小野リサ〈ワールドツアー完璧MAP 世界を巡るコンサート〉に出演 ブラジルから日本にたどり着いたボサ・ノヴァの旅

小野リサ   2018/03/02掲載
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 自宅に居ながらにして観光気分を満喫……海外旅行で必ず役に立つ、お得な情報を紹介するBSフジの番組『ワールドツアー完璧MAP』シリーズ(月〜金曜 朝7:30-7:55)。このたび、番組との関わりも深いさまざまなジャンルのアーティスト4組が一堂に集まり、4月20日(金)にかつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホールで〈ワールドツアー完璧MAP 世界を巡るコンサート〉を開催することが決定。出演者のひとりで、日本の音楽ファンに広くボサ・ノヴァ人気を定着させたヴォーカリスト、小野リサさんにお話をうかがった。
日本人はラテン音楽が肌に合うんでしょうね
――今回のコンサートは〈音楽と旅〉をテーマにした素敵な企画ですね。サンパウロで生まれ、10歳までブラジルで過ごして、15歳からギターを弾き、歌い始めたという小野さんはこのテーマにぴったりなアーティストだと思います。アルバム『カトピリ』でデビューされたのは1989年の10月でしたね。
「デビュー当時はリオデジャネイロで録音することと、ポルトガル語で歌うことにすごくこだわっていた気がします。若かったし、歌手としてそうやって自分というキャラクターを作ることが大切だと思っていたんですね。あれから私もずいぶん大人になりました(笑)。今はいろんなジャンル、さまざまな国の言葉で歌うのが楽しいです」
――もともと日本の音楽ファンはボサ・ノヴァが好きでしたが、小野さんのデビューをきっかけに、若い人など幅広い層がボサ・ノヴァやブラジル音楽に興味を持つようになりました。
「昔から日本人はボサ・ノヴァにかぎらず、ラテン・ミュージックがお好きですよね。〈コモエスタ赤坂〉(ロス・インディオス)のように昭和のムード歌謡の世界にも浸透していたりして、肌に合うんでしょうね。ボサ・ノヴァはまた少し違うジャンルなのですが、同じラテンの音楽ということで受け入れてくれたのだと思います。私がデビューしたばかりの頃は、ちょうど東京に輸入盤が充実した大型のCDショップが増え始めた時期で〈ワールド・ミュージック〉という言葉が流行りだして、みんなが世界中の音楽をどんどん聴くようになった。そのいい波に、私もうまく乗れたのだと思います(笑)」
――サンバやショーロなどブラジルの大衆的な伝統音楽も、ヨーロッパやアフリカを経由して南米に辿り着いた、楽器の調べや民俗舞曲のリズムなど、多種多様なサウンドが〈世界を旅して〉出会って生まれた音楽ですね。
ジョビンの息子と孫にあたるパウロ&ダニエル・ジョビンとともに作った、ボサ・ノヴァ誕生40周年を記念するアルバム『ボッサ・カリオカ』(1998年)をリリースした後、アメリカやフランス、イタリア、そしてアフリカや中近東……と音楽を勉強しながら旅を続けていた時、まるでブラジル音楽のルーツを辿っているような感覚がありました。ブラジル音楽の豊かさは世界に誇れるものですけれど、その中身はそれぞれの国の風土や文化、歴史から生まれ、人々が大切に育んできた魅力的な音楽が混じり合ってできていることをあらためて実感しました。とくに中近東のウード(※リュートや琵琶と共通の先祖を持つ撥弦楽器)の旋律を聴いた時にとても懐かしい気がした。ブラジルで活躍するギタリストに、エグベルト・ジスモンチアサド兄弟といった、アラブ系のルーツを持つ人たちが多いのも納得です。ああ、繋がっているのだなと思って嬉しくなりました」
小野リサ
人生を謳歌する生き方、音楽の楽しみ方を伝えたい
――たしかNHK『みんなのうた』で〈太陽の子どもたち〉という曲を歌っていらした記憶がある(※初回放送は1992年4〜5月)のですが、それ以外ではデビュー以来、長らく日本語の歌はレパートリーにありませんでしたね。
「そうですね、ジャズ、ハワイアン、カンツォーネ、シャンソン、ラテン、ソウルなど、さまざまなジャンルの名曲をボサ・ノヴァ・テイストにアレンジする〈音楽の旅〉が2010年のアルバム『ASIA』でついにアジアまで到達して、その後最終目的地である日本に。2011年の『ジャポン』で26作目にして初めて全曲日本語歌唱のアルバム(日本のヒット・ソングのカヴァー集)に挑戦したのですが、最初は思っていた以上に苦戦しました」
――その時まで、プライベートでも日本語で歌う機会はあまりなかったのですか?
