー・バンドもやってましたからね、しかもドラムでした(笑)。二十歳になった頃から、もっと幅広く音楽を聴くようになったんですけど、(彼女の地元である)沖縄のジャズ・クラブで働いてるときに、ジャズのカッコよさに気付いたんです。ジャズ特有のインプロヴィゼーションも素晴らしいと思ったし、スタンダード・ナンバーってホントにいい曲ばっかりだし。歌いたいっていう気持ちも、じつはずっと前から持ってたんですよ。ただ、人前に出るのが苦手ってこともあって、なかなかきっかけがなくて」

 ジャズとの出会いによって、生来のヴォーカル・センスを開花させた大城蘭。現在はレストランでウェイトレスをしながら、都内のジャズ・クラブなどでライヴを重ねている彼女だが、そのハスキーにしてスムースな歌はここから、より大きなフィールドへと広がっていくことになるだろう。
 「ジャズは一生かけて勉強して、そこを基本にして、自分の音楽の世界を広げていけたらいいなって。私たちの世代にも合うスタンダードを表現できたらいいですね」



取材・文/森 朋之(2008年6月)



副都心線開通記念イベント
NEW SHINJUKU JAZZ SCRAMBLE

【日時】 6月15日(日)、11:40〜17:40
【会場】(全ステージ入場無料)
※メインステージ / 新宿通り追分交差点(伊勢丹・丸井前)
※サテライトステージ
  ・京王百貨店 新宿店 (屋上 スカイガーデン特設会場)
  ・小田急百貨店 新宿店 (本館1階 大階段特設会場)
  ・ルミネエスト(屋上 特設ステージ)
  ・新宿 三越アルコット(1階ライオン口 特設会場)
  ・伊勢丹 新宿店(本館屋上 アイ・ガーデン ステージ)
  ・マルイシティ-1
  ・新宿高島屋(1階JR口特設会場)
【出演アーティスト】
 日野皓正
 NORA(from オルケスタ・デ・ラルス)
 ルシア塩満
 大城 蘭
 吉野ミユキ
 日高典雄
 岡田嘉満
 西仲美咲
 ウィリアム浩子
【MC】岩浪洋三 / マイク越谷

※雨天決行。但し、著しい荒天の場合は中止致します。
※当日9時から19時まで、新宿通り(新宿大ガード東交差点〜新宿二丁目交差点)は、交通規制となります。
※お席には限りがございます。満席の場合、入場をお断りさせていただく場合がございますのであらかじめご了承ください。
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015