「サンパウロでは日系の幼稚園に通っていたので、童謡などは歌った経験がありました。でも10歳で日本に戻ってからは、ブラジルのことがすごく懐かしくて、学校から帰ってからもブラジルの音楽ばかり聴いていましたね(笑)。そんなわけで、デビュー当時から〈日本語で歌ってほしい〉というリクエストをよくいただいていたのですが、なじみがないので私にはずっと無理だと思っていました。それで『ジャポン』の制作がスタートして実際に歌ってみたら、言葉の表現やニュアンスが、やはり想像していた以上に難しかった。ボサ・ノヴァはあまり力まず、感情を込めすぎずにさらっと流れるように歌うのに対して、日本の歌は言葉のひとつひとつを噛みしめるように歌わなくてはいけなくて……でも、そこから私も努力を重ねて、その甲斐あって今では日本語で歌うのも大好きになりました」
――言葉や音楽には、その国の人々の気質がよく表れているといいますが、やはりブラジル音楽もそうですか?
「まさに! 日本に来てすごく思ったのは、日本人はどうしてブラジル人のようにもっと気楽に生きることができないんだろうって(笑)。ブラジル人はあまりくよくよしないし、明日のことで悩まない。いつも何とかなるさって物事を楽観的に考えていて、お金がなくてもけっこう幸せで、とにかく楽しいことが大好き。ブラジル音楽があんなに心地よいのは、自然に気持ちのよい方向に身をまかせ、どんどん流れていってできた音楽だから(笑)。だから私も、人生を謳歌する生き方、ブラジル流の音楽の楽しみ方を、ボサ・ノヴァにのせて日本人に伝えたいなと思ってずっと歌を続けてきました」
コンサートでは最後にセッションも?
城南海
城南海
――今回の〈ワールドツアー完璧MAP 世界を巡るコンサート〉では、城南海さん(奄美シマ唄にルーツを持つ歌唱で知られる)やKさん(ソウル出身のシンガー・ソングライター)、Ryu Matsuyama(イタリアで生まれ育ったピアニスト / ヴォーカリストのRyuを中心にしたバンド)といったアーティストと同じステージに立たれるわけですが……。
「皆さん初めてお会いする方たちばかりですが、それぞれがいろんな国やジャンルの影響を受けて、そこから自分だけのオリジナリティあふれる音楽を作り上げている、すごい才能の持ち主ばかりだと思いますので、私自身もコンサートをとても心待ちにしています……もしかしたら最後に全員でセッションとかもあるかもしれません!」
K
K
Ryu Matsuyama
Ryu Matsuyama
――小野さんは何を歌われますか?
「歌いたい曲はたくさんあります。ボサ・ノヴァはもちろん、ボッサ・テイストでカヴァーする世界中のポピュラー・ソングやJ-POPの名曲。これまで世界を旅して、素晴らしい音楽の想い出がいっぱいあります。何が飛び出すかは当日までのお楽しみですね!」
――また行ってみたい国、旅したい場所はどこですか?
「それもたくさんあります。イタリアでカンツォーネをボサ・ノヴァ・アレンジで歌った時に、現地のおばあちゃまたちと共演できたのがとても嬉しかったし、中国でも毎年コンサートを開催しているのですが、〈夜来香(イエライシャン)〉を会場の皆さんと一緒に合唱するのも楽しい。やっぱり、あの人にまた会いたいって思う国には何度でも行ってみたいです。それから、また京都にも行きたい。移り変わる美しい四季とともに日本の伝統的文化に触れることができる京都は、訪れるたびに心の平安を与えてくれます。古いお寺や神社は、年齢を重ねるごとに見え方も変わってきまね。そしていつか和楽器をじっくりと学びたいと思っています」
――今年はデビュー30周年を記念するオーストラリア・ツアーも開催。5月にはあのシドニーの有名なオペラ・ハウスでリサイタルの予定もあるとか。
「シドニーは初めてなので今からワクワクしています。この機会に、先住民族であるアボリジニーの民族音楽にもぜひ触れてみたい。これからも来るものを拒まず(笑)、心を大きく開いて、どんどん新しいものを吸収して、歌っていきたいと思います」
〈ワールドツアー完璧MAP 世界を巡るコンサート〉
http://www.bsfuji.tv/worldtour_concert

小野リサ オフィシャルサイト
http://onolisa.com

取材・文 / 東端哲也(2018年2月)
Concert
ワールドツアー完璧MAP 世界を巡るコンサート(小野リサ、城南海、K、Ryu Matsuyama)
ワールドツアー完璧MAP 世界を巡るコンサート
http://www.bsfuji.tv/worldtour_concert/

出演:小野リサ、城南海、K、Ryu Matsuyama、和合真一(進行)

2018年4月20日(金)
東京 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
開場 17:30 / 開演 18:30
料金 6,000円(税込)/ 5,400円(税込 / シンフォニークラブ会員価格)
※お問い合わせ: かつしかシンフォニーヒルズ 03-5670-2233(10:00〜19:00)
